こんにちは。
北海道大学調和系工学研究室(川村秀憲教授、山下倫央准教授、横山想一郎助教)です。
札幌では今週、気温が高く、先週に降った雪がすっかり溶けてしまいました。
根雪になるのはもう少し先のようですね。皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、本日のメルマガでは、横山助教の米国研修レポート第3回をお届けします。
訪問先6都市のうち、二つ目の訪問地となったノースカロライナ州ローリーでは、研究集積地「リサーチトライアングル」を視察しました。
今回はその視察内容をご紹介します。ご興味のある方は、ぜひお読みいただければ幸いです。
それでは、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
2025年11月28日配信
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■ 本日のTopics
【1】横山助教の米国研修レポート
【2】受賞リポート
【3】調和系工学研究室WHAT’S NEW
【4】研究室に関連する企業・ベンチャー等のニュース
【5】人工知能・ディープラーニングNEWS
【6】調和系工学研究室関連企業NEWS
【7】季刊『雫』「今回のAI一茶くん」
【8】AI川柳
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【1】横山助教の米国研修レポート
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調和系工学研究室 助教の横山です。米国政府の国際交流プログラムInternational Visitor Leadership Program (IVLP) に参加し、デジタル社会の基盤を支えるサイバーセキュリティとAIの最前線を、米国6都市で見る機会がありました。
ワシントンD.C.に続き、二つ目の訪問地となったノースカロライナ州ローリーでは、研究集積地「リサーチトライアングル」で大学・行政・金融機関の担当者から幅広い話を伺うことができました。
宿泊先はCrabtree Valleyという幹線道路沿いのショッピングモールに隣接するエリアで、ワシントンとは打って変わって典型的なアメリカの車社会を実感する風景でした。
アメリカ出張経験の多い参加者からも「車がないと本当に生活できない場所だ」との声がありました。
実際、買い物以外にもハイキングに出かけましたが、移動はすべてUber頼りで、ペーパードライバーの私には、ここで生活するのは相当ハードルが高いと感じました。
ローリーでは、市内の銀行のセキュリティ担当者から、いわゆる「サイバーセキュリティ保険」についての説明を受けました。
日本ではまだ一般的ではありませんが、ランサムウェア等の被害に遭った際の対応費用を補償するもので、現地では広く認知されているとのことでした。
参加者の多くが初耳で興味を示しており、サイバーリスクが金融商品として組み込まれている点は興味深いものでした。
また、今回の滞在では、プログラムの一環でアメリカの家庭に招かれ夕食をご一緒する機会もありました。
参加者の多くはアジアの元植民地出身で、それぞれの独立の歴史について質問されたほか、日本についての見解を求められる場面もあり、日本の大学では戦争の反省から軍事研究に慎重であることを共有しました。
ホストの方からは、「アメリカの製造業や摩天楼の建設を支えているのは実は移民労働者だ」という指摘があり、日本でも労働力不足が深刻であること、そして移民受け入れが限定的であるため、生産性向上に向けたAI研究が重要だと考えていることを共有しました。
前提条件がまったく違う国同士でも、結局ぶつかる壁は似ているのだと実感し、考えさせられる対話になりました。
特に考えさせられたのは、IBM Consulting の Responsible AI 部門責任者との議論です。
信頼できるAIを構築するうえで、技術的な堅牢性の追求だけでは不十分であり、ユーザと継続的に対話し、AIの適用範囲や前提を共有することが不可欠だという指摘がありました。
意図した利用範囲を明確化し、ユーザが過度に期待したり誤解したりしないよう支援することも、AIリテラシー向上の一部として位置づけられるべきだという考え方です。
アルゴリズムの精度と同じくらい、社会的理解がAIの信頼性を支えるという点は非常に示唆的で、今後の研究でも意識すべき視点だと感じました。
次回は、ニューハンプシャー州やバーモント州での視察内容をご紹介します。
【2】受賞リポート
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◇ 「人工知能学会全国大会(第39回)」にて修士2年の鎌田 理久さんが受賞しました
2025年5月27日~5月30日に大阪国際会議場(グランキューブ大阪)/オンライン(ハイブリット)にて開催された「2025年度 人工知能学会全国大会(第39回)」において本研究室の鎌田 理久さん(修士2年)が「全国大会優秀賞」を受賞しました。
[2025年度 人工知能学会全国大会 (第39回)][人工知能学会受賞者【全国大会優秀賞】]
◆ 鎌田 理久, 横山 想一郎, 山下 倫央, 川村 秀憲: 路面画像と気象情報に基づく L1 正則化を活用した除雪出動予測, https://doi.org/10.11517/pjsai.JSAI2025.0_2O1GS1002
積雪地帯における冬期の道路除雪業務は,道路交通や生活インフラを維持するうえで欠かせない.
