2月4日(火)に修士2年生 5名の修士論文発表会が行われました。
◆ 阿部晃平
視覚言語モデルを用いた衣服画像ペアの比較文章生成に関する研究
A Study on the Generation of Comparative Captions Based on Garment Image Pairs Using a Vision-Language Model
概要: 本研究では,商品比較を行う消費者に向けた,任意の商品に関する主観的要素を含んだ比較情報を提供する手段の開発を目的として,衣服の比較文章を自動生成する方法を提案する.まず,生成する比較文章の内容設計のために既存の商品比較記事を分析した.その結果,効果的な比較文章は「比較対象商品の提示」と「詳細な比較」という構成要素を持ち,商品の属性が客観属性と主観属性に分類されることが確認された.この分析結果を基に,視覚言語モデル(VLM)を活用し,段階的な処理を導入した比較文章生成手法を設計した.提案手法では,衣服画像から客観属性を特定し,それを基に主観属性を推定する.その後,共通する客観属性と顕著に異なる主観属性を抽出し,これらを基に比較文章を生成する.提案手法の有用性を評価するために実施したアンケート調査では,提案手法による比較文章が多くの消費者に有用な情報を提供できることが示された.また,段階的な処理の導入により生成文章の質が向上することも確認された.一方で,正確性のさらなる向上や,属性の具体性を強化することで,より有用な情報提供が可能になることが確認された.
― 発表を終えて
修士論文発表を終え、ここまで研究を進めることができたのは、多くの方々の支えがあったからこそだと実感しております。
研究の過程で直面した課題も、先生方や研究室の皆様のご指導とご支援のおかげで乗り越えることができました。
論文執筆や発表を通じて得た経験を糧に、今後も研鑽を積んでまいります。
ご指導くださった先生方、研究室の皆様に心より感謝申し上げます。
◆ 阿部 拓真
寄り道先選択支援のためのデフォルメ路線図の生成手法に関する研究
A Study on the Method for Generating Deformed Route Maps for Supporting Detour Destination Selection
概要:近年、移動回数の減少が都市の活性化や地域経済に影響を与えることが懸念されています。その中で、移動中の「寄り道」行動は移動回数の増加に寄与する可能性が指摘されています。しかし、寄り道先を選ぶためには情報検索の手間がかかり、このプロセスが寄り道行動の障壁となることも少なくありません。
本研究では、移動中の寄り道行動を支援するため、決定した経路情報と寄り道先リストをもとに、デフォルメ路線図を自動生成する手法 を開発しました。既存の路線図作成ツール「LOOM」を基盤とし、寄り道候補地を視覚的に強調することで、利用者が直感的に寄り道先を把握しやすい路線図の生成を可能にしました。
名古屋エリアを対象とした実験では、寄り道候補地の視認性向上や情報の重なりの軽減といった効果が確認されました。一方で、路線の折れ曲がりやラベル配置の課題、より複雑な都市構造への適用可能性など、今後の改良が必要な点も明らかになりました。
本研究は、寄り道を促進する新たな視覚的アプローチを示すものであり、利用者の移動体験の向上や都市の活性化に貢献することが期待されます。今後は、ラベル配置や路線描画のさらなる最適化を進めるとともに、より多様な都市環境での適用性を検証し、実用的な寄り道支援システムの構築を目指します。
― 発表を終えて
毎週のように先生方とミーティングを行い、どういった方針でやっていくべきか、どうしたら研究としてよいものになるのかというのを話し合いながら作業を進めていき結果発表まで持ってこられました。ここまでやってくるのは大変でしたが、振り返ってみると良い経験になりました。社会人になってもこれらの経験はきっと生きてくるんだろうなと思います。
また、ミーティングのほかにも研究室の学生には議事録や討論・助言といった様々な形での協力をいただきました。皆さんのおかげで発表は完成したといっても過言ではありません。本当にありがとうございました。
◆ 北野 勇太
帝国議会および国会議事速記録における可能表現の長期的変遷に関する研究
A Study of Long-Term Changes in Expressions of Possibility in the Stenographic Record of the Proceedings of the Imperial Diet and the National Diet
概要:本研究は,帝国議会議事速記録という数億文字規模の会議録資料をテキスト化し大規模コーパスとして活用するための基盤構築と,帝国議会および国会の会議録を用いて可能表現の長期変遷の分析を目的とした.従来は OCR 処理や人手での入力に依存していた作業を効率化するため,OCR 後の誤認識を効率よく修正することができるシステムを開発した.このシステムは日本語教科書をはじめとする他の歴史的資料のテキスト化を目指している.さらに,帝国議会・国会の会議録全体に対し,品詞のパターンマッチングを用いて可能表現を自動抽出し,1890 年から 1970 年頃の約 80 年間にかけて可能表現が減少傾向にあることや,「出来る」を利用した表現が徐々に短い形に移行していることを明らかにした.これにより,人手での精読では把握しにくかった大規模テキスト上での長期変遷を定量的に捉えることができた.
