こんにちは。
北海道大学調和系工学研究室(川村秀憲教授、山下倫央准教授、横山想一郎助教)です。
節分を過ぎ、暦の上では立春を迎えました。まだまだ厳しい寒さが続いておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
さて、本日のメルマガでは、2026年1月5日発売「サンデー毎日」の特集「大予測 2026年こうなる!!」に掲載された川村教授の寄稿文を紹介します。
本稿で川村教授は、生成AIが私たちの生活や仕事に与える影響について、「三つの地殻変動」を予測しています。
ご興味のある方はぜひお読みになってください。
それでは、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
2026年2月6日配信
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■ 本日のTopics
【1】川村教授のエッセイ
【2】調和系工学研究室WHAT’S NEW
【3】人工知能・ディープラーニングNEWS
【4】調和系工学研究室関連企業NEWS
【5】AI川柳
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【1】川村教授のエッセイ
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大予測 2026年こうなる!!
「指示待ち」AIはもう古い 「執事」が仕事を奪う日
2022年11月、ChatGPTの登場が世界に衝撃を与えてから数年。生成AIの進化は、もはや「日進月歩」という言葉すら生ぬるいほどの加速を見せている。今やGeminiやClaudeといった複数の高性能なサービスが群雄割拠し、それらに司法試験や医師国家試験、大学入試問題を解かせれば、やすやすと合格ラインを突破し、人間を凌駕する知性を発揮する。
単なる知識の切り売りではない。数学の難問やプログラミング、複雑な調査レポートの作成など、高度な「論理的思考」や「構成力」が求められる領域でも、AIは既に人間のレベルを超えつつあるのだ。画像・動画・音楽の分野でも、簡単な指示ひとつでプロ顔負けの作品が生み出されることは、もはや驚きではなくなりつつある。
振り返れば25年は、こうした生成AIがビジネスの最前線から一般家庭にまで浸透し、「日常の景色」に溶け込んだ1年であった。仕事や教育、趣味の世界に至るまでAI活用が当たり前となり、かつて人間がこなすことが前提だったホワイトカラーの仕事にも、AIという「新しい同僚」が入り込み始めた。電気やインターネットが社会インフラとなった時と同様、私たちは今、文明の在り方が根底から覆る歴史的転換点の渦中にいる。
では、この激動を経て迎える26年は、一体どのような年になるのか。筆者は、私たちの生活と仕事を直撃する「三つの地殻変動」が起きると予測している。
第一の衝撃は、「AIエージェント」の実装と普及だ。「エージェント」とは「代理人」を意味する。これまでのAIは、人が質問すれば答えてくれる「賢い相談相手」に過ぎなかった。名案は出してくれても、実行するのは人間だった。
しかし、これからは違う。AIエージェントは、目標さえ与えれば、人の代わりに自ら計画を立て、外部ツールを駆使して任務を完遂し、結果だけを報告してくる。たとえば、「来週の出張手配を頼む」と告げるだけで、ユーザになり代わって航空券やホテルを予約し、現地の市場動向をリサーチしてレポートを作成し、あろうことか取引先とメールをやり取りして会食のレストランまで確保する。
AIが単なる「道具」から、自律的に動く「執事」へと進化するのだ。これは便利である反面、残酷な未来も示唆している。AIエージェントを使いこなして成果を上げる側と、単純な事務処理しかできずAIエージェントに仕事を奪われる側。26年は、この「分断」が目に見える形で現れ始める年になるだろう。
第二の変化は、AI駆動による「科学技術の劇的な加速」だ。世間の目は対話や画像生成に向きがちだが、水面下ではもっと凄まじいことが起きている。研究開発の現場に高度なAIが導入され、人類が長年解けなかった難問を次々と突破し始めているのだ。
たとえば医療分野では、AIのサポートにより画期的な新薬や新素材が開発されたり、未解明だった病気のメカニズムが解明されたりしつつある。エネルギー分野でも、新たな高効率モータの開発や、夢のエネルギーとされる核融合炉の複雑なプラズマ制御が可能になるなど、その成果は枚挙にいとまがない。
