『指導と評価』2024年1月号掲載,川村教授寄稿「AI時代の学校教育/未来を生きるための能力:AIに取って代われない人間の価値」、ディープラーニング勉強会の発表内容をお届けします/harmolab122

こんにちは。
北海道大学調和系工学研究室(川村秀憲教授、山下倫央准教授、横山想一郎助教)です。

今号のメルマガでは、日本教育評価研究会機関誌『指導と評価』2024年1月号にて掲載された川村教授の寄稿文を紹介します。
「AI時代の学校教育/未来を生きるための能力:AIに取って代われない人間の価値」と題した本稿で、川村教授はAIに置き換えられにくい能力や意思決定能力を養うことの重要性、自発的な学びの必要について、論考しています。
興味のある方はぜひお読みになってください。

それでは、本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2024年6月7日配信
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■ 本日のTopics
【1】AI時代の学校教育/未来を生きるための能力
【2】ディープラーニング勉強会
【3】調和系工学研究室WHAT’S NEW
【4】人工知能・ディープラーニングNEWS
【5】調和系工学研究室関連企業NEWS
【6】AI川柳
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【1】AI時代の学校教育/未来を生きるための能力
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(『指導と評価』2024年1月号,川村教授寄稿「AI時代の学校教育/未来を生きるための能力:AIに取って代われない人間の価値」より一部を抜粋)

◇ 今後求められる能力

さて、このような背景を受けて、大学で教鞭を取っている箪者も「学生がレポートをChat GPTで回答したらどうするのか」という質問を受けるので、それについて筆者の考えを述べておきたい。

まず、大学の講義は目的、到達目標などを明確化したシラバスに沿って行われる。講義の目的は受験した学生が専門知識を習得することであり、習得したかどうかを問うために試験やレポートを課しているはずである。

とすると、そもそもChatGPTに答えられてしまうようなレポートを課している講義で習得をめざしている専門知識はすでにChatGPTが習得済みということを意味する。

そのような知識をわざわざ技術の助けを借りずに答える能力を習得することに意義はあるのであろうか。学生の素の基礎能力を測る意味はあるのだろうが、社会に出れば使える技術を有効に使って効率よく課題解決していくことが求められる。とすれば、ChatGPTを使うことで不都合が生じるようなシラバスではなく、ChatGPTをうまく使いながら解決困難な課題を的確に効率よく解決していく能力の習得を目的とすべきではないかと考える。

だとすると、人がこの先身につけていなかければならない能力とは何であろうか。そして、それと教育の関係はどうあるべきであろうか。現在、ほとんどの教育機関では国数理社英に代表される科目について、決められたシラバスに沿って教育が行われている。各教育機関において、もちろん人格形成や社会性、協調性の育成、自ら考えることの大切さを学ぶなど崇高な教育理念があるが、それでもなぜ国数理社英を脈々と各学年毎年全員が勉強する必要があるのだろう。

身もふたもないが、多くの当事者は「いい成績を取れればいい学校に進学できて、一流の会社に就職でき、高い給料をもらえて幸せな生活を送ることができる」ことを目標に日々勉強しているのではないか。では、なぜ国数理社英でよい成績を取ってきた人に高い給料が払われるのか。それは、会社や組織が成長し持続可能であるためには国数理社英に代表される高い基礎能力をもった人が必要だから、高い給料を払ってでもその人を雇いたいということだろう。しかし、高度なAIの登場によって将来この構図が成り立たなくなる可能性がある。

教育機関で習得する能力がそれだけ何世紀にもわたって世界中で必要とされるものならば、莫大な予算をかけてそれを代替するAIを開発することは大きな経済合理性が働くはずである。AIの研究開発はもはや莫大な予算を必要としており、何よりも経済合理性が追求される時代になりつつある。そのような文脈でChatGPTの登場を理解すると、広く長年必要とされた基礎能力がAIによって代替されていく未来への一歩を踏み出してしまったと言える。遠くない将来、これまでの科目で良い成績を収めることはもはや人に求めれらる能力ではなくなるかもしれない。