― 発表を終えて
学会発表や修士論文発表の資料作成にあたっては先生方,先輩方から様々な助言をいただき,発表内容の充実に繋がりました.心より感謝申し上げます.ここでの経験は,今後のキャリアの大きな糧となると確信しています.
◆ 後藤 健之介
競輪における注目レース選定とLLMを用いたレース紹介記事生成に関する研究
A Study on Selection of Noteworthy Races in Keirin and the Generation of Articles introducing Races Using LLM
概要:本研究では,競輪における意思決定支援の重要性と課題に焦点を当てている.
競輪では,出走表やオッズ情報,ライン情報などのレース前情報が膨大であり,注目すべきレースや車券の選択肢が多岐にわたるため,意思決定が複雑である.
さらに,情報が段階的に公開される特性から,各タイミングで異なる意思決定が求められる状況にある.特に初心者や新規ユーザーにとっては,どの情報を基にレースや車券を選択すべきかがわかりにくいという課題がある.
これらの課題を解決するために,本研究ではレース選定を基軸としたアプローチを提案する.具体的には,Transformer を利用して各車券の的中する生起確率を予測し,その予測結果や出走表公開時点での情報を活用して,注目度の高いレースを効率的に選定する手法を構築した.次に,選定したレースに基づき,大規模言語モデルを用いて,ユーザーが意思決定を容易に行えるような紹介記事を自動生成した.生成された記事には,レース情報,ライン情報,予測結果といった情報を含むことで,ユーザーが分かりやすく有用となるような情報提供を目指している.
生成記事に対してアンケート調査を実施し,記事の品質や有効性について評価を行った.車券代理販売業者の方々である競輪に詳しいユーザーを対象に,意思決定支援としての有効性や使いやすさを検証し,改善点を抽出した.今後は,この評価結果と提案された課題を基に,記事生成の精度向上やレース選定ルールの改善を進め,より実用的かつ信頼性の高い意思決定支援システムの構築を目指す.
― 発表を終えて
研究活動において、ゼミやミーティングでの貴重なご助言、手厚いサポート、そして精神的な支えなど、数えきれないほどのご支援を賜りました先生,先輩,同期,後輩の皆様に、心より感謝申し上げます。
最後まで至らぬ点ばかりでご迷惑をおかけしましたが、皆様の温かいご指導のおかげで、なんとか研究活動をやりきることができました。誠にありがとうございました。
これまでの学びを糧に、これからも精進していきます。
◆ 冨澤 峻己
LLMを用いた俳句推敲と批評文生成に関する研究
A Study of Haiku Revision and Critical Writing Generation Using LLM
概要:本論文では,日本の伝統文芸である俳句に焦点を当て,芸術分野において重要な作業である評価・選択・推敲・批評に対して,大規模言語モデル(LLM)を用いて取り組む.深層学習モデルが生成した約1 億句の俳句が蓄積されたデータベースを対象として, 評価・選択手法を開発する.選択の過程で,生成句が旧仮名遣いや文語表現を多く含むことに着目し,俳人の推敲プロセスに基づくLLMによる現代的な俳句への推敲を行う.選択した推敲前後の俳句について俳人へのアンケート調査を行い,選択手法の性能を検証する.また,批評文の中でも一般的な俳句の長所や出来栄えを評価する批評文の生成手法を開発する.俳人が作成した批評文を分析することにより生成する批評文に必要な情報を決定し,LLM に与えることでこれを実現する.生成文について俳人へのアンケート調査を行い,長所や出来栄えを評価する批評文としての質を検証する.
― 発表を終えて
学部からの分野変更により研究活動の遂行に不安がありましたが,先生方の手厚いサポートや研究室の学生の手助けにより発表を終えることができました.
ご協力いただいた皆様に深く感謝申し上げます.
本研究室での貴重な経験を今後の社会人生活に活かしていきたいと思います.
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お問い合わせ:http://harmo-lab.jp/contact
ご意見・ご感想もお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。