間接的ではあるが、AIという「異次元の知性」の恩恵により、科学技術の進歩は数十年分スキップする勢いで加速する。その成果が実用化され、私たちの健康や暮らしに具体的な恩恵をもたらし始めるのが26年という年になるはずだ。
第三は、産業における「参入障壁」の崩壊である。象徴的なのが音楽ビジネスだ。これまでヒット曲を生み出して利益を得るには、楽譜の読み書き、楽器の演奏技術、そして高い歌唱力という、長い修練に裏打ちされた「高い壁」を越える必要があった。
しかし、音楽生成AI「Suno AI」などの登場がその常識を一変させた。簡単なイメージを伝えるだけで、AIが作詞・作曲・演奏、そしてボーカルまでをも担当し、一瞬にして楽曲を生成する。ユーザは無数の候補から気に入ったものを選ぶだけでいい。楽譜が読めずとも、楽器に触れたことがなくとも、世界に一つだけの名曲を作れる時代が到来したのだ。
同様の革命は、文章、イラスト、動画制作、ソフトウェア開発でも起きている。「技術」という特権階級的な壁が消滅し、純粋な「アイデア」と「感性」さえあれば、誰もが市場に参入できる。これまで考えられなかった異分野からの参入者が相次ぎ、産業構造そのものが激変していくだろう。
ほかにも教育、仕事の意義、人間関係、政治など、あらゆる領域で既存の価値観が揺さぶられることになるだろう。26年は、AIによって社会のOS(基本ソフト)が書き換わる象徴的な一年となる。変化の波は荒いが、恐れて立ち尽くすのではなく、柔軟に対応しながら、人間にしかできない「より良い価値」とは何かを見定めていきたいものである(2026年1月5日発売「サンデー毎日」掲載)。
【2】調和系工学研究室WHAT’S NEW
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◇ 「札幌AI道場 第4期・成果発表会」に川村教授が登壇します
2026年3月3日(火)、札幌市民交流プラザにて開催される、札幌AIラボ主催「札幌AI道場 第4期・成果発表会」に川村教授が登壇します。
札幌AI道場は、企業の実課題に基づく課題解決型AI人材育成(PBL)とAI開発の実証(PoC)を同時に行うプログラムです。本期も、道内企業が実際に抱える業務課題に対し、AIを活用した解決策の検討・提案・実装に取り組みました。
本イベントでは、参加企業が抱える課題に対して、道場門下生であるエンジニアがどのようにAIを活用し、解決に取り組んできたのか、約半年間にわたる実践の成果を紹介します。
新たなつながりや学びの機会となる交流の場も用意していますので、AIやデータ活用に関心のある企業・関係者の方はぜひご参加いただければ幸いです。
川村教授は、各参加企業の成果発表の後、「全体講評・トークセッション」にて札幌AIラボ長 として登壇します。
日時:2026年3月3日(火)15時30分~20時30分(予定)
第一部 15時30分~19時30分 札幌AI道場 第4期 成果発表会
第二部 19時30分~20時30分 交流会 (立食形式、事前申込要)
会場:札幌市民交流プラザ3階クリエイティブスタジオ(札幌市中央区北1条西1丁目)
参加定員:300名(要事前申込。先着順)
参加費用:無料、交流会参加者は1人1,000円(学生は無料)
こちらのフォームよりお申込みいただけます(申込締切 2月26日(木))
https://forms.gle/2XGYy3H6iSTEozKM7
詳細は下記よりご確認下さい
https://www.s-ail.org/notice/4697/
◇ 情報処理学会 第88回全国大会に川村教授が登壇します
2026年3月6日(金)、松山大学にて開催される情報処理学会 第88回全国大会のセッション「〜コンピュータパイオニアが語る〜『私の詩と真実』〜」に川村教授が登壇します。
当日、川村教授は「人工知能と俳句~機械が知能を獲得するために~」と題し、俳句を詠むAI、「AI一茶くん」プロジェクトの狙いや概要、現在の実力について講演を行います。
非会員(個人)の方もご聴講いただけますので、ご興味のある方はぜひご参加いただければ幸いです。
大会名称:情報処理学会 第88回全国大会 安心安全なデジタル社会へ向けて
大会会期:2026年3月6日(金)~8日(日)
会 場:松山大学 文京キャンパス(愛媛県松山市文京町4番地2)ハイブリッド開催
セッション「〜コンピュータパイオニアが語る〜『私の詩と真実』〜」は下記の通り行われます。
日時:3月6日(金)12時40分~15時10分 ※川村教授は14時~15時に講演します
会場:第2イベント会場
