学会参加レポート・受賞報告、最新の人工知能ニュースをお届けします/harmolab141
こんにちは。
北海道大学調和系工学研究室(川村秀憲教授、山下倫央准教授、横山想一郎助教)です。
根雪が終わるのはもう少し先になりそうな札幌ですが、皆さまお変わりなくお過ごしでしょうか。
今月、松山の愛媛県美術館で愛媛県現代俳句協会の主催による俳句対決が行われ、「AI一茶くん」の開発チームが参加しました。
当研究室では、俳句を詠むだけではなく、俳句を評価することや、批評文を生成する研究も行っています。
当日の会場の様子を俳句の批評とともに「AI一茶くん」のXに投稿していますので、ご興味のある方はぜひご覧になってください。
また、当日はAIが俳句や批評文を生成する仕組みについて山下准教授が解説しました。
その時の発表資料をこちらに掲載しています。
ご興味のある方はぜひこちらもご覧ください。
https://x.com/AI49346791/status/1898293972856107045
それでは、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
2025年3月21日配信
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■ 本日のTopics
【1】受賞リポート
【2】学会参加レポート
【3】調和技研エンジニアブログ
【4】調和系工学研究室WHAT’S NEW
【5】人工知能・ディープラーニングNEWS
【6】調和系工学研究室関連企業NEWS
【7】AI川柳
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【1】受賞リポート
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◆ 「2025 the 9th International Conference on Innovation in Artificial Intelligence」にて修士2年の阿部 晃平さんが受賞しました
2025年3月13日~3月15日に、シンガポール/オンライン(ハイブリッド)にて開催された「2025 the 9th International Conference on Innovation in Artificial Intelligence」において本研究室の阿部 晃平さん(修士2年)が「Best Oral Presentation Award」を受賞しました。
[2025 the 9th International Conference on Innovation in Artificial Intelligence (ICIAI2025)]◇ Kohei Abe, Soichiro Yokoyama, Tomohisa Yamashita, Hidenori Kawamura : Caption Generation for Garment Image Pair Comparison using Vision-Language Model with Attribute Relationships, 2025 the 9th International Conference on Innovation in
Artificial Intelligence, ハイブリッド開催(シンガポール/オンライン) (2025)
Title:
Caption Generation for Garment Image Pair Comparison using Vision-Language Model with Attribute Relationships
(属性関係を考慮した視覚言語モデルを用いた衣服画像ペア比較のためのキャプション生成)
Abstract:
This study proposes a method for generating captions that highlight differences between pairs of garment images, with the goal of providing useful information to consumers engaged in product comparisons.
To design the content of ideal captions, we analyzed product comparison articles focusing on apparel sold on e-commerce platforms.
The analysis revealed that focusing on salient differences between garments and explicitly presenting subjective attributes as recommendation information, based on objective attributes, is an effective approach.
The proposed method uses a prompt-based vision-language model (VLM) to estimate attributes step-by-step and generate captions for each garment.
A qualitative evaluation of the generated captions, focusing on the degree of difference emphasis and the relevance between attributes, confirmed that the proposed method provides sufficient quality of information to effectively support product comparisons.
