harmolab154/調和系工学研究室コラム「創るから選ぶへ――生成AIが変える競争優位」(川村秀憲)、第6回 川村研究所 研究発表会開催のご案内をお届けします(2025年10月3日配信)

こんにちは。
北海道大学調和系工学研究室(川村秀憲教授、山下倫央准教授、横山想一郎助教)です。
秋晴れの季節、札幌では涼やかな風が吹いています。皆様いかがお過ごしでしょうか。

今回のメルマガでは、川村教授の最新コラムをご紹介します。
本コラムでは、生成AIの進展が創作やビジネスにもたらす影響を取り上げ、人間はその中でどのように価値を生み出し、市場における競争優位を築けるのかについて考察しています。
ご興味のある方はぜひお読みになってください。

それでは、本日もどうぞよろしくお願いいたします。

2025年10月3日配信
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■ 本日のTopics
【1】調和系工学研究室コラム
【2】調和系工学研究室WHAT’S NEW
【3】研究室に関連する企業・ベンチャー等のニュース
【4】人工知能・ディープラーニングNEWS
【5】調和系工学研究室関連企業NEWS
【6】AI川柳
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【1】調和系工学研究室コラム
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■ 創るから選ぶへ――生成AIが変える競争優位
川村秀憲

ここ数年のAIの進化は、本当に驚くべきものです。
数年前までは人間を支える役割にとどまっていたAIが、今では大学入試を突破できるほどの知識や思考力を示すようになり、一部の分野ではすでに人を超える水準に達しています。
特に文章や音楽、絵や動画を生み出す生成AIの発展は目覚ましく、多くのビジネスの常識や競争環境を根本から揺さぶっています。

かつて音楽の世界では、楽譜を読み書きできる人だけが創作に携わることができました。
楽譜を操れることが市場における優位性であり、音楽を作れるのはその力を持った人に限られていました。
ところが今では、Sunoのようなサービスを使えば歌詞を入力するだけでそれらしい楽曲が自動的に生成されます。
自分の好みに合うものを選ぶだけで作品を世に出すことができ、楽譜を読めることはもはや決定的な優位性ではなくなりました。
音楽の専門家が独占してきた領域に、まったく新しい参加者が次々と流れ込んでくることになります。

同じことは音楽に限りません。
文章執筆やイラスト、動画制作、プログラミングやレポート作成など、従来は専門的な技能が必要だったことが、AIの登場によって誰でも挑戦できるものになりました。
競争優位を生み出す条件は、大きく書き換えられています。

では、人間に残された役割とは何でしょうか。その一つの答えが「目利き」です。
俳人・高浜虚子が残した「選もまた創作なり」という言葉が示すように、作品を生み出すだけでなく、多くの候補の中から光るものを選び取ることもまた創造といえるでしょう。
生成AIは無数の候補を低コストで生み出してくれますが、その中から本当に人の心に響くものを見抜くことは簡単ではありません。
人を楽しませ、安心させ、心に染み入るものは何か。
それを判断するには人間ならではの感覚、つまり本能や経験に根ざした理解が欠かせないと思います。

AIはデータを学習する存在であり、人の心の奥深い部分に働きかける感覚を持つことはできません。
しかし、だからといって人間なら誰でも目利きができるわけでもありません。
料理を例にとるとわかりやすいと思います。世界中の人が毎日料理を作り、誰もが美味しいものを食べたいと願っていますが、本当に感動を呼ぶ料理を作れるシェフはごく一部に限られます。
同じ素材を使っても、組み合わせや仕上げによってその出来栄えは大きく変わります。
AIの世界でも同じで、膨大なアウトプットの中から人の心を動かすものを見抜き、形にできる人は限られていると思います。

これからの時代に求められるのは、AIを使いこなすこと自体ではありません。
AIを使うことはすでに当たり前になりつつあり、それだけでは競争優位をもたらさない時代になるでしょう。
本当に価値を生むのは、AIを徹底的に活用して多くの候補を生み出し、その中から人間の感覚で価値あるものを的確に選び取り、それを素早く形にして世に届ける力だと思います。
この三つが揃ってはじめて、他者を上回る成果を出すことができるでしょう。

AIが当たり前の存在となった今、私たちにとって大事なのは「何を創るか」以上に「何を選ぶか」です。
大量の可能性にあふれる時代だからこそ、感性と判断力を磨き、人ならではの目利きを通じて価値を生み出すことが、これからの競争優位につながっていくのだと思います。


【2】調和系工学研究室WHAT’S NEW
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◇ 川村研究所事務局(Innovation BASE 北海道)より、第6回 川村研究所イベント(10/24開催)のご案内です

【参加申込受付中】第6回 川村研究所イベント(10/24開催)

10月に入り、秋晴れの心地よい季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
このたび「第6回 川村研究所 研究発表会・秋分交流会」を下記のとおり開催いたします。
AIの最新動向に触れ、企業・学生が交流する機会として、ぜひご参加ください。
今までご参加いただいた方はもちろん、初めての方にも楽しんでいただける内容となっております。