しかし,除雪出動の判断は気象や道路状況の変化に大きく左右されるため,担当者が下した判断が覆る場合もしばしば発生し,除雪作業員に不確実な出動への備えを強いるだけでなく,担当者にも心理的負荷を与えている.
本研究では,この課題を解決するために,路面画像と多様な気象情報を統合し,L1正則化による特徴量選択を活用した除雪出動予測手法を提案する.
具体的には,1時間単位の気温や降雪量,風向といった質的・量的データを含む膨大な候補から,モデル学習に有効な特徴量を自動的に選択することで,高精度な予測を可能にする.
実験では,担当者の判断や従来のロジスティック回帰モデルと比較して,本手法がより高い予測精度を示すことを確認した.
― 鎌田さんのコメント
このたびは2025年度全国大会優秀賞の栄誉を賜り、心より御礼申し上げます。
本研究の遂行にあたり、熱心にご指導いただいた先生方、そして日々の議論や資料作成に協力してくれた研究室のメンバーに深く感謝いたします。
また、株式会社堀口組の皆様には、貴重な実データの提供や現場視点での的確なアドバイスをいただき、研究の質を大きく高めることができました。
多くの方々のお力添えがあってこその受賞だと実感しています。
今後は成果をシステムに実装し、他地域や長期データでの検証と現場適用を進め、実用性を高めてまいります。
研究内容にご興味がありましたら、下記フォームからお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ:http://harmo-lab.jp/contact
ご意見・ご感想もお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【3】調和系工学研究室WHAT’S NEW
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◇ J-WAVEの「Midday lounge」に川村教授が出演しました
2025年11月26日放送、J-WAVEの「Midday lounge」に川村教授が出演しました。
番組では、「AIと文学」をテーマに、調和系工学研究室が開発する「AI一茶くん」についてお話ししました。
【4】研究室に関連する企業・ベンチャー等のニュース
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◇ 『IEEE Access Journal Volume 13』に調和技研のスタッフが携わる共同研究の成果が掲載されました
2025年11月3日発行『IEEE Access Journal (Volume: 13)』に株式会社調和技研のスタッフRashedul Islam氏が携わる共同研究の成果が掲載されました。
Md. Rajibul Islam; Linyue Lu; Md. Rashedul Islam; W. H. Tsang; W. H. Chung; Calvin K. F. Leung: A Novel Approach to Elevator Safety: Semi-Supervised Data Labeling for Function Classification and Uneven Rope Tension Detection Using FBG Sensors
https://ieeexplore.ieee.org/document/11224560
詳しくは調和技研webサイトよりご覧いただけます
https://www.chowagiken.co.jp/news/mediacoverage_251118
[株式会社調和技研(北大発認定スタートアップ)]
◇ 調和技研がランチタイムウェビナーを開催しました
2025年11月27日(木)に株式会社調和技研がオンラインにて、「AIエージェントとは何か?何故流行っているのか?~押さえるべきAIトレンドの流れと導入ポイント〜」と題し、ランチタイムウェビナーを開催しました。
当日は、AIエージェントの仕組みや従来の生成AIとの違いを説明し、さらに、「AIエージェント」の導入を検討している方に最適な調和技研の社内向け生成AIエージェントサービス「AIWEO for ヘルプデスク」をご紹介しました。
◇ 「オープンイノベーション交流会」に調和技研 代表 中村氏が登壇しました
2025年11月14日(金)に都心型オープンイノベーション拠点「Xport」(大阪工業大学 梅田キャンパス)にて開催された「オープンイノベーション交流会」に株式会社調和技研 代表取締役社長 中村 拓哉 氏が登壇しました。
本交流会は、事業会社・自治体とスタートアップとの連携による新たな事業開発や技術連携が創出することを目的としています。
当日、中村氏はスタートアップ企業プレゼンテーションに登場しました。
詳細は下記よりご覧いただけます
https://www.sihd-bk.jp/corporation/seminar/openinnovation/
【5】人工知能・ディープラーニングNEWS
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★ ChatGPT、「グループチャット」を試験提供 複数人でのやりとりが可能に 最大20人まで(itmediaより)