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『指導と評価』2024年1月号はこちらからご購入いただけます
http://www.toshobunka.co.jp/magazine/detail.php?year=2024&month=1
ご意見・ご感想はこちらからお願いいたします
http://harmo-lab.jp/contact


【2】ディープラーニング勉強会
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調和系工学研究室ではディープラーニングの最新の知識共有を目指し、毎週ゼミを実施しています。担当学生がトップカンファレンスから自分の興味のある論文について発表し、意見交換をしながら進めています。
本研究室HP( http://harmo-lab.jp/?page_id=1194 )には過去の発表に使用したスライドも公開していますので、ご興味のある方はぜひそちらもご覧ください。

◆ 2024/5/31紹介論文
出典:Guilherme Potje, Felipe Cadar, Andre Araujo, Renato Martins, Erickson R. ascimento: XFeat: Accelerated Features for Lightweight Image Matching, Proceedings of the 2024 IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR) (2023)
掲載紙:arXiv
[公開URL]

概要:リソース効率に優れた特徴点マッチングのための軽量なアーキテクチャ「XFeat(Accelerated Features)」を提案します。
手法は、局所的な特徴点の検出、抽出、マッチングのための畳み込みニューラルネットワークの基本的な設計を再検討します。
特に、リソースが限られたデバイス向けに迅速かつ堅牢なアルゴリズムが必要とされるため、解像度を可能な限り高く保ちながら、ネットワークのチャネル数を制限します。
さらに、スパース下でのマッチングを選択できる設計となっており、ナビゲーションやARなどのアプリケーションに適しています。
XFeatは、高速かつ同等以上の精度を実現し、一般的なラップトップのCPU上でリアルタイムで動作します(博士3年 森 雄斗)。

[論文紹介スライド]


【3】調和系工学研究室WHAT’S NEW
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◇ 北海道政経懇話会に川村教授が登壇します

2024年6月12日(水)正午から札幌東急REIホテルで開催される北海道政経懇話会6月例会に川村教授が登壇します。
当日は「人工知能の未来 ChatGPTの先に待っている世界」をテーマにお話しする予定です。

詳細はこちらからご覧いただけます
https://kk.hokkaido-np.co.jp/post-2437/

[北海道政経懇話会]


◇ 川村研究所が後援する「北海道カムバックイベント vol.2」が開催されます

2024年6月26日(金)、EZOHUB TOKYO(東京都品川区)にて、川村研究所が後援する転職イベント「北海道カムバックイベント vol.2」が開催されます。
本イベントは、北海道内の企業と参加者の継続的なコミュニケーションを促し、北海道へのU/Iターン転職を検討する際に直面する課題の解決や、転職のきっかけを提供することを目的としています。
当日は、道内企業のピッチ登壇、カジュアル面談、懇親会が予定されていますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。

日 時:2024年6月28日(金)午後5時半開場 / 午後6時~午後9時
会 場:EZOHUB(エゾハブ)TOKYO(天王洲アイル)
参加費:無料
共 催:株式会社InnovationBASE 北海道、Vibes-Jobs(TK-lab)
後 援:札幌市役所、川村研究所

お申し込みや詳細はこちらからご覧いただけます。
https://prj-cbs2.peatix.com/

[北海道カムバックイベント vol.2]
[川村研究所]


◇ 『月刊J-LIS 令和6年6月号』にて川村教授の巻頭インタビューが掲載されました

2024年6月1日発行、『月刊J-LIS 令和6年6月号』の特集テーマ「自治体におけるAIの活用」にて川村教授の巻頭インタビューが掲載されました。
川村教授が「自治体間競争の時代に向けたAI活用のポイントは、AIと人との役割分担の明確化にあり」をテーマにお話ししています。

『月刊J-LIS』は ぎょうせいオンラインショップにてお求めいただけます
https://shop.gyosei.jp/products/detail/12037