■ 開催概要
日時:2025年10月24日(金)17:00〜20:30(16:30受付開始)
会場:IKEUCHI Lab(札幌市中央区南1条西2丁目 IKEUCHI GATE 4F)
参加費:8,000円

■ プログラム(※内容に変更がある場合があります)
<研究発表会>

  • 開会の挨拶・講演(北海道大学 川村秀憲教授)
  • 学生紹介・発表(調和系工学研究室)
  • 山下先生ご講演(調和系工学研究室と企業の共同研究発表)
  • (仮)横山先生ご講演 (米国研修のレポート)
  • 【新企画】企業発表(AI活用事例・課題の共有)
    <秋分交流会>
  • 経済産業局様、さくらインターネット株式会社様 ご登壇
  • 交流会

■ 参加申込フォームはこちらから
URL: https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeyhwMcg_a1V6WNBdolsNTpVgZ9x40-t3w6BAnjjNz9dsJ9Kw/viewform?usp=header

■ 企業発表について
今回のイベントでは、新たな試みを企画しています。

企業の皆さまから「AI活用事例やサービス開発の報告」や「AI活用に際しての課題の相談」を共有いただく発表枠を設けています。
発表時間は約5分程度で、各トピックにつき2社からの発表を予定しています。
引き続き募集していますので、ご関心のある方は「企業発表」詳細ページをご覧ください。

「企業発表」の応募方法はこちらから
URL: https://www.kawamura-institute.jp/kawamura-event6-company-presentation/

皆さまのご参加を心よりお待ちしております。

■ お問い合わせ先
川村研究所事務局(Innovation BASE 北海道 桑原)
E-mail:info(at)ib-hokkaido.jp (at)を@に変えてお送りください


【3】研究室に関連する企業・ベンチャー等のニュース
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◇ 内閣府主催「第2期スタートアップ・エコシステム拠点都市サミット」にAWL CHRO 土田 美那 氏が登壇しました

2025年8月29日に Tokyo Innovation Baseで開催された、内閣府主催「第2期スタートアップ・エコシステム拠点都市サミット」に、AWL株式会社 最高人事責任者 兼 上席執行役員 土田 美那 氏が登壇しました。
トークセッション「民間キーマンによる今後の拠点都市への期待」にて、他の民間キーパーソンの方とともに議論をし、知見共有を行いました。

2025年6月に、札幌市や北海道、道内自治体、大学、民間組織等で構成する「札幌・北海道スタートアップ・エコシステム推進協議会」が、内閣府「第2期スタートアップ・エコシステム拠点形成加速化プラン」における「グローバル拠点都市」として選定されました。
AWL CHRO 土田 氏は、「札幌・北海道スタートアップ・エコシステム推進協議会」の民間キーパーソンの一人です。

[第2期スタートアップ・エコシステム拠点都市サミット]
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20250826.html
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/pdf/20250826betten.pdf
[AWL株式会社(北大発認定スタートアップ)]


【4】人工知能・ディープラーニングNEWS
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「国内で完結する生成AI基盤」開発へ さくら、Preferred、NICTが協業(itmediaより)
Preferred Networksとさくらインターネット、情報通信研究機構(NICT)の3社は、完全に国内で完結する国産生成AIのエコシステム構築を目指すことで基本合意した。

OpenAIのアルトマンCEO、AIを基本的人権にする壮大なビジョンを展開(itmediaより)
米OpenAIのサム・アルトマンCEOは9月23日(現地時間)、「Abundant Intelligence」(豊かな知性)と題した個人ブログで、毎週1GWの新しいAIインフラを生産できる工場を作るという壮大なビジョンを展開した。米NVIDIAがAIインフラ開発のため、OpenAIに最大1000億ドルを投資すると発表した翌日のことだ。

アリババがAIを中核事業に、NVIDIAとの提携も 株価急伸(itmediaより)
中国の電子商取引大手アリババは9月24日、従来の電子商取引事業と並んでAIを中核事業の優先課題に位置付け、米NVIDIAとの提携、世界的なデータセンター拡充、新たな人工知能(AI)言語モデルを発表した。

NVIDIA、日本語データセットを公開 日本文化など反映した合成ペルソナ600万件 商用利用も可能(itmediaより)
米NVIDIAは9月23日(現地時間)、日本語の合成データセット「Nemotron-Personas-Japan」を、Hugging Face上で公開した。日本の文化や人口統計などを反映したペルソナ600万件を含んでおり、データやシステムを国内インフラ内で完結させる「ソブリンAI」の開発での利用を想定する。ライセンスは、商用利用も可能な「CC BY 4.0」。

カリフォルニア州、“AI安全法”成立 事故報告や告発者の保護など義務づけ(itmediaより)
米カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は9月29日(現地時間)、大規模なAI開発企業に、リスクの報告などを義務づける州法「SB53」に署名した。AIがもたらす問題を抑えつつ、イノベーションを阻害しないようい配慮した内容だ。
州政府は「連邦政府のAI規制が進まない中、州独自の規制を先行させることで、全米のAI政策のモデルを提示した」と述べている。


