2020年3月19日配信
こんにちは。
北海道大学調和系工学研究室(川村秀憲教授、山下倫央准教授、横山想一郎助教)です。
札幌は暖かい日が続き道路の雪もとけて歩きやすくなりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
大学では例年この時期に様々なイベントがありますが、今年は新型コロナウイルスによる影響で北大も学位記授与式と入学式の開催中止が決まっています。
本研究室にもこの春に卒業・修了する学生が4名いるのでとても残念ですが、皆さんには4月から新しいステージでぜひ活躍をしてもらいたいと思います!
では、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
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◇ 本日のTopics ◇
【1】調和系工学研究室卒業生・修了生の言葉
【2】調和系工学研究室WHAT’S NEW
【3】こんな本を読んでいます
【4】調和系工学研究室共同研究事例
【5】今週のAI俳句ランキング
【6】人工知能・ディープラーニングNEWS
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【1】調和系工学研究室卒業生・修了生の言葉
この春で調和系工学研究室を卒業・修了する学生が4名います。
本研究室で取り組んだ研究内容や後輩へのメッセージ、今後の抱負についてのそれぞれの思いをご紹介いたします。
また、卒業論文・修士論文発表会での発表スライドを本研究室のHP(http://harmo-lab.jp/?page_id=4583) で公開しておりますので、ご興味のある方はぜひご覧下さい。
[学部4年 高橋 遼]私が取り組んだテーマは「俳句の自動生成」でしたが、ゴールの見えない難しいテーマで、個人的には闇の中をひたすら彷徨っている気分でした。
今はなんとか卒論発表を終えることができてホッとしています。
私は去年就職活動をしましたが、社会においてIT人材が重宝されていることが実感できました。
コンピュータサイエンスを専攻している我々は、時代の波にいいタイミングで乗れたと思っています。
また社会が求めているのは、自分で課題を発見し解決する力を備えた主体性のある人だということもわかりました。
私の中で卒業研究は、そのような力を身につける為の訓練でもありました。
これからは外資系消費財メーカーであるProcter&GambleでBusiness Analystとして活動します。
日本だけでなく世界で活躍できるビジネスマンになるため、これからも精進してまいります。
[修士2年 木戸口 稜]乗客の安全を確保したバスの運行を支援するため、深層学習を用いた車内モニタリングによる状態認識を行いました。
実験を何のため行うのか、定義の不透明な言葉はないかなど、ただやったことの報告にならないように考えたのが大変でした。
研究の合間に研究室の皆さんと過ごした時間は、良き気分転換や新たな気付きを得るなどとても充実した時間となり、とても楽しい時間となりました。
後輩たちにもたくさん支えられ、助けられた日々でした。
研究を進めていく中で、大変なこともあるだろうけど、きっといつか終わるよ。
なら、あとは耐えるだけ。
大学生活で学んだこと、頑張ったことを糧として、今後生かしていきたいと考えています。
[修士2年 MIN JIE]二年の研究生活で研究に対する手段と結果より、何故この手段を使うと何故こんな結果になる思考が重要であることを深く体得しました。
自分の能力不足で、いろいろ時間を無駄にしました。
でも先生たちからの慎重な指導も、最終発表の前先輩と後輩たちの団結さも、凄く感動しました。
これからの留学生にも、何かわからないことがあったら遠慮なく研究室の皆と相談してください。
今後自分も社会人として、人生次の社会人段階を始めましょう。
[博士3年 宋 爽]私は旅行・観光調査のためのオンライン旅行レビューの分析に関する研究に従事しています。
オンラインデータ分析を用いた迅速かつ低コストな調査手法の確立に向けて、オンライン旅行レビューの分析手法と、旅行者満足度調査や観光入込客数調査との関係性を比較する手法を提案し、多言語多国間の実データによってその有効性を検証しました。
川村先生と北海道情報大学の斎藤一先生のご指導のもとに始まった研究で、多くの先生方や論文の査読者たちのご意見とご指摘を取り入れて、ようやく形になりました。
研究で一番大変だったのは、知っている専門用語が少なくて調べられる文献が限られていることです。
英語の場合、日本語を訳しても見つからない言葉があります。
ただ参考文献リストから芋づる式で探そうとすると、読んだ論文は自分が気づかないうちに偏ってしまうこともありました。
自分はちゃんと調べましたと思い込んで,論文投稿を行って、査読者が書いた見たことのない単語にショックを受けてから初めて視野が広がります。