[『月刊J-LIS』−唯一の自治体ICT専門誌−]


◇ 婦人公論.JPにて『10年後のハローワーク これからなくなる仕事、伸びる仕事、なくなっても残る人』を取り上げていただきました

2024年5月30日~、婦人公論.JPのwebサイトにて、川村教授の著書『10年後のハローワーク これからなくなる仕事、伸びる仕事、なくなっても残る人』から、「公務員、公共団体のAI化」、「小売業界のAI化」、「金融業界のAI化」について取り上げていただきました。

記事は本書の一部を再編集したものになります。
ご興味のある方はぜひお読みになってください。
「公務員、公共団体のAI化」 :https://fujinkoron.jp/articles/-/12361
「小売業界のAI化」: https://fujinkoron.jp/articles/-/12362
「金融業界のAI化」 :https://fujinkoron.jp/articles/-/12363

[川村秀憲著『10年後のハローワーク これからなくなる仕事、伸びる仕事、なくなっても残る人』]


★ 研究室に関連する企業・ベンチャーのニュース
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◇ 『令和5年度札幌市ものづくり支援事業成果事例集』にて調和技研の取組が掲載されました

『令和5年度札幌市ものづくり支援事業成果事例集』にて、株式会社調和技研の取組が掲載されました。
札幌市では食関連分野、健康福祉・医療関連分野、製造関連分野、IT関連分野、介護支援分野、環境関連分野において、さっぽろ連携都市圏内の企業等が行う新開発・新技術開発の取組を支援しています。
株式会社調和技研は昨年度にDXモデル創出補助金を受け、中小企業のDX促進を狙いとする特化型AIモデルのプラットフォームを開発しました。

本事業における株式会社調和技研の取組はこちらからご覧いただけます
https://www.city.sapporo.jp/keizai/seikajirei/documents/r6_p17_low.pdf

[『令和5年度札幌市ものづくり支援事業成果事例集』]
[株式会社調和技研(北大発認定ベンチャー)]


【4】人工知能・ディープラーニングNEWS
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「AIと共存すべき」人気声優・梶裕貴 自身の声で自由にしゃべれるAIソフト発売へ 「たくさん悩んで」決断
 「正直、たくさん悩みました」――人気声優の梶裕貴さんが、自身の声で自由にしゃべらせることができる音声合成ソフト「CeVIO AI 梵そよぎ(そよぎそよぎ) トークボイス」を製品化すると発表した。

汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏最新インタビュー
OpenAIの最新大規模言語モデル(LLM)「GPT-4o(フォーオー)」の発表前日に、OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏のインタビュー動画がリリースされた。

「ランサムウェアを使って楽に稼ぎたかった」生成AIでウイルス作成容疑の男
生成AIを悪用してコンピュータウイルスを作成したとして、警視庁サイバー犯罪対策課は不正指令電磁的記録作成の疑いで、川崎市幸区古市場の無職、林琉輝(りゅうき)被告(25)=別の詐欺罪で起訴=を再逮捕した。「ランサムウェアを使って楽に稼ぎたいと思っていた」「AIを使えばできると思った」などと容疑を認めている。

「もうAIって人間と区別つかないよね……」 米研究者らがGPT-4などでチューリングテスト 結果は?
米カリフォルニア大学サンディエゴ校に所属する研究者らは、AIが人間と区別がつかないレベルに達しているかどうかを調べるために、チューリングテストを実施した研究報告を発表した。

Yahoo!知恵袋、「AI回答機能」にClaude 3を追加 「2種類の生成AIによる回答がつく」
LINEヤフーは5月30日、知恵共有サービス「Yahoo!知恵袋」の「AI回答機能」に米Anthropicの大規模言語モデル「Claude 3」を追加すると発表した。Web版では5月29日から、iOSアプリ版とAnadroidアプリ版は6月4日から提供する。