米OpenAIは11月14日(日本時間)、ChatGPTで複数人が同時にやりとりできる機能「グループチャット」の試験提供を始めた。最大20人まで1つの会話に参加し、ChatGPTとやりとりできる。日本と韓国、台湾、ニュージーランドで展開する。
★ GoogleからもVS Code派生AIエディタ「Antigravity」 Gemini 3 ProやClaude Sonnet 4.5が無料(itmediaより)
米Googleは11月18日(米国時間)、次世代AIモデル「Gemini 3 Pro」の公開に合わせ、AIエディタ「Google Antigravity」(アンチグラビティ)を公開した。他社製のAIエディタ同様に、AIに指示をすることでソースコードの作成やデバッグなどをエージェント的に実行できる。
現在は無料のパブリックプレビューという位置付けで、個人アカウントでのみ利用可能。Windows(Windows 10以上のx86, arm64)、macOS(バージョン12以上のApple Silicon)、Linux(Ubuntu 20、Devian 10、Fedora 26、RHEL 8など)に対応する。
★ Microsoft、あらゆるAIエージェントを包括的に管理する「Microsoft Agent 365」発表(itmediaより)
米Microsoftは11月19日未明(日本時間)に開幕した年次インベント「Microsoft Iginte 2025」で、AIエージェントの包括的な管理を可能にする「Microsoft Agent 365」を発表しました。
Microsoft Agent 365は、AIエージェントがMicrosoft製かサードパーティ製かオープンソースにより作られたものであるかに関わらず、あらゆるAIエージェントをセキュアに保つために観測、保護、管理するためのツールとして、Microsoft 365管理センターで利用可能になる予定です。
★ Googleの画像生成AIが進化 「Nano Banana Pro」登場 言語・編集能力を大幅強化、4Kにも対応(itmediaより)
米Googleは11月20日(現地時間)、新たなAI画像生成モデル「Nano Banana Pro」(Gemini 3 Pro Image)を発表した。同社の最新基盤モデル「Gemini 3 Pro」をベースにしており、キャラクターなどの一貫性を維持しながら、自然言語による指示で細部を修正できる編集機能など画像処理能力を大幅に強化した。
★ LLMに膨大な量の問題を解かせる→混乱し有害な内容をポロポロ解答 新たなジェイルブレイク攻撃、国際チームが提案(itmediaより)
英オックスフォード大学などに所属する国際研究チームが発表した論文「Chain-of-Thought Hijacking」は、有害な指示の前に無害な長い推論を付加することで、AIの安全機構を巧妙に回避するジェイルブレイク攻撃を提案した研究報告だ。
【6】調和系工学研究室関連企業NEWS
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★ 【STV 札幌テレビ放送様の事例をパッケージ化】スマホで高速伝送&メタデータ自動連携を実現する放送業界向けファイル伝送システム開発パッケージ「SMASh」を11 月19 日より提供開始!前日開催の「第62回民放技術報告会」にてSTV札幌テレビ放送様が導入効果を発表(株式会社インターパーク)
本システムは、STV札幌テレビ放送様における現場の課題解決実績とその利便性が評価され、積極的な後押しをいただくことで商品化が実現しました。
★ 眼科・視覚科学専門誌「British Journal of Ophthalmology」にて、当社の技術研究所とツカザキ病院の共同研究論文が掲載されました(株式会社クレスコ)
当社の技術研究所とツカザキ病院の共同研究の成果である、眼底画像と問診票を用いたマルチモーダル人工知能による網膜剥離診断に関する研究論文が、眼科・視覚科学分野の国際査読付き専門誌「British Journal of Ophthalmology」に掲載されました。
★ ノーコードアプリ「サスケ Works」、 勤労感謝の日に “働く” を問い直すプロジェクト始動。(株式会社インターパーク)
開発中の AI 応答機能への想いなど「働く」を問うメーカー自身のインタビューを公開! サスケWorks「“働く”を真面目に考えようPROJECT」
【7】季刊『雫』「今回のAI一茶くん」
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AI一茶くんの対決デビュー戦となった、NHK「超絶 凄ワザ!」への出演を契機に知り合ったマルコボ.コム社が発行している「季刊『雫』(前『俳句の缶づめ』)」にAI一茶くんの俳句が掲載されています。
この中の「今回のAI一茶くん」というコーナーでは、素性を隠して掲載されたAI一茶くんの句を読者が当てるという企画が行われています。
AI一茶くんが詠んだ句、そしてその句が獲得した得点、AI一茶くんの俳句を見抜いた人数をご紹介したいと思います!
