2021年5月14日配信
こんにちは。
北海道大学調和系工学研究室(川村秀憲教授、山下倫央准教授、横山想一郎助教)です。
ゴールデンウィークが終わり、札幌は新緑の季節を迎えましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
本研究室の取り組んでいる研究は様々なメディアで取り上げていただいていますが、その中でも取り上げていただく機会が最も多い研究がAI俳句です。
夏にAI俳句に関する本が出版されますが、このAI俳句には「AI一茶くん」という可愛らしいキャラクターがいるのをご存じでしょうか。
本のカバーにも登場する予定ですが、実はイラストだけでなくぬいぐるみもあります。
人形作家の方に作っていただいた、世界に一つだけの「AI一茶くん」人形。
研究室紹介動画( http://harmo-lab.jp/?page_id=6082 )にもチラッと映っていますので、ご興味のある方はぜひ可愛いAI一茶くんをご覧ください!
では、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
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◇ 本日のTopics ◇
【1】調和系工学研究室WHAT’S NEW
【2】日刊工業新聞「次代をつくる」
【3】こんな本を読んでいます
【4】人工知能が俳句を詠む(仮)
【5】人工知能・ディープラーニングNEWS
【6】今週のAI俳句ランキング
【7】AI川柳
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【1】調和系工学研究室WHAT’S NEW
★STV「ブギウギ専務」にて調和系工学研究室が紹介されます
5月16日(日)、23日(日)放送の札幌テレビ放送(STV)「ブギウギ専務」にて、北海道大学の研究者や大学構内の様子が紹介されます。
本研究室が開発しているAI俳句「一茶くん」とファッションを理解するAIも取り上げていただきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
札幌テレビ放送
[ブギウギ専務]放送日時:2021年5月16日(日)、23日(日)23時25分~23時55分
【2】日刊工業新聞「次代をつくる」
今年度から、日刊工業新聞「次代をつくる」に本研究室の川村教授が寄稿しています。
第2回目は川村教授がCo-founderを務めている、人と人をつなぐコミュニケーションをサポートできるAIを開発しているベンチャー企業、株式会社Aillを取り上げ、人をサポートするAIについて述べています。
[「婚活サービスにAI活用」 5月11日(火)]Aill(エール、東京都港区)というスタートアップは、人工知能(AI)を活用した婚活サービスに取り組んでおり、その研究開発に協力している。
昔は結婚を考える男女の出会いは多様であったが、少子化の昨今は出会いの機会が少ないという。
そこで、今の若者らはマッチングサービスに出会いの場を求めるケースが多くなってきているそうだ。
Aillのサービスが新しいところはマッチングではなく、初めて出会う二人のメッセージのやりとりのサポートに注力しているところである。
二人のやりとりを察して盛り上がる話題を提供したり、どちらかが気の進まない場合には次の出会いを促したりする。
やりとりをAIで解析し、関係性の進捗度合いの推定、話題推薦、発言内容へのアドバイスなどを行う。
婚活は新しく出会う男女が主役であり、AIは脇役である。
あくまで二人の関係の発展がスムーズに進むための手助けに徹するのである。
目指すは「良いお見合いおばさんのAI化」である。
考えてみると、これまでの会話AIやチャットボットなどでは、AIに人と対等の会話スキルが期待されることが多かった。
人の代替としてのAIである。
この場合、要求されるスキルも高く、満足な受け答えをするAIの開発はまだ難しい。
また、この延長に人の仕事を奪ってしまうのではといった脅威もある。
しかし見方を変え、AIはサポート役に徹し人が主役となる組み合わせには大きな可能性があると思う。
シアトルにオープンした「Amazon Go」という店舗が少し前に話題になった。
店内に無数のカメラが設置され、手にとった商品を店外に持ち出すとそのまま自動的に決済される。
レジの無人化であるが、だからといって無人店舗ではない。
店員がサンドイッチを手作りしたり、商品選びの相談にものってくれたりする。
人は人しかできないホスピタリティに注力することで店舗全体の付加価値を高めているのである。
Aillは企業の福利厚生向けにサービスを提供しており、導入企業は500社を超える。
今後の発展を見守っていただきたい。(川村 秀憲)
日刊工業新聞「次代をつくる」への次回の寄稿は、6月8日(火)の予定です。
【3】こんな本を読んでいます