「大規模言語モデルの開発」に関するまとめ資料 東工大・岡崎教授が公開 全85ページ
東京工業大学情報理工学院の岡崎直観教授は5月30日、大規模言語モデル(LLM)の開発に関する現状や課題などをまとめた資料を公開した。28~31日に開催する「第38回人工知能学会全国大会」の講演で使われた資料で全85ページ。スライド共有サービス「Speaker Deck」にて無料で公開している。

AI開発・運用手法「MLOps」の資料、サイバーエージェントが無料公開 全500ページ超えの大ボリューム
サイバーエージェントは、AIや機械学習アルゴリズムの開発・運用手法「MLOps」の研修資料を無料公開した。アプリ開発などに使う仮想化技術「Container」の資料の他、MLOpsの基礎編と応用編、実践編の全4つの資料を公開している。


【5】調和系工学研究室関連企業NEWS
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AIで電力の需給計画を最適化 北海道電力、東京の企業とシステム開発(北海道電力株式会社)
北海道電力は3日、社会インフラ向けの人工知能(AI)を手がけるグリッド(東京)と共同で、火力発電と水力発電の需給計画を最適化するシステムを開発したと発表した。

ニッセイコムが社内依頼作業のDXで、年間3,400時間を削減[株式会社日立ソリューションズ](株式会社ニッセイコム)
依頼管理が効率化できる「グループタスク リマインダーサービス」を高評価

NTTPCと網屋が業務提携 NTTPCの「カスタムクラウド」が網屋の「フルマネージドSASE Verona」等のプラットフォームに採用(株式会社網屋)
株式会社NTTPCコミュニケーションズと株式会社網屋は業務提携し、NTTPCの「カスタムクラウド」が網屋の「フルマネージドSASE Verona」等のプラットフォームに採用されます。あわせてNTTPCが「フルマネージドSASE Verona」を販売開始いたします。


【6】AI川柳
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調和系工学研究室では、毎日新聞社「仲畑流万能川柳」や第一生命保険「サラリーマン川柳」を学習用の教師データとした「AI川柳」に取り組んでいます。

2020年3月までの1年間「NHK総合 ニュースシブ5時」にて、その週の話題のニュースのキーワードをお題に、バーチャルアナウンサー「ニュースのヨミ子」さんが詠んでいたAI川柳も、本研究室が開発した人工知能システムです。
多くの皆さんに楽しんでいただけるよう、2020年6月にAI川柳のTwitterアカウント( https://twitter.com/ai_senryu )を開設いたしました。

AIには詠んだ句に対する「良し悪し」の感覚はありません。そのため、人間がどのように感じ、どのような情景を思い浮かべるかにより、AIが詠んだ句に意味が生じてきます。
AIが詠んだ句に共感していただけましたら大変うれしく思います!

★ お題「新緑」(5月22日投稿)
チューリップ我が家のだれに似ているか
家庭内の愛情や親密さ、誰がその特性を持っているかを考える楽しみ(感想は #ChatGPT と作成)

★ お題「抹茶」(5月23日投稿)
ストレスが抹茶を少し呑み過ぎた
抹茶が持つ落ち着きや癒しの効果を求めて、つい多く飲んでしまう様子(感想は #ChatGPT と作成)



【ご寄附のお願い】
人工知能によるイノベーションでより素晴らしい世界を実現することが、私たち調和系工学研究室の使命であると考え日々研究に取り組んでいます。
大学での研究活動には、研究に必要な機器の整備のほかにも、学生の学会への参加や論文投稿など研究費が欠かせません。

私たちの取り組みにご賛同いただけ、応援のご寄附を賜れましたら大変心強く、研究を続けるうえで大きな励みとなります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

調和系工学研究室 教授 川村 秀憲

[北海道大学奨学寄附金制度について](本学への寄附金については、税法上の優遇措置の対象となります)
お問い合わせ先:http://harmo-lab.jp/contact

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◇ 次号は、2024年6月21日に配信する予定です。
◇ メールマガジンのバックナンバー
https://harmo-lab.jp/?page_id=2918

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