2022年9月30日配信

こんにちは。
北海道大学調和系工学研究室(川村秀憲教授、山下倫央准教授、横山想一郎助教)です。

大学内では秋の気配が感じられる今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
秋晴れの空を見ていると、心も晴れますね。
それでは、本日もどうぞよろしくお願いいたします。

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◇ 本日のTopics ◇
【1】調和系工学研究室WHAT’S NEW
【2】調和技研×AIの旗手 #3 :横山 想一郎 助教(北海道大学)
【3】ディープラーニング勉強会 
【4】人工知能・ディープラーニングNEWS
【5】AI川柳
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【1】調和系工学研究室WHAT’S NEW

★ 日経新聞のIT関連産業の記事にて、川村教授をご紹介いただきました

2022年9月15日(木)の日本経済新聞道内版「わが社のストラテジー ウェルネット、デジタル決済サービスの開発加速」内における、札幌市のIT関連産業の説明にて、人工知能(AI)分野の権威として川村教授をご紹介いただきました。
また、川村教授が立ち上げに関わっている、AWL株式会社、株式会社調和技研、TIL株式会社、株式会社Aillについても取り上げていただきました。

[日本経済新聞](お読みになるにはログインする必要があります。)

[AWL株式会社]
[株式会社調和技研]
[TIL株式会社]
[株式会社Aill]


★ 2022 5th International Conference on Artificial Intelligence and Pattern Recognition (AIPR 2022)にて発表を行いました

2022年9月23日~25日に中国にて開催された国際学会 ”2022 5th International Conference on Artificial Intelligence and Pattern Recognition (AIPR 2022)” に、修士2年の鐘支俊さんがオンラインで参加し、下記の発表を行いました。

Zhijun Zhong, Soichiro Yokoyama, Tomohisa Yamashita, Hidenori Kawamura, Yoshimi Sato, Rei Hasegawa, Miyuki Hirasawa: Estimation of Bus Passenger Attributes Using Swin Transformer, The 5th International Conference on Artificial Intelligence and Pattern Recognition (AIPR), Xiamen, China, September (2022).

発表概要:
本発表では、バス内のカメラで撮影され匿名化された乗客画像から、乗客の属性を認識するアルゴリズムを提案しました。札幌市内を走行する路線バスに設置されたデジタルカメラにより、数千枚の画像を含む実バス乗客データセットを収集し精度の検証を行いました。Swin Transformer を用いた提案アルゴリズムにより、ほとんどの属性カテゴリで85%以上の高い精度を達成し、実用化の可能性が示されました。この研究成果を応用することにより、バス路線の利用客の内訳を詳細に分析し、より使いやすいバス路線の計画に役立てることが期待されます。

[AIによるバス車内状況の分析]

学会の様子等は、後日メルマガにてご紹介させていただきます。

研究内容にご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ:http://harmo-lab.jp/contact


★ BSテレ東「マネーのまなび」にて川村教授をご紹介いただきました

2022年9月15日(木)にBSテレ東で放送された「マネーのまなび【転職活性化で賃上げ進む?/地球に優しいエシカル消費】」にて、AWL株式会社を取り上げていただきました。
また、AWL株式会社 取締役CTO土田氏の転職エピソードの際、本研究室の川村教授を写真とともにご紹介いただきました。

[マネーのまなび]


★ 研究室に関連する企業・ベンチャーのニュース

◇ JETROのウェビナーにAWLのCHROである土田氏が登壇しました

2022年9月28日(水)にJETRO主催で行われたウェビナー「グローバルビジネスで結果を出す外国人材とは―『パーパス経営』『志』という視点での考察-」にAWL株式会社の最高人事責任者(CHRO)である土田美那氏が登壇し、AWL株式会社における外国人材との共生の取り組みを紹介しました。

[JETRO]
[AWL株式会社]


【2】調和技研×AIの旗手 #3 :横山 想一郎 助教(北海道大学)

北海道大学発AIベンチャーである株式会社調和技研では「調和技研×AIの旗手」と題し、大学教授をはじめとする、AI研究の第一線で活躍する方々と調和技研社員が対談する企画をスタートさせました。
第3回は本研究室の横山想一郎助教と研究開発部の小潟(但野) 友美氏の対談です。
横山助教は調和技研の技術顧問でもあります。
お二人の対談をメルマガでも紹介させていただきます。