研究はグループワークで、一人ではできないものですと思います。
調和系では、週に数回のゼミがあります。
自分の研究以外の分野に関する勉強もできますから、沢山の刺激を頂きました。
特に、先生方からのご指摘は、特定の研究に限らないものも多く、自分の研究の反省にも適応できますので、漏らさずにメモを取るべきです。
これから博士課程に進学する皆さんに伝えたいことが二つです。
一つは、論文を幅広く沢山読むように。
もう一つは、挫折は付きものですので、それを糧にするメンタルが大事です。
先生方と皆さんの励ましがあって、ようやく博士号を手に入れましたが、まだまだこれからです。
目標の大学教員に向かって、引き続き頑張りたいと思います。
【2】調和系工学研究室WHAT’S NEW
★サンクレエが東京ケアウィーク2020に出展した介護サービスが紹介されました
2月12日~14日に、東京ビッグサイトで開催された東京ケアウィーク2020において、サンクレエが出展したAI技術を使った介護サービスが紹介されました。
サンクレエは本研究室の川村先生が顧問、横山先生がテクニカルアドバイザーを務める、販売管理システムの提供などを展開するIT企業で、本研究室と連携してさまざまな分野でAI技術の研究・開発を進めています。
今回展示した「smartNexus care」は画像認識の技術が応用されており、画像データをAIで解析してベッド上の利用者の姿勢を判定、「注意」「危険」と判断するとリアルタイムで通知します。
ご興味のあるかたはぜひお読みください。
[東京ケアウィーク2020(3)介護ロボット編:「働き方改革」と「AI」をキーワードに,より良い介護をめざすソリューションを紹介][株式会社サンクレエ]
★北大ビジネス・スプリング入居企業代表としてTILが紹介されました
STARTUP CITY SAPPOROのインタビュー記事「北大ビジネス・スプリングを訪問!」で、入居企業代表としてティ・アイ・エル株式会社が紹介されました。
TILは本研究室の川村先生がCo-founder、博士2年に在籍する永田 紘也さんがCTOを務める、北大発認定ベンチャー企業です。
「北大ビジネス・スプリング」は北大構内にあるインキュベーション施設で、TILの他にもAWL、調和技研、サンクレエなど本研究室と関わりの深いベンチャー企業が入居しており、本研究室の研究成果のshowcaseとしても機能しています。
永田さんが会社設立の経緯や入居のきっかけ、TILが現在取り組んでいる研究について紹介していますので、ご興味のある方はぜひお読みください。
[大学発ベンチャーを強力にサポート! インキュベーション施設「北大ビジネス・スプリング」を訪問!][ティ・アイ・エル株式会社]
★財界さっぽろで調和技研が紹介されました
3月14日発売「財界さっぽろ」4月号の「あの起業家に会いたい」で、株式会社調和技研の中村拓哉社長のインタビューが紹介されました。
調和技研は本研究室の川村先生がCo-founder及び社外取締役を務める、北大発認定ベンチャー企業です。
設立から現在、そしてこれからの調和技研について語られていますので、ご興味のある方はぜひお読みください。
[財界さっぽろ 4月号][株式会社調和技研]
★日経クロストレンドでAWLが開発した映像解析、顔認証システムが紹介されました
3月16日の日経クロストレンド「未来を動かす「顔認証」の今」で、AWL株式会社が開発した映像解析、顔認証システムが紹介されました。
AWLは本研究室の川村先生がCo-founder、研究室OB(2001年度修士課程修了)の土田 安紘氏がCTOを務める、リテール店舗の課題解決、価値向上を実現するためのAIカメラソリューションを開発、提供するベンチャー企業です。
北海道を中心に展開するサツドラ(サッポロドラッグストアー)の防犯やマーケティングに生かすAI画像分析システムをAWLが開発しており、小売店や飲食店などでも余分なコストをかけずに導入できるという特徴があります。
サツドラでの導入事例が紹介されていますので、ご興味のある方はぜひお読みください。
[日経クロストレンド]「月額2万円のAIで万引き対策が激変 日本版「顔認証」活用の裏側」(お読みいただくにはログインが必要となります。)
【3】こんな本を読んでいます
★クレイジーで行こう! グーグルとスタンフォードが認めた男、「水道管」に挑む
加藤 崇 (著)
本日ご紹介するのは、銀行マンから起業家へ転身し、日本人で初めてGoogleへの売却を成功させた後、単身渡米した熱き日本人経営者が、何を目指し、何に悩み、何を試み、走り続けたのかを記録した情熱の「1000日戦記」です。
[感想]googleに買収され、その後にソフトバンクに買収された東大発人型ロボットベンチャー「SCHAFT」を立ち上げた加藤 崇さんがアメリカで新規ビジネスを立ち上げ、事業売却に至るまでのストーリーが詳細に語られた本。
どのように仲間を集め、なにもないところから顧客を開拓し、世の中のニーズに合わせて軌道修正し、事業として成長していくのかが生々しく語られており、加藤さんの起業の過程を追体験できる貴重な本です。
