2025年2月22日、23日に小樽商科大学 札幌サテライトにて開催された「第24回複雑系マイクロシンポジウムin 札幌」に本研究室より、阿部 拓真さん(修士2年)、北野 勇太さん(修士2年)、後藤 健之介さん(修士2年)、帆井 健悟さん(学部4年)が参加し、研究発表を行いました。
[第24回 複雑系マイクロシンポジウムin 札幌]◆ 阿部 拓真, 横山 想一郎, 山下 倫央, 川村 秀憲:寄り道先選択の支援に向けたデフォルメ路線図生成手法の開発
本研究は、現在労力を要する経由地選択の問題に対し、情報提示の観点からアプローチを行うものである。理想的な経路図の概念を提案し、それを自動生成する手法を開発する。本手法では、経由地の位置を視覚的に強調することで、ユーザーが直感的に選択肢を認識できるようにする。これを実現するために、描画範囲の調整やノード配置の最適化を事前処理で行い、加えてLOOMライブラリの改良や独自の描画ライブラリの開発を取り入れた。
本研究では、名古屋エリアのランダムに生成したOD(出発地-目的地)ペアを用いて実験を行い、生成された経路図の視認性と正確性を評価した。その結果、経由地の重なりが大幅に減少し、ラベルの可読性が向上したことで、ユーザーが経由地をより容易に識別できることが確認された。
本手法は、視認性を向上させた新たな経路図生成の枠組みを提供し、ユーザーの意思決定を支援する。本研究の今後の課題として、より複雑な都市構造への適用範囲の拡大や、汎用的な自動経路図生成手法の確立が挙げられる。
◆ 北野 勇太, 横山 想一郎, 山下 倫央, 川村 秀憲, 小木曽 智信, 伊藤 孝行:形態素解析を用いた帝国議会・国会議事速記録における可能表現の自動抽出とその分析
本研究は,合計65億文字程度の規模の帝国議会と国会の速記録を用いて,可能表現の長期変遷の分析を目的とした.可能表現は議論において重要な表現とされており,従来は人手での精読によって使用の変遷についての研究が行われてきた.本研究では,品詞のパターンマッチングを用いて可能表現を自動抽出し,1890年から1980年頃の約90年間にかけて可能表現の出現割合が減少傾向にあることを明らかにし,大規模テキスト上での長期変遷を定量的に捉えることができた.
◆ 後藤健之介,横山想一郎,山下倫央,川村秀憲:競輪における注目レース選定とLLMを用いたレース紹介記事生成の検証
本研究では,競輪における意思決定支援の重要性と課題に焦点を当てている.
競輪では,出走表やオッズ情報,ライン情報などのレース前情報が膨大であり,注目すべきレースや車券の選択肢が多岐にわたるため,意思決定が複雑である.
さらに,情報が段階的に公開される特性から,各タイミングで異なる意思決定が求められる状況にある.特に初心者や新規ユーザーにとっては,どの情報を基にレースや車券を選択すべきかがわかりにくいという課題がある.
これらの課題を解決するために,本研究ではレース選定を基軸としたアプローチを提案する.具体的には,Transformer を利用して各車券の的中する生起確率を予測し,その予測結果や出走表公開時点での情報を活用して,注目度の高いレースを効率的に選定する手法を構築した.次に,選定したレースに基づき,大規模言語モデルを用いて,ユーザーが意思決定を容易に行えるような紹介記事を自動生成した.生成された記事には,レース情報,ライン情報,予測結果といった情報を含むことで,ユーザーが分かりやすく有用となるような情報提供を目指している.
生成記事に対してアンケート調査を実施し,記事の品質や有効性について評価を行った.車券代理販売業者の方々である競輪に詳しいユーザーを対象に,意思決定支援としての有効性や使いやすさを検証し,改善点を抽出した.今後は,この評価結果と提案された課題を基に,記事生成の精度向上やレース選定ルールの改善を進め,より実用的かつ信頼性の高い意思決定支援システムの構築を目指す.
◆ 帆井健悟, 横山想一郎, 山下倫央, 川村秀憲, 加太宏明, 柏村聡 : アダプティブクルーズコントロールにおけるステレオカメラを用いた深層ニューラルネットワークの評価
近年,深層学習技術の発展と大規模データの収集・活用が進展したことにより,エンドツーエンド型の自動運転システムに関する研究が盛んに行われている.しかし,高精度な推論を実現するためには高性能な学習用および推論用マシンが必要であり,研究開発や商業展開のコスト負担が大きいという課題がある.この課題に対処する1つの方法として,アルゴリズムにおける測距やセンサーフュージョンを不要とし,ネットワークを簡素化できる可能性から,ステレオカメラを入力センサーとして利用する手法が考えられる.
本研究では,ステレオカメラを用いた自動運転のエンドツーエンドモデル構築の初期的検討として,自動運転における基礎的なタスクであるアダプティブクルーズコントロール(Adaptive Cruise Control: ACC)を実現するモデルを開発した.具体的には,LiDARと画像を入力として自車の将来軌道を予測する既存モデル「Transfuser」を基に,ステレオカメラで取得した情報を用いて自車の要求加速度を予測するネットワークを設計・学習させた.さらに,独自に収集したデータセットを用いて提案モデルの推論性能を評価するとともに,誤差が大きい部分の特徴を分析し,その改善策について検討を行った.
日本の公道の約16万フレームのデータを用いて学習・評価した結果,加減速が少ない単調な環境では良好な精度が得られ,ステレオカメラモデルの実用化可能性が示唆された.一方,大きな加減速,上り坂,急激な光変化では精度が低下することが確認され,原因を考察し改善策を提案した.
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