2022年3月4日配信
こんにちは。
北海道大学調和系工学研究室(川村秀憲教授、山下倫央准教授、横山想一郎助教)です。
今年度も残り一か月となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
この冬の札幌の積雪は例年の2倍近くを記録し、3月に入っても排雪が追い付かず大学周辺にもまだ大きな雪山が残っています。
暖かい日も増えてきましたが、溶けた雪で道路はぐちゃぐちゃになり歩くにも一苦労ですので、この時期に札幌を訪れる方は十分お気を付けください。
では、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
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◇ 本日のTopics ◇
【1】調和系工学研究室WHAT’S NEW
【2】AI研究者と俳人 人はなぜ俳句を詠むのか 第一章
【3】第4回「Sapporo mirAI nITe」
【4】調和系工学研究室関連企業NEWS
【5】人工知能・ディープラーニングNEWS
【6】今週のAI俳句ランキング
【7】AI川柳
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【1】調和系工学研究室WHAT’S NEW
★卒業論文・修士論文発表会が行われました
2月7日(月)に学部4年生4名の卒業論文発表会、2月10日(木)に修士2年生の学生5名の修士論文発表会が行われました。
皆さんお疲れさまでした。
[卒業論文]大倉 博貴
ロードヒーティング制御における深層学習を用いた路面画像認識に関する研究
A Study on Road Surface Image Recognition using Deep Learning for Road Heating Control
「先輩方、先生方の多大なるご支援のおかげで発表を終えることができました。本当にありがとうございました。卒業研究で得た経験を生かして、より一層精進していきたいと思っています。」
清水 雅之
深層強化学習による自動運転車両の経路探索に関する研究
A Study on Path Finding for an Automated Vehicle using Deep Reinforcement Learning
「先生方、先輩方の手厚いサポートがあってこそ無事に終えられた卒業研究でした。しかし、反省点も多く見られたのでそこを改善して今後の研究に活かしていきたいと思います。本当にありがとうございました。」
花野 愛里咲
言語モデルを用いた俳句評価器の構築と性能評価に関する研究
A Study on the Development and Performance Evaluation of a Haiku Evaluator using Language Models
「先輩方や先生方のサポートのおかげで卒論発表を終えることができました。本当にありがとうございました。卒論を通して学んだことを今後の研究に活かしていきたいです。」
細川 万維
食品ロス削減に向けた家庭料理の献立表提案システムの開発に関する研究
A Study on the Development of a Menu Planning System for Home Cooking to Reduce Food Loss
「この1年間は企業の方とのミーティングに参加し、現実の問題を解決する実際の現場を見ることができとても勉強になりました。その成果をまとめた卒業論文は先生方や先輩方、企業の方の助言や協力なしでは完成しなかったと思います。本当にありがとうございました。」
[修士論文]阿部 涼介
ECサイトにおける商品紹介文の作成支援システムの開発と評価に関する研究
A Study on the Development and Evaluation of a Support System for Creating Product Introductions on EC Sites
「本論文は先生方、研究室メンバーによるサポートのおかげで無事に完成させることができました。今までに調和系工学研究室で学んだことを、これからの社会活動で活かしていきたいと思います。」
織田 智矢
交差点の交通流におけるシミュレーション環境を用いた深層強化学習に関する研究
A Study on Deep Reinforcement Learning in a Simulation Environment for Smooth Traffic Flow at Intersections
「修士課程は苦難の連続でした。自分の未熟さを思い知らされることが何度もありました。また、発表の準備や議事進行をしてくれた同じ研究室の学生には心から感謝します。この経験をもとに、これからも精進していきたいと思います。」
大江 弘峻
灯油配送計画の最適化に向けた ヒューリスティクスの開発に関する研究
A Study on the Development of Heuristics for the Optimization of Kerosene Delivery Planning
「発表までにたくさんの修正内容があり大変でしたが、先生方や先輩方など研究室メンバーのサポートもあり、無事発表を終えることができました。来年度からは博士後期課程に進むので、この期間で得た経験を生かして研究の方を進めていきたいと思います。」
西浦 翼
バス乗客ODデータの推定における深層学習を用いた人物追跡に関する研究
A Study on Person Tracking Using Deep Learning in Estimating Bus Passenger OD Data
森