AIアルゴリズムを構築するためには、 課題の本質を見極めるのが重要です。

◆ 頭の中で描いた「解」を社会実装するために

小潟  組み合わせ最適化やスケジューリングが主な研究分野と伺いました。

横山  はい、もともと学生時代から取り組んでいた研究です。例えば、工場にいくつもの機械が配置されている場合、製品をどのラインでどう作るのが最も効率が良いのかを考えるというとイメージしやすいかもしれません。博士課程の修了が近づくころ、今後何をすべきか考えた時、自分の頭の中だけで行っていた問題に対する「解」を具体的な課題解決に役立てたいと志すようになりました。民間就職も視野に入れていましたが、タイミング良くこの企画の第1回にも登場した川村教授から調和系工学研究室にお誘いいただいたんです。AIを社会実装するための研究を主題に据えていることも、私が目指す方向性と重なりました。自分の学んだ組み合わせ最適化やスケジューリングを、ディープラーニングなどの技術に適用することによって、世の中に役立てられそうな未来を予感したんです。  

小潟  すでに社会実装されている研究はありますか?

横山  身近なところでいえば、「AIによるロードヒーティングの制御」。ごくごく簡単に説明すると、カメラで路面を撮影し、AIの画像認識によって雪が積もっているかどうかを判断する仕組みを開発しました。雪が積もっていればロードヒーティングのボイラーを動かし、積もっていなければオフにすることで、運転コストを抑えることができます。

小潟  なるほど。北海道の暮らしと密接に関わる分野ですね。ここ最近、取り組んでいる研究はどのようなものですか?

横山  調和技研でも似た開発を進めていると思いますが、「IoT技術を活用した灯油配送最適化技術」です。北海道では、暖房供給のための灯油を各家庭に定期配送しています。現在は灯油の配送業者が個々に契約を結び、灯油タンクがカラにならないタイミングを見計らって補充するケースが大半。ただし、いざ給油に向かってみると灯油が十分に残っていてムダ足になったり、すでに底をついている状態だったり、配送の供給形態が抱える課題は数多くあります。そのため、灯油スマートセンサーを手がけるゼロスペック株式会社との共同研究で、「家庭の灯油タンクの残量がどれくらい残り、あとどれくらい持つのか」「どのように効率的に配送するべきか」という技術の実証を進めているところです。

◆ 全体を俯瞰して課題解決を導く視点を

小潟  ゼロスペック株式会社とは調和技研も灯油の消費量予測AIの開発に携わりました。「IoT技術を活用した灯油配送最適化技術」は順調に進んでいますか?

横山  実証自体は順調といえますが、研究という視点から見ると課題は山積しているというのが正直なところです(笑)。例えば、灯油タンクのフタにスマートセンサーを取り付け、灯油の液面までの距離から残量を遠隔で確認しているのですが、暑さや寒さによって測定にどうしても誤差が生じます。そうした「ノイズ」を取り除いて正確性をいかに高めるのかは、今も試行錯誤中です。灯油は1年を通して休みなく配送されるため、長期にわたる配送計画を一度に上手く組むことも一筋縄ではいかないでしょう。また、今後は灯油の残量に加え、例えば「あと3日で灯油を何リットル使うだろう」という消費量予測に基づいて配送することも視野に入れています。各家庭によっても、天気や環境によっても灯油の使い方は異なるため、その不確実性にどう対応するのかも重要な課題です。このように灯油配送の最適化と一口にいっても、さまざまな課題が複合されているため、配送計画や残量計測といった個々の問題だけではなく、全体を俯瞰的に見つめなければなりません。

小潟  私は調和技研の仕事でシフト作成の最適化に取り組んでいます。ただ、お客さまによって「新人だけのシフトはNG」「特別な研修期間を考える必要がある」など、個別に条件が異なり、カスタマイズが多いことが悩みです。まさにお客さまごとに異なる要望を満たすシステムを構築するために苦心しています。

横山  確かにシフト作成の最適化自体はアルゴリズムで考えられるはずです。ただし、論文を探してみても、業務の実情とピッタリ合致したものは見つからないと思います。その際に大切なのは論文中のアルゴリズムが何を解決するために生まれたのかという背景を捉えた上で、自分の目の前に立ちはだかる問題とどこが異なるのかを見極めることです。その溝を埋めるためにアルゴリズムをカスタマイズするのがポイント…とはいえ、「言うは易し行うは難し」ですが(笑)。ただ、こうした視点を持つ技術者は重宝されるはずです。