【5】調和系工学研究室関連企業NEWS
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筑前高校の生徒43名がノーコードアプリ開発に挑戦!【10月2日】『情報I』×『総合的な探究の時間』の教科横断型プロジェクトで「サスケWorks」を活用(株式会社インターパーク)
福岡県立筑前高等学校の2年生43名が、ノーコード業務アプリ作成ツール「サスケWorks」を活用し、課題解決型のアプリケーション開発に挑戦します。本プロジェクトは、理数系の知識と情報技術を融合させた教科横断的な学びを通じて、生徒の課題発見力や論理的思考力を育むとともに、進路意識やICT活用力を高めることを目的としています。

「第52回国際福祉機器展&フォーラム」へ出展します!【R7.10.8~R7.10.10】(株式会社サンクレエ)
道では、高齢化社会の進行を背景に成長が見込まれるヘルスケア関連産業において、介護・福祉分野に関連する製品のPRや取引拡大を図るため、東京都で開催される展示会「第52回国際福祉機器展&フォーラム」に、道内企業8社による北海道ブースを出展しますのでお知らせします。

「観光業のための課題解決セミナー」を開催いたします(一般財団法人さっぽろ産業振興財団)
シーズ紹介・ミニ展示にご出展いただける札幌市内のIT企業さまを募集中です!以下6つのテーマから1つを選定し、メールにてご連絡くださいませ。さっぽろ産業振興財団 IT産業振興部(担当:中野) 連絡先アドレス it-pro(at)sec.or.jp (at)を@に変えてお送りください(10/15まで)

モビリティ領域の産学共創プロジェクトOpen SDV Initiativeが提唱するSDV体験シミュレーション環境「MESH」開発に参画(株式会社クレスコ)
当社は、経済産業省と国土交通省が公表している「モビリティDX戦略」の実現に貢献するために設立した「Open SDV Initiative、以下「OSDVI」」が提案する、SDVのあり方を体験できるシミュレーション環境「MESH」の開発に参画しました。

NTTドコモビジネスのセキュリティ統合型ネットワークサービス「docomo business RINK®」におけるWANセキュリティのふるまい検知に網屋の「ALog」を提供(株式会社網屋)
株式会社網屋は、NTTドコモビジネス株式会社が提供するセキュリティ統合型ネットワークサービス「docomo business RINK」の「WANセキュリティ」において、2025年12月に提供開始(2025年9月より試行版提供開始)する「ふるまい検知」に当社の純国産SIEM製品「ALog」を提供したことをお知らせいたします。

日本最大級のオンラインセキュリティカンファレンス「Security BLAZE 2025」11月19日・20日開催決定!天下分け目のセキュリティ戦線に備えよ!(株式会社網屋)
株式会社網屋は、日本最大級のオンラインセキュリティカンファレンス「Security BLAZE 2025~天下分け目のセキュリティ戦線に備えよ!~」を、2025年11月19日(水)・20日(木)の2日間にわたり開催いたします。


【6】AI川柳
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調和系工学研究室では、毎日新聞社「仲畑流万能川柳」や第一生命保険「サラリーマン川柳」を学習用の教師データとした「AI川柳」に取り組んでいます。

2020年3月までの1年間「NHK総合 ニュースシブ5時」にて、その週の話題のニュースのキーワードをお題に、バーチャルアナウンサー「ニュースのヨミ子」さんが詠んでいたAI川柳も、本研究室が開発した人工知能システムです。
多くの皆さんに楽しんでいただけるよう、2020年6月にAI川柳のTwitterアカウント( https://twitter.com/ai_senryu )を開設いたしました。

AIには詠んだ句に対する「良し悪し」の感覚はありません。そのため、人間がどのように感じ、どのような情景を思い浮かべるかにより、AIが詠んだ句に意味が生じてきます。
AIが詠んだ句に共感していただけましたら大変うれしく思います!

★ お題「秋」(9月29日投稿)

それぞれのような気がする秋の夜

秋の夜に漂う「それぞれ」という響きから、人の数だけ物語があること、自分自身の心も定まらないことが感じられます(感想は #ChatGPT と作成)。


★ お題「デジタル」(9月30日投稿)

政治家もデジタルになる猫もいる

ユーモラスに世の中の変化を切り取った一句、技術の進歩と日常の柔らかさを軽妙に対比(感想は #ChatGPT と作成)。


【ご寄附のお願い】
人工知能によるイノベーションでより素晴らしい世界を実現することが、私たち調和系工学研究室の使命であると考え日々研究に取り組んでいます。
大学での研究活動には、研究に必要な機器の整備のほかにも、学生の学会への参加や論文投稿など研究費が欠かせません。

私たちの取り組みにご賛同いただけ、応援のご寄附を賜れましたら大変心強く、研究を続けるうえで大きな励みとなります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

調和系工学研究室 教授 川村 秀憲

[北海道大学奨学寄附金制度について](本学への寄附金については、税法上の優遇措置の対象となります)
お問い合わせ先:http://harmo-lab.jp/contact

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◇ 次号は、2025年10月17日に配信する予定です。
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AI一茶くん
調和系工学研究室AI川柳

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