(本研究では、衣服画像のペアに対して差異を強調したキャプションを生成する手法を提案し、商品比較を行う消費者に役立つ情報を提供することを目的とする。
理想的なキャプションの内容を設計するために、ECサイトで販売されるアパレル商品の比較記事を分析した。
その結果、衣服間の顕著な違いに着目し、客観的な属性に基づいて主観的な属性を推奨情報として明示的に提示することが効果的であることが分かった。
提案手法では、プロンプトベースの視覚言語モデル(VLM)を用い、属性を段階的に推定し、各衣服に対するキャプションを生成する。
生成されたキャプションの差異の強調度や属性間の関連性に着目した定性評価の結果、本手法が商品比較を効果的に支援するのに十分な情報を提供できることを確認した。)
― 阿部さんのコメント
この度、ICIAI 2025においてBest Oral Presentation Awardを受賞することができ、大変光栄に思います。
本学会は私にとって2度目の国際学会参加であり、研究生活最後の学会発表となりました。これまでの成果を国際的な舞台で共有できたことを嬉しく思います。
これまで多くの学会で発表してきた経験が自信につながり、今回の受賞につながったと考えています。これまでご指導いただいた先生方や研究室の皆様に深く感謝申し上げます。
この貴重な経験を糧に、社会人としても成長し続けていきたいと思います。
◇ 学会の様子等を阿部さんがレポートしてくれました
― 研究会に参加して気づいたこと
今回の国際学会では、本研究室が取り組むAIと社会との調和に関する研究が多く発表されており、AIの応用・実装分野がいかに広がっているかを再認識しました。
特に、医療、都市データ解析、プライバシー保護など、社会と密接に関わる分野でAIの導入が進んでおり、それぞれの課題に対する多様なアプローチが議論されていました。
また、AI技術の発展とともに、倫理的・法的な課題や、信頼性・透明性の確保がますます重要視されていることも印象的でした。
AIの精度向上だけでなく、社会との共存を前提とした設計や運用のあり方がより問われるようになると感じました。
― 興味深かった発表について
タイトル:LoRA-Based Image Generation for Reflecting Fashion Brand Characteristics
Using Stable Diffusion
著者:Naoki Koizumi, Naoki Mori (Osaka Metropolitan University, Japan)
概要:LoRA(Low-Rank Adaptation)を用いたStable Diffusionによるファッションブランドの特徴を反映した画像生成手法を提案し、ロリータファッションの服のデザイン生成に応用。
研究内容にご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ: http://harmo-lab.jp/contact
【2】学会参加レポート
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◆ 「通時コーパス」シンポジウム 2025にて学生が発表しました
2025年3月8日に国立国語研究所 多目的室/オンライン(ハイブリット)にて開催された「通時コーパス」シンポジウム 2025に本研究室より、北野 勇太さん(修士2年)が参加し、研究発表を行いました。
[「通時コーパス」シンポジウム 2025]◇ 北野 勇太, 横山 想一郎, 山下 倫央, 川村 秀憲, 小木曽 智信, 伊藤 孝行:帝国議会・国会会議録を用いた可能表現の定量分析
◇ 学会の様子等を北野さんがレポートしてくれました
― 研究会に参加して気づいたこと
(AI業界の関連度は低めですが)今回関わった帝国議会議事速記録のプロジェクトは、他研究と比較しても扱う対象の規模が非常に大きいということを再認識した。
◆ 「第219回ソフトウェア工学研究発表会」にて学生が発表しました
2025年3月3日~4日に早稲田大学 西早稲田キャンパス/オンライン(ハイブリット)にて開催された「第219回ソフトウェア工学研究発表会」に本研究室より、阿部晃平さん(修士2年)が参加し、研究発表を行いました。
[第219回ソフトウェア工学研究発表会]◇ 阿部 晃平, 横山 想一郎, 山下 倫央, 川村 秀憲 : 視覚言語モデルを用いた段階的属性推定に基づく衣服画像ペア間の比較文章の生成,
本研究では,商品比較を行う消費者に有用な情報を提供することを目的として,衣服画像ペアを対象とした比較文章生成手法を提案する.
理想的な文章内容を設計するため,アパレルECサイトで購入可能な衣服の比較記事を分析した.
分析の結果,衣服間の顕著な差異を中心に説明することや,客観的な属性を根拠として主観的な属性を具体的に提示することが効果的であることが確認された.
提案手法では,プロンプトベースの視覚言語モデル(VLM)を用いて,衣服画像ペアを入力として段階的に属性を推定し,それに基づいて比較文章を生成する.
被験者を対象とした評価実験の結果,生成された文章が商品比較を支援するために十分な情報の質を備えていることが示され,提案手法の有効性が確認された.