小潟  とても参考になります。横山先生は調和技研の技術顧問でもあるので、こうした相談もよく受けてくださっていますね。

横山  そうですね。私の場合は案件の規模に対してシステムが構築できるかどうかの判断を仰がれたり、課題解決に適したアルゴリズムの選択について相談されたり、技術的な話題がメインです。ただ、大切なのは顧客がAIを「何に使いたいのか」という本質を明確にすること。例えば、私が携わった共同研究で「ディープラーニングを使ったファッション画像の理解」があります。洋服の画像から「かわいい」「クール」などの印象をタグ付けし、ユーザーにおすすめするための基礎技術を開発するのが目的です。ファッションの画像をディープラーニングさせる上で、「印象の意見に幅がある場合のブレの大きさを捉えたいのか」「大多数の印象の平均を割り出したいか」で手法は変わるはず。つまり、AIアルゴリズムの構築には、顧客が本当に知りたいことは何か、企業が何を求めているのかを見極めることが大切です。

◆ ココロや感性の理解は、まだまだ人にしかできない領域

小潟  今後AIがどのように発展すると考えていますか?

横山  私自身としては、極端なブレイクスルーが起こる未来はまだ見えていません。コンピュータの性能が上がり、ディープラーニングで解決できることの幅が広がってきた現在の延長線上にあるのではないかと思っています。先ほどの例でいえば、これまでファッションは主観的な印象だったところ、画像認識のタグ付けによってトレンド分析や推奨に役立つなど、世の中で起こっていることが正確に見えるようになってきました。このようにAI技術の適用範囲は広がっていくと見込んでいます。

小潟  逆に10年後でもAIができないこととは?

横山  かつて翻訳を機械的に処理できるとは思われませんでしたが、今では高い精度で可能になりました。クルマの運転にしても人にしかできない高度な判断の集合と考えられていましたが、自動化されるのも遠い未来ではないと予測できます。ただ、倉庫のピッキング経路を自動で効率化することはできますが、モノを取ってくるというシンプルな作業は人が担っています。というのも、床に商品が落ちてつまずくリスクを回避したり、乱雑な棚から指定の製品を見つけ出したりする能力は人のほうが優れているからです。このようなシンプルな動作が苦手なことに加え、感情に関わるフィールドについてはAIはまだまだ人間に及びません。例えば、今、私が話している内容の録音を自動的に書き起こすことができたとしても、要点をピックアップしたり、どういう伝え方をすると心を動かせるのか熟考したりすることはできないはずです。心や感性の理解は、一朝一夕では難しいのではないかと考えています。

◆ 「研究者寄り」のアグレッシブで挑戦的な社風

小潟  横山先生が若手エンジニアや研究者に期待することは?

横山  先ほどの話と重複する部分はありますが、さまざまな論文を読み込み、アルゴリズムを試す力が求められると思います。その上で自分が抱えている課題に当てはめるために、何をどうカスタマイズすべきか複数の論文を重ねて考えられることが大切。先端のアルゴリズムに通じている人は、そのスキルを備えて諸問題を解いていくイメージです。

小潟  技術顧問という立場から見た調和技研のイメージは?

横山  私は他企業と共同研究する機会も少なくありませんが、調和技研は最も「研究室っぽい」と感じます。誤解を恐れずにいえば、できるかどうか分からないことにもチャレンジする度合いが非常に高いイメージ。一般には社内で完遂できると確信を持った上で仕事を受けると思いますが、確実にできると言い切れない中でも挑戦する気概のある社員が多いのではないでしょうか。もちろん、成果は出さなければならないため、プレッシャーも大きいことは研究者としても身に沁みて分かります。答えのないところから研究成果を導くようなものなので、私と同類だな…と共感を覚えることが多いんですよね(笑)。

小潟  ありがとうございます(笑)。私を含め、せっかくお金をかけてでも作ってほしいと依頼されたからには、何がなんでも叶えたいと考える社員ばかりです。

横山  調和技研を含め、大学発のベンチャー企業は面白いことにトライしている印象です。利益を高めるためにタスクを淡々とこなすわけではなく、かといってアカデミックな研究だけを追い求めるわけでもありません。その中間に位置しているところが大きな魅力です。例えば、研究成果はすでに発表されているにも関わらず、広く知られずに使われていない技術があるとします。アカデミックな見地からその技術を活用し、社会や企業の解決すべき課題とのギャップを埋めていく存在が調和技研。こうした仕事に関わりたいと熱意を持つエンジニアや研究者は、数多くいらっしゃるのではないでしょうか。

[調和技研×AIの旗手 #3 :横山 想一郎 助教(北海道大学)]
[株式会社調和技研]


【3】ディープラーニング勉強会

調和系工学研究室ではディープラーニングの最新の知識共有を目指し、毎週ゼミを実施しています。
担当学生がトップカンファレンスから自分の興味のある論文について発表し、意見交換をしながら進めています。
本研究室HP( http://harmo-lab.jp/?page_id=1194 )には過去の発表に使用したスライドも公開していますので、ご興味のある方はぜひそちらもご覧ください。