本セッションの詳細は下記よりご覧いただけます
https://www.gakkai-web.net/ipsj/88/event/html/event/B-6.html
本大会の詳細・お申込みは大会webサイトよりご確認ください
https://www.ipsj.or.jp/event/taikai/88/index.html
聴講参加申込のページ
https://www.ipsj.or.jp/event/taikai/88/participate.html
◇ 2026年1月8日および1月22日に、「日経クロステック」の連載「AIデータ設計」にて、株式会社D.Force 代表取締役社長 川上 明久 氏、AWL株式会社 取締役 CTO 土田 安紘氏、川村教授の共著による記事が掲載されました。
本連載は、2025年12月から全5回にわたり、マルチモーダルAI(人工知能)の進化で注目を集める「映像データ」の活用について解説しています。
ご興味のある方はぜひお読みいただければ幸いです。
2025年12月18日公開
「マルチモーダルAIで映像データ活用、エッジ・クラウド協調設計のポイント」
実務で求められるシステム設計の考え方とAIデータ設計の要点を詳しく解説しています。
2026年1月8日公開
「映像データを検索・分析可能な資産に変える、戦略的メタデータ設計」
映像データからビジネス価値を生み出すために不可欠な「メタデータ設計」の考え方と実践方法を解説しています。
2026年1月22日公開
「変わるエッジAI開発、学習用の映像データは「収集」から「生成」へ」
映像データを活用するためのAIモデルをいかに効率的かつ高精度に開発するかについて解説しています。
◇ 日本政策金融公庫の広報誌『日本公庫つなぐ』にてAWL 代表 北出氏と川村教授のインタビューが掲載されました
2025年12月発行、日本政策金融公庫の広報誌『日本公庫つなぐ』36号にAWL株式会社 代表取締役社長兼CEO 北出 宗治 氏と川村教授のインタビューが掲載されました。
特集「大学から生まれるイノベーション~大学発スタートアップの挑戦が世界を変える~」の中で、「北海道大学発のスタートアップ エッジAIによる映像解析で社会課題を解決」と題し、AWL創業の背景や大学発スタートアップの展望と課題等についてお話ししています。
ご興味のある方はぜひお読みいただければ幸いです。
◇ 道総研「AI技術最前線セミナー」にて山下准教授が特別講演を行いました
2026年1月23日、北海道総合研究プラザ(札幌市)/オンライン(ハイブリッド)で開催された「様々な環境に活かせるAI技術最前線セミナー」において、山下准教授が特別講演を行いました。
当日は、「DXを推進する最新AI技術の社会実装」と題し、先端AI技術を現場に実装し、具体的な価値として定着させる取り組みを紹介しました。また、AIが都市や産業のDXをどのように支えるかについて展望を示しました。
[道総研「様々な環境に活かせるAI技術最前線セミナー」]
【3】人工知能・ディープラーニングNEWS
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★ 世界初、AIで新種の化石を発見 北大などのチームが発表 約7000万年前の地層から産出(itmediaより)
北海道大学などの研究チームは1月22日、AIによって7000万年前の新種となる化石を発見したと発表した。見つかった化石は、新属新種となる頭足類で「Uluciala rotundata」(ウルシアラ・ロツンダータ)と命名。現在の海洋で繁栄していながらほとんど化石記録がなかった「コウイカ」と「ダンゴイカ」からなるグループの最古の記録になる。
★ OpenAI、科学論文執筆環境「Prism」公開 「GPT-5.2」搭載のLaTeX対応ワークスペース(itmediaより)
米OpenAIは1月27日(現地時間)、科学者の論文執筆と共同研究を支援する無料のAIワークスペース「Prism」を発表した。Webブラウザで動作するAI搭載の「LaTeX」エディタで、最新モデル「GPT-5.2」をワークフローに直接組み込むことを特徴とする。
★ 技術の思春期に入ったAI──Anthropic CEOダリオ・アモデイ氏、国家安全保障・経済・民主主義へのリスクに警鐘(ledge.aiより)
