第18回情報科学技術フォーラムにて発表を行いました

9月3日~5日に岡山大学津島キャンパスで開催された第18回情報科学技術フォーラム(FIT2019)(http://www.ipsj.or.jp/event/fit/fit2019/index.html)にて、博士1年の平間 友大さん、修士2年の神戸 瑞樹さん、幡本 昂平さん、吉田 拓海さんの4名が発表を行いました。

今回は幡本さんが、学会に参加して気づいた問題点と最近の動向についてまとめてくれました。

今回FIT2019に参加して、どの研究も実問題を考慮に入れてはいるものの、実際に使える状況の検討がまだまだ不足していると感じました。

背景には実データの利用が大学の研究室では難しい状況にある場合が多いことがあると考えられます。

ただ、今回のFITでは企業の研究者の方が多く参加されており、企業が保持する情報を研究に広く利用できるようになる流れは来つつあるのかもしれません。(幡本 昂平)

なお、4名が発表した内容は下記になります。

・平間 友大, 横山 想一郎, 山下 倫央, 川村 秀憲,鈴木 恵二,和田 雅昭 : CNNを用いた音響画像に基づく定置網内の魚種推定の精度向上

・神戸 瑞樹, 横山 想一郎, 山下 倫央, 川村 秀憲 : CNNを用いた服飾・風景画像に対する印象の推定

・幡本 昂平, 横山 想一郎, 山下 倫央, 川村 秀憲 : 代替出勤依頼における従業員の受諾確率推定

・吉田 拓海, 横山 想一郎, 山下 倫央, 川村 秀憲 : 競輪における購買支援コンテンツのためのレース結果予測手法の検討

また、それぞれが興味をもった研究発表についてもレポートしてもらいました。

平間 友大
特に興味を持った研究発表として、「認識モデルクローン手法の一般化と評価」伊藤 千紘・安藤 申将・工藤 航・酒造 正樹・前田 英作(東京電機大学)を紹介します。

この研究では、近年Amazon Machine LearningやGoogle Cloud Platformに代表される機械学習を利用した画像認識などを行うサービス(MLaaS:Machine Learning as a Service)に対して行われるモデル抽出攻撃に着目しています。

筆者は、攻撃者の視点に立って実際にモデル抽出攻撃をシミュレーションすることで課題を明らかにし、防御策を講じることができると述べています。

実験ではシンプルな機械学習モデル(SVM,決定木など)を用い、効率よく学習するためのサンプリングアルゴリズムや、なるべく少ない試行回数でクローンモデルを作成する手法を検討していました。

結果として、WINEデータセット(http://archive.ics.uci.edu/ml/datasets/Wine)を用いたターゲットモデルとクローンモデルの同一入力に対する出力の一致率は最高で99.7%となっています。

今後より複雑なモデルに対してもモデル抽出攻撃は脅威になると考えられるため、この分野の研究動向は注目していく必要があります。

神戸 瑞樹
「物体領域に着目した画像分類に関する研究」鷲田武晃・大野将樹・獅々堀正幹(徳島大)

ディープラーニングにおいて、違いが細かいものの分類(Fine-grained画像分類)を行う場合、分類対象ではなく、背景領域に着目して分類を行っている場合が存在し、これによって、精度の低下を招いていました。

この研究では、Grad-CAMとSemantic Segmentationを組み合わせて背景領域に着目している場合は、segmentationで抽出された領域を削除しないように背景領域を削減し、背景領域を絞り込むことで分類精度を向上させる手法を提案しています。

全体としての精度は上がったものの、背景を特徴として学習してしまっているクラスについては、精度が下がる結果となっていました。

幡本 昂平
今回のFITでは主にエージェント応用のセッション・株式会社LINEの取り組みについて聴講しました。

エージェント応用のセッションでは、直接的に実応用を考えたものから理論的側面が強いものまで幅広い発表が見られました。

私の研究に関連のある実応用を考えたものでは、「マルチエージェントシミュレーションにおけるアンケートベースのエージェント動作設定方法の検討」岡田 礼・今野 将(千葉工大)として、エージェントシミュレーションにおけるエージェントのパラメータ設計にアンケートを用いることでモデルの説得性を高め、プログラミングを容易にするという内容の発表がありました。

残念ながらアンケートを用いたモデル化の有用性についてはデータ不足から検証できていないとのことでお聞きすることができませんでした。

私も現実の状況のモデル化にアンケートを用いたことがあり、アンケートを利用したパラメータ設計に関する普遍的な枠組みを打ち立てることができれば、実社会シミュレーションを行う際の手順の高速化・説得性の向上の点で非常に有用であると感じました。

LINEの発表においては、LINEが取り組んでいる種々のAI関連サービスの紹介や学生に求めることについてお聞きすることができました。

とくに、学生に求めることに関しては多くの方に共有すべき内容でしたので、ここで紹介させていただきます。

LINEが学生に求めることは(1)コンピュータサイエンスの知識を持つこと、(2)プログラミングスキルを持つこと、(3)meet up等に積極的に参加することの3つがあるとのことでした。

(1)・(2)については情報系の学生であれば当然身につけておかなければならないものですが、(3)については私自身あまり取り組めていないと感じています。

これに関して勉強会等の開催情報がまとめられているサイト(https://compass.com)の紹介がありましたので、共有させていただきます。

吉田 拓海
私の研究では、競輪のレース結果を予測し、予測結果に基づいて収益の得られる車券を選択するということに挑戦しています。

それに関連する発表として「イントラデイデータに基づいたVI指数予測モデルによるボラティリティートレーディングの売買シミュレーション」佐々木皓大(奈良先端大/東京都市大)・諏訪博彦(奈良先端大)・小川祐樹(立命館大)・梅原英一(東京都市大)・山下達夫・坪内孝太(Yahoo!JAPAN研)を紹介します。

本発表は、株価の変動率を示すVI指数の上昇を予測するモデルの有効性を売買シミュレーションによって検証するという内容です。シミュレーションの結果から、予測モデルの予測結果に基づいた売買指示に従うことで、収益を得られる可能性があることを示しました。

私の研究においても、テストデータに対するシミュレーションでは、収益を得られることが分かっていますが、現実で運用するとなるとシミュレーション通りの結果が得られないことがあります。

本発表についても、実際にトレードを行った実証実験の結果が非常に気になるところです。