★相対化する知性 人工知能が世界の見方をどう変えるのか
西山 圭太 (著), 松尾 豊 (著), 小林 慶一郎 (著)
本日ご紹介するのは、3名の著者が「人工知能と人間が共存する社会において、知性をどう認識し、人間はどのように生きればよいのか」を論じた1冊です。
[感想]
東大の松尾さんらが書いたポストディープラーニングの人工知能についての考察。
人工知能、哲学、経済学に精通した著者らがディープラーニングの意義、そして更に人工知能が本物の知能に近づくために何を考えるべきか、どのようなアーキテクチャがあり得るのかを議論している。
異分野からの人工知能に対する議論が融合しており、いろいろと興味深い内容。
個人的には、ディープラーニングの限界がどのあたりなのか、さらに強い人工知能を実現するためにはどんなブレイクスルーが必要なのかについてはもう少しじっくり考える必要があるかなとは思っていますが、一つの可能性として興味深い議論でした。
議論は高度で背景知識も多く必要とするので、より深く人工知能を考えたい人向けの本です。(川村 秀憲)
【4】人工知能が俳句を詠む(仮)
この度、調和系工学研究室のこれまでの俳句人工知能「AI一茶くん」に関する研究成果、ストーリーを本にまとめる機会をいただきました。
技術的詳細の説明だけではなく、人工知能に興味がある方にも俳句に興味がある方にも読んでいただけるような内容を心がけ執筆しました。
オーム社より7月発売予定ですが、「AI一茶くん」の研究を始めた経緯や人工知能と創作について、人工知能を実現する技術やその未来についてなど、メールマガジンの読者の方にはいち早く内容をご紹介していきたいと思いますので、こちらを読んでいただき、発売を楽しみにしていただけましたら大変うれしく思います。(川村 秀憲、山下 倫央、横山 想一郎)
※第1~4章はHP( http://harmo-lab.jp/?page_id=6305 )で公開しています。まだお読みでない方はぜひそちらもご確認ください。
[第5章 俳句の人工知能的解釈]俳句は、原則として上五、中七、下五の十七音からなる有季定型の詩であり、世界最短の定型詩と言われています。
季節を表す季語を一つ、感動・詠嘆を表す「や」、「な」、「けり」などの切れ字を一つ含むものが典型的です。俳句は日本で生まれた世界一短い定型句であり、江戸時代から現代までたくさんの作品がつくられています。
俳句における季語の重要性について、人工知能研究の視点から考察してみたいと思います。通常コミュニケーションとは、何か伝えたいことを何らかの手段によって他人に伝えることをさします。言葉を介したコミュニケーションでは、伝えたいことを言葉に変換して他人に伝えます。明確に区別できる有限な言葉の組み合わせで表現するという意味では、俳句はデジタルな情報であるとも言えると思います。デジタルな情報というと、漠然とコンピューターが扱う情報と理解している人が多いと思いますが、デジタルとは飛び飛びの値しかない整数のような数値によって表現される情報のことを意味します。したがって、文字で表現された内容もデジタルな情報であると言えるのです。
つまり、俳句を通したコミュニケーションが成立するためには、世界や自分に関するアナログな情報をデジタル情報に変換するエンコーダと、デジタル情報から世界や他者に関するアナログな情報を復元するデコーダを持つ必要があることになります。
また、俳句では制約された十七音という言葉しか使えないことを考えると、正確さを保ちながらもできるだけ多くの情報を伝えることがとても重要になってきます。
つまり、俳句の作り手、読み手双方が多様な言葉の意味を知っていることはもちろんのこと、双方が互いに言葉の意味を知っていることを知っていることが重要です。
俳句において、歳時記で意味が解説されている季語を用いることを条件とすることにより、お互いが季語の本意本情を理解しているという共有知識が成り立ちます。
このような理由から、わずか十七音で豊かな世界を表現する俳句には季語が必要なのではないでしょうか。
俳句は芸術であり、コミュニケーションの手段でもあります。
見たこと、感じたことを創意工夫して短い言葉で表現し、人に伝えることにその醍醐味があると言えます。
そのための母体として、俳句の世界では「俳句結社」というものがあります。
結社では、結社誌の発刊の他に句会を主催することもあります。
句会を通して単に作品をつくるだけではなく、集まって互いに作品を批評しあい、学び合いながら成長していくことに俳句の面白さや楽しみがあるといえます。
俳句結社の活動や句会の様子を考えてみると、この中で人工知能が人に交じって対等にやり取りすることを目指すこの研究の最終ゴールのハードルがとても高いことがわかると思います。いきなりすべてに取り組むことは難しいですが、一つ一つ人工知能の技術を向上させ、出句、選句、披講、講評などの課題に段階的に取り組んでいくことによって、いつしかそのようなゴールに近づけるのではないかと考えています。