AIによって水道管の故障予測をするというアルゴリズムを開発することは、AI研究を行っているものであればある程度同じことができる可能性があると思いますが、それをビジネスとして成功させるということはまた別の話です。
この本には起業のリアリティがあり、これから新しいことを始めようとする人に勇気を与えてくれる本です。(川村 秀憲)
【4】調和系工学研究室共同研究事例
調和系工学研究室では、様々な企業と共同研究を行っています。
私たちはAIとはテクノロジーなのでハサミと一緒だと考え、切れるハサミはもちろん大事ですが、切れるハサミの研究ばかりを行うのではなく、ハサミで何を作るのかということも考えていかないといけないと思っています。
研究成果が学術的に意味があるだけでなく、その成果を直接誰かに使ってもらえるような形で研究を行いたいとの想いから、意識的に企業との共同研究を増やしています。
本研究室が行ってきた共同研究、また、現在進行中の共同研究事例をご紹介することにより、「AIでこんなことができるのか!」「こんなことはAIでできるのかな?」のヒントになれば大変うれしく思います。
本日ご紹介するのは株式会社KDDIとの共同研究である、「Deep Q Networkによる譲り合う自動運転」です。
1台の車を正確に走らせるような自動運転の研究は世界中で行われていますが、この研究のテーマは、世の中に自動運転の車がたくさん普及したときに、その車はどういうコミュニケーションをとりながら、安心、安全、効率性を実現するのかということです。
この研究ではラウンドアバウトという信号機のない交差点を実験コースとしていて、信号機がないため内側と外側のどちらかが常に優先となります。
内側が優先の場合は、内側の車が途切れた時にしか外側の車が入れないというのがルールになりますが、優先だからと内側の車が絶対に譲らないと、外側が酷い渋滞になってしまいます。
しかし、内側の車がちょっと譲ってあげて1台でも外側の車を入れてあげると、一気に交通が通るということが起こりえます。
このような状況になった時に、果たしてAIは「ルールだから譲らない」となるのか。
または、人間のように渋滞の合流地点などで、ルールではこちらが優先だといっても、いつの間にか交互に入れていくように、自然発生的な譲り合いがAIの中でも生まれてくるのか。
走っているときに譲るのか譲らないのか、次にどうするのかという行動をAIの選択肢に委ね、ラジコンカー全てにディープラーニングを搭載して、社会全体の安全と効率を目的関数として与えてディープラーニングで学習させると、AIは自分が優先でもちょっと譲ってあげようということができるようになります。
自分がとにかく早く行ければいいとなると、譲る一時は必ず自分は損なので、絶対に譲らないとなるのですが、逆に交通渋滞に巻き込まれる側になったときに誰かが譲ってくれると早く目的地に行けることになるので、社会全体としては譲り合いをしていると効率がよくなることをディープラーニングで発見できたという事例になります。
自動運転の車が社会に普及したときには、当然5 Gで全部が繋がって、車どうし色々なことを通信しながら運転するのだと思います。
その時は人間がプロトコルを与えたとしても、必ずしも想定された状況ばかりではないので、色々な不測の事態も含めてAI同士がきちんと学習の中から折り合いをつけなければならなくなります。
そのためにはどんな基礎技術が必要なのかなと、少し先の未来を考えてこのような共同研究を行っています。
本研究室のHP(http://harmo-lab.jp/?page_id=725) でも様々な共同研究をご紹介していますので、ご興味のある方はこちらもぜひご覧ください!
【5】今週のAI俳句ランキング
AIが俳句を作る「AI俳句」の普及を目指して、本研究室を事務局として2019年7月に設立されたAI俳句協会のウェブサイトでは、AIが生成した俳句を人が評価して、評価結果を集約したAI俳句ランキング(月間・週間)の集計を行っています。
今週のランキングをご紹介したいと思います。
1位 唇の ぬくもりそめし 桜かな
2位 河豚を煮て 云はねばならぬ 心かな
3位 太陽の うしろくぐりて 藪柑子
すべて、本研究室が開発した「AI一茶くん」が詠んだ句になります。
「AI一茶くん」は1日1句投稿していますので、ぜひ俳句協会ウェブサイト(https://aihaiku.org) もご覧ください!
【6】人工知能・ディープラーニングNEWS
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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調和系工学研究室教員
川村 秀憲教授
山下 倫央准教授
横山 想一郎助教
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