◇ 学会の様子等を阿部さんがレポートしてくれました
― 研究会に参加して気づいたこと
第219回ソフトウェア工学研究発表会では、特に大規模言語モデル(LLM)を活用したコード修正やAPI推薦、バグ検出に関する研究が増えていることが印象的でした。
例えば、「大規模言語モデルによるプログラム自動修復のパッチ生成過程の効率化」や「RAGを利用したREST API誤用に対する自動修正の有効性調査」など、LLMを活用したソフトウェア開発支援の試みが活発に進められていました。
また、AIを用いたソフトウェア解析・改善の研究が急速に進展する一方で、説明可能性や精度の保証といった課題が依然として残されていることも指摘されていました。
特に、AIによるコード修正や推薦がどのような根拠で行われたのかを明示する手法が求められているという点は、今後の課題として注目すべき点だと感じました。
― 興味深かった発表について
タイトル:大規模言語モデルによるプログラム自動修復のパッチ生成過程の効率化
発表者:細川 隆之介、町田 文雄(筑波大学)
概要:本研究では、大規模言語モデル(LLM)を活用したプログラム自動修復(APR)において、膨大なパッチ候補の生成による計算コストの増大という課題に対処するための効率化手法を提案する。
CodeBERTを用いたAPR手法「AlphaRepair」を対象に、Defects4Jデータセットを用いて評価を実施。
その結果、ビームサーチの探索過程で不要なパッチ候補が大量に生成されることが判明した。
そこで、本研究ではパッチ候補のスコア変化率を指標とし、不必要な候補を枝刈りする手法を導入することで、正解パッチの生成効率を向上させた。これにより、計算リソースの削減と修復速度の向上が期待される。
研究内容にご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ: http://harmo-lab.jp/contact
【3】調和技研エンジニアブログ
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北大発認定スタートアップである株式会社 調和技研は同社webサイトにて、エンジニアによるブログを公開し、AIの最新動向、事例、ノウハウなどを紹介しています。
最近の記事をご案内いたしますので、ご興味のある方はぜひお読みになってください。
◇ 【GroqCloud】 爆速回答!?GroqCloudの実力とは(3/12公開)
様々なテックブログで“爆速”と噂のGroqCloudについて、お試し実行した際の結果や実際の応答速度などを紹介しています。
【4】調和系工学研究室WHAT’S NEW
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◇ 北海道新聞にて川村教授のコメントが掲載されました
2025年3月7日付、北海道新聞にて、川村教授のコメントが掲載されました。
記事では、苫小牧の中小企業で広がるDXの取組を取材しています。
川村教授は地域の企業がDXに取り組む現状についてお話ししています。
◇ 愛媛新聞および朝日新聞に「AI一茶くん」が出場した俳句対局を取り上げていただきました
2025年3月8日付、愛媛新聞および、2025年3月11日付、朝日新聞にて、「AI一茶くん」が出場した「俳句対局 龍天王決定戦」を取り上げていただきました。
俳句対局は、同日、愛媛県美術館 講堂で愛媛県現代俳句協会の主催により開催されました。
「AI一茶くん」の開発チームとして、本研究室の学生とスタッフが句会に参加し、人類チームと対決しました。
朝日新聞の記事では、当日参加した山下准教授のコメントも掲載していただきました。
[朝日新聞]
[AI俳句協会サイト]
★ 研究室に関連する企業・ベンチャー等のニュース
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◇ イギリスBBCワールドニュースの番組にAWL CHRO 土田 美那氏が出演しました
2025年3月15日に放送されたイギリスBBCワールドニュースの番組「テック・エクスプローラー」にAWL株式会社 最高人事責任者 兼 上席執行役員 土田 美那 氏が出演しました。
番組ではBBC記者のポール・カーター氏が日本各地を旅しながら、未来を見据えた技術開発に情熱を燃やす人々を取材しています。4回目となる今回は、北海道から、北大発認定スタートアップAWLの取り組みを取り上げていただきました。
テック・エクスプローラー 日本:パート4 北から南へ
日本時間 (日本語字幕付)
3/15(土)10:30~11:00 ・16:30~17:00
3/16(日)23:30~24 :00
3/17(月)7:30~8:00
アマゾンプライム等でご視聴いただけます
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0CY3CCQ8L/ref=atv_dp_share_cu_r
イギリス時間
3/15 (土) 10:30 am 他
https://www.bbc.co.uk/programmes/m002967v
[AWL株式会社(北大発認定スタートアップ)]
◇ 「社長名鑑」にてAWL CEO 北出氏のインタビューが掲載されました