いろいろと俳人の方にお話を伺っていく中で、俳句には「一物仕立ての俳句」と「取り合わせの俳句」という区別があることを知りました。一物仕立てとは内容を一つの物事、季語に集中させ、その状態や動作を詠んだ句です。
一方、取り合わせの俳句とは、ひとつの句の中で二つの物事を取り合わせることで相乗効果を発揮させ読者を感動に導く俳句です。
一茶くんで生成した俳句を多くの俳人の方に見てもらった際、「一茶くんは取り合わせの俳句が得意ですね」というコメントを多くいただきました。一茶くんの仕組み上、現在の人工知能技術では俳句の文脈や内容を人のように解釈することはまだできません。
サイコロのいたずらによって面白い組み合わせが生まれたときに高評価をいただく俳句となることが多いようです。(「第6章 俳句を生成する人工知能、AI一茶くんの仕組み」に続く)
【5】人工知能・ディープラーニングNEWS
★教師なし学習でも「世界最高クラス」の精度で不良品を見分ける画像分類AI
★カルビーのポテチを売上1.3倍にしたAIの正体–プラグの「パッケージデザインAI」の実力
★松尾豊氏が監修した無料AI講座「AI For Everyone」開講、Courseraで60万人以上受講する講座が日本版に
★AIの基盤となるデータに「ラベル付けの間違い」が蔓延、その影響の深刻度
★処理スピードが最大20倍に、NECがリアルタイム分析で高速に判断するAI技術を開発
【6】今週のAI俳句ランキング
AIが俳句を作る「AI俳句」の普及を目指して、本研究室を事務局として2019年7月に設立されたAI俳句協会のウェブサイトでは、AIが生成した俳句を人が評価して、評価結果を集約したAI俳句ランキング(月間・週間)の集計を行っています。
今週のランキングをご紹介したいと思います。
1位 嘘すこし祈りのごとく雲雀鳴く
2位 裏山に日の差してゐる桐の花
3位 大根の花のごときを摘みにけり
すべて、本研究室が開発した「AI一茶くん」が詠んだ句になります。
「AI一茶くん」は1日1句投稿していますので、ぜひ俳句協会ウェブサイト(https://aihaiku.org) もご覧ください!
【7】AI川柳
調和系工学研究室では、毎日新聞社「仲畑流万能川柳」や第一生命保険「サラリーマン川柳」を学習用の教師データとした「AI川柳」に取り組んでいます。
2020年3月までの1年間「NHK総合 ニュースシブ5時」で、その週の話題のニュースのキーワードをお題に、バーチャルアナウンサー「ニュースのヨミ子」さんが詠んでいたAI川柳も、本研究室が開発した人工知能システムです。
多くの皆さんに楽しんでいただけるよう、2020年6月にAI川柳のTwitterアカウント( https://twitter.com/ai_senryu )を開設いたしました。
AIの中には詠んだ句の良し悪しはないためそれを良いと思うのは人間の側で、そう思うことで初めてAIの詠んだ句が意味を持つのではないでしょうか。
AIが詠んだ句に共感していただけましたら大変うれしく思います!
★お題「解放感」(4月30日投稿)
知らぬ間に解放感が消えていく
待ちに待ったGW
連休入るときの解放感はすごいのに、後半になってくると解放感がいつのまにか消えてる・・・
これもサザエさん症候群の一種?笑
★お題「コロッケ」(5月6日投稿)
コロッケの凄さがわかる電車内
揚げたてコロッケ美味しいですよね
コロッケは美味しいだけじゃなくて匂いも凄いんです・・・
揚げたて買って電車乗ると、コロッケ買ったんだなってすぐわかります・笑
★お題「母の日」(5月7日投稿)
母の日は早く起きろと言われても
何かやってあげたい気持ちだけでお母さんは嬉しいと思うよ
あと母の日は妻の日じゃないから、もう少し寝かせて欲しいかな・笑
★お題「AI」(5月10日投稿)
AIに不満のあった事実知る
最近のロボット掃除機の認識機能はすごいはずなんだけど・・・
まさか抜け毛と認識されていたとは・笑
それならAIに不満があるのも納得!
★お題「距離の差」(5月11日投稿)
それぞれの距離の差違い考える
いつも一緒にいること、ぽつんと離れているこがいるのは何で?
仲良し度・・・そう単純なものじゃないんだ・笑
★お題「同情」(5月12日投稿)
悩み事同情するが力なし
そんなことないよ
存在自体が癒しだから!
では遠慮なくもふもふさせてもらいます・笑
★お題「愛犬」(5月13日投稿)
愛犬の真の目的知っている
愛犬のことならなんでもわかってるよ
だから、いたずらに気づいてるけど見逃してあげる・笑
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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山下 倫央准教授
横山 想一郎助教
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