[紹介論文]
Solving Quantitative Reasoning Problems with Language Models

公開URL:https://arxiv.org/abs/2206.14858

論文紹介スライドURL: https://www.slideshare.net/harmonylab/solving-quantitative-reasoning-problems-with-language-models

出典:Aitor Lewkowycz, Anders Andreassen, David Dohan, Ethan Dyer, Henryk Michalewski, Vinay Ramasesh, Ambrose Slone, Cem Anil, Imanol Schlag, Theo Gutman-Solo, Yuhuai Wu, Behnam Neyshabur, Guy Gur-Ari, Vedant Misra : Solving Quantitative Reasoning Problems with Language Models, arXiv:2206.14858 (2022)

概要: 言語モデルは様々なNLPタスクで高い性能を示している.一方で数学の問題を解くようなQuantitative Reasoningを必要とするタスクには最先端モデルでも苦戦している.本論文では数学・科学の問題を高い精度で解くことが可能なMinervaを紹介する. PaLMを数学・科学関連のデータセットでfinetuneしたモデルであるMinervaは.外部ツールを使用することなく,LATEX記法を含む問題文から問題の解を解の導出過程を含めて出力可能である.(博士3年 吉田拓海)


【4】人工知能・ディープラーニングNEWS

停止中のイラスト生成AI「mimic」が10月に再開へ 審査、追跡機能など不正対策を追加
LiDARのないiPhoneで3Dスキャン可能に 米Nianticの「Scaniverse」
NVIDIA、「Hopper」採用GPUの提供時期や新たなAI製品を発表
マスク内の音声を特定する補聴器 唇の動きをWi-Fiで読み取り、話し言葉を識別
セレンス、移動中の車内でマイクロソフト「Teams」が使える環境を実現
OpenAIが高性能文字起こしAI「Whisper」を発表、日本語にも対応し早口言葉や歌詞も高精度に文字起こし可能
犯罪予測システム「CRIME NABI」福岡市で実証実験を開始、天気や人口統計から犯罪発生を予測
【CEDEC2022】自然言語処理で海外レビュー分析
CGへの扉 Vol.42:現代の呪文promptが生み出すAIとの新しい関係性
「AI安倍晋三」ネットで物議 合成音声のYouTube動画、“東京大学AI研究会”が公開


【5】AI川柳

調和系工学研究室では、毎日新聞社「仲畑流万能川柳」や第一生命保険「サラリーマン川柳」を学習用の教師データとした「AI川柳」に取り組んでいます。
2020年3月までの1年間「NHK総合 ニュースシブ5時」にて、その週の話題のニュースのキーワードをお題に、バーチャルアナウンサー「ニュースのヨミ子」さんが詠んでいたAI川柳も、本研究室が開発した人工知能システムです。
多くの皆さんに楽しんでいただけるよう、2020年6月にAI川柳のTwitterアカウント( https://twitter.com/ai_senryu )を開設いたしました。
AIには詠んだ句に対する「良し悪し」の感覚はありません。そのため、人間がどのように感じ、どのような情景を思い浮かべるかにより、AIが詠んだ句に意味が生じてきます。
AIが詠んだ句に共感していただけましたら大変うれしく思います!

★ お題「大雨」(9月21日投稿)
  大雨が降り止んでから恐ろしさ
今週末は、また雨が降るようです。
十分に注意しなければなりませんね。

★ お題「学会」(9月27日投稿)
  学会で忙しそうな秋の空
この時期、多くの学会が開催されます。
いつも忙しそうな先生方が、更に忙しそうです。
いつ寝ているのでしょうか??
  
【ご寄附のお願い】
人工知能によるイノベーションでより素晴らしい世界を実現することが、私たち調和系工学研究室の使命であると考え日々研究に取り組んでいます。
大学での研究活動には、研究に必要な機器の整備のほかにも、学生の学会への参加や論文投稿など研究費が欠かせません。
私たちの取り組みにご賛同いただけ、応援のご寄附を賜れましたら大変心強く、研究を続けるうえで大きな励みとなります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
調和系工学研究室 教授 川村 秀憲

[北海道大学奨学寄附金制度について](本学への寄附金については、税法上の優遇措置の対象となります)
お問い合わせ先:http://harmo-lab.jp/contact

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◇ 次号は、10月14日に配信する予定です。
◇ メールマガジンのバックナンバー
 http://harmo-lab.jp/?page_id=2923

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調和系工学研究室教員
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