兼題「浴衣」(季刊『雫』2025年11月15号)
浴衣着て髪美しく老いにけり
AI一茶くんは、まだ良い俳句を自分で選ぶことができないので、AI一茶くんの詠んだ「浴衣」20句から、編集室が選んだ一句です。この句は3点句となりました。
また、今回見事22名の方がAI一茶くんの俳句を見抜きました。
AI俳句を選抜する編集室の方々は「とても美しい句で、編集室でも選んでしまうところでした」とのことです。
次回の兼題は「秋刀魚」です。
AI一茶くんの句は何点獲得できるのか、そして見抜ける方はいらっしゃるのか、お楽しみに!
次回は2026年2月の発行となります。マルコボ.コムオンラインショップ( https://marukobo.shop-pro.jp/ )からも購読のお申し込みができますので、ご興味がある方はぜひご覧ください。
【8】AI川柳
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調和系工学研究室では、毎日新聞社「仲畑流万能川柳」や第一生命保険「サラリーマン川柳」を学習用の教師データとした「AI川柳」に取り組んでいます。
2020年3月までの1年間「NHK総合 ニュースシブ5時」にて、その週の話題のニュースのキーワードをお題に、バーチャルアナウンサー「ニュースのヨミ子」さんが詠んでいたAI川柳も、本研究室が開発した人工知能システムです。
多くの皆さんに楽しんでいただけるよう、2020年6月にAI川柳のTwitterアカウント( https://twitter.com/ai_senryu )を開設いたしました。
AIには詠んだ句に対する「良し悪し」の感覚はありません。そのため、人間がどのように感じ、どのような情景を思い浮かべるかにより、AIが詠んだ句に意味が生じてきます。
AIが詠んだ句に共感していただけましたら大変うれしく思います!
★ お題「柿」(11月11日投稿)
日常の小さな幸せをほのぼのと伝えています。好きなものに囲まれたひとときが、何とも言えず平和です(感想は #ChatGPT と作成)。
★ お題「紅葉」(11月13日投稿)
日常の一場面から、しみじみとした夫婦の時間や心情が感じられる(感想は #ChatGPT と作成)。
【ご寄附のお願い】
人工知能によるイノベーションでより素晴らしい世界を実現することが、私たち調和系工学研究室の使命であると考え日々研究に取り組んでいます。
大学での研究活動には、研究に必要な機器の整備のほかにも、学生の学会への参加や論文投稿など研究費が欠かせません。
私たちの取り組みにご賛同いただけ、応援のご寄附を賜れましたら大変心強く、研究を続けるうえで大きな励みとなります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
調和系工学研究室 教授 川村 秀憲
[北海道大学奨学寄附金制度について](本学への寄附金については、税法上の優遇措置の対象となります)お問い合わせ先:http://harmo-lab.jp/contact
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
◇ 次号は、2025年12月12日に配信する予定です。
◇ メールマガジンのバックナンバー
http://harmo-lab.jp/?page_id=2918
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調和系工学研究室教員
川村 秀憲教授
山下 倫央准教授
横山 想一郎助教
▽調和系工学研究室HP
▽調和系工学研究室FB
▽川村 秀憲教授FB
▽AI一茶くん
▽調和系工学研究室AI川柳
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