2025年3月にWebメディア「社長名鑑」にてAWL株式会社 代表取締役社長兼CEO 北出宗治 氏のインタビューが掲載されました。
北大発認定スタートアップであるAWLの創業経緯や事業の特長、今後の注力テーマなどをお話ししています。
[AWL株式会社(北大発認定スタートアップ)]
【5】人工知能・ディープラーニングNEWS
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★ 中華AIの衝撃、再び──中国発AIエージェント「Manus」が話題 OpenAI「deep research」よりも高性能とうたう(itmediaより)
中国発のAIエージェント「Manus」が話題だ。中国のAIスタートタップ・ManusAIが3月5日(現地時間)に発表したサービスで、AIの問題解決能力を測るベンチマークでは米OpenAIのAIエージェント「deep research」よりも好記録を達成したという。
★ 世界初、“100%”AI生成の論文が査読通過 Sakana AIの「The AI Scientist」が達成(itmediaより)
Sakana AIは3月12日、AIシステム「The AI Scientist」の改良版「v2」が書いた論文が、AIに関する国際カンファレンス「ICLR 2025」(International Conference on Learning Representations)のワークショップで査読を通過したと発表した。AI生成の論文が査読をクリアするのは世界初という。
★ 国内初、滋賀大が教育用AI「ChatGPT Education」導入 「生成AIは、あらゆる業種で必須と言っても過言ではない」(itmediaより)
滋賀大学は3月12日、米OpenAIが提供する教育用AIツール「ChatGPT Education」を導入すると発表した。学生に対し、生成AI技術に触れる機会を提供するのが目的。国内の大学で同ツールを導入するのは、初の試みとなる。
【6】調和系工学研究室関連企業NEWS
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★ インターパーク、050電話アプリで長崎県西海市商工会のDX化と働き方改革を支援(株式会社インターパーク)
050電話アプリを業務用携帯電話として活用(PoC)
【7】AI川柳
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調和系工学研究室では、毎日新聞社「仲畑流万能川柳」や第一生命保険「サラリーマン川柳」を学習用の教師データとした「AI川柳」に取り組んでいます。
2020年3月までの1年間「NHK総合 ニュースシブ5時」にて、その週の話題のニュースのキーワードをお題に、バーチャルアナウンサー「ニュースのヨミ子」さんが詠んでいたAI川柳も、本研究室が開発した人工知能システムです。
多くの皆さんに楽しんでいただけるよう、2020年6月にAI川柳のTwitterアカウント( https://twitter.com/ai_senryu )を開設いたしました。
AIには詠んだ句に対する「良し悪し」の感覚はありません。そのため、人間がどのように感じ、どのような情景を思い浮かべるかにより、AIが詠んだ句に意味が生じてきます。
AIが詠んだ句に共感していただけましたら大変うれしく思います!
★ お題「忘れて」(3月12日投稿)
しょうがないことを忘れて食べ終わる
諦めていたことも食事を終える頃には忘れてしまう、食の持つ癒し、気持ちの切り替え(感想は #ChatGPT と作成)。
★ お題「米」(3月14日投稿)
指先で拾い集めて米を研ぐ
こぼれた米粒を大切に扱う慎重さ, 米の一粒一粒に込められた価値や感謝の気持ち(感想は #ChatGPT と作成)
【ご寄附のお願い】
人工知能によるイノベーションでより素晴らしい世界を実現することが、私たち調和系工学研究室の使命であると考え日々研究に取り組んでいます。
大学での研究活動には、研究に必要な機器の整備のほかにも、学生の学会への参加や論文投稿など研究費が欠かせません。
私たちの取り組みにご賛同いただけ、応援のご寄附を賜れましたら大変心強く、研究を続けるうえで大きな励みとなります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
調和系工学研究室 教授 川村 秀憲
[北海道大学奨学寄附金制度について](本学への寄附金については、税法上の優遇措置の対象となります)お問い合わせ先:http://harmo-lab.jp/contact
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
◇ 次号は、2025年4月4日に配信する予定です。
◇ メールマガジンのバックナンバー
http://harmo-lab.jp/?page_id=2918
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調和系工学研究室教員
川村 秀憲教授
山下 倫央准教授
横山 想一郎助教
▽調和系工学研究室HP
▽調和系工学研究室FB
▽川村 秀憲教授FB
▽AI一茶くん
▽調和系工学研究室AI川柳
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