AI開発企業AnthropicのCEOである ダリオ・アモデイ 氏は2026年1月27日、強力なAIが社会にもたらすリスクについて論じた長文エッセイ「The Adolescence of Technology(技術の思春期)」を公開した。同氏は、AIが急速に能力を高める一方で、制度や社会の成熟が追いついていない「危険な過渡期」にあると指摘し、国家安全保障、経済、民主主義の3領域で深刻な影響が生じうると警告している。
【4】調和系工学研究室関連企業NEWS
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★ 航空機エンジン検査のDXを加速する共同開発システムを運用開始
~予測整備を見据えたデータ活用と、エンジン検査の標準プラットフォームを構築~(株式会社クレスコ)
株式会社クレスコと日本航空株式会社、株式会社JALエンジニアリングは、航空機エンジンの内視鏡(ボアスコープ)検査における記録・分析を効率化するシステムを共同で開発し、このたび運用を開始しました。
★ 2/26(木)開催「Verona Summit 2026 ~サイバー攻撃者に狙われるネットワークの共通点とは~」(株式会社網屋)
これからのネットワークセキュリティの在り方を学ぶオンラインイベント
Verona Summit 2026では、実際のランサムウェア感染パターンや国内インシデントの教訓を踏まえながら、「ネットワークセキュリティの課題と対策」を専門家とともに徹底解剖します。
★ 苫東に大規模AI拠点 今春、10㍋㍗級データセンター ファクトリー形成 人材育成も(株式会社苫東)
苫小牧市や株式会社苫東(辻泰弘社長)などは30日、苫小牧東部産業地域(苫東地域)の臨空柏原地区に大規模なAI(人工知能)データ拠点の開業計画を発表した。
【5】AI川柳
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調和系工学研究室では、毎日新聞社「仲畑流万能川柳」や第一生命保険「サラリーマン川柳」を学習用の教師データとした「AI川柳」に取り組んでいます。
2020年3月までの1年間「NHK総合 ニュースシブ5時」にて、その週の話題のニュースのキーワードをお題に、バーチャルアナウンサー「ニュースのヨミ子」さんが詠んでいたAI川柳も、本研究室が開発した人工知能システムです。
多くの皆さんに楽しんでいただけるよう、2020年6月にAI川柳のTwitterアカウント( https://twitter.com/ai_senryu )を開設いたしました。
AIには詠んだ句に対する「良し悪し」の感覚はありません。そのため、人間がどのように感じ、どのような情景を思い浮かべるかにより、AIが詠んだ句に意味が生じてきます。
AIが詠んだ句に共感していただけましたら大変うれしく思います!
★ お題「大雪」(1月26日投稿)
雪かきの分担をめぐるちょっとした口論が、心の安眠を奪っているのかもしれません(感想は #ChatGPT と作成)。
★ お題「選挙」(1月29日投稿)
雪の中でも選挙をする政治の現実を静かに見つめた一句(感想は #ChatGPT と作成)。
【ご寄附のお願い】
人工知能によるイノベーションでより素晴らしい世界を実現することが、私たち調和系工学研究室の使命であると考え日々研究に取り組んでいます。
大学での研究活動には、研究に必要な機器の整備のほかにも、学生の学会への参加や論文投稿など研究費が欠かせません。
私たちの取り組みにご賛同いただけ、応援のご寄附を賜れましたら大変心強く、研究を続けるうえで大きな励みとなります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
調和系工学研究室 教授 川村 秀憲
[北海道大学奨学寄附金制度について](本学への寄附金については、税法上の優遇措置の対象となります)お問い合わせ先:http://harmo-lab.jp/contact
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
◇ 次号は、2026年2月20日に配信する予定です。
◇ メールマガジンのバックナンバー
http://harmo-lab.jp/?page_id=2918
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調和系工学研究室教員
川村 秀憲教授
山下 倫央准教授
横山 想一郎助教
▽調和系工学研究室HP
▽調和系工学研究室FB
▽川村 秀憲教授FB
▽AI一茶くん
▽調和系工学研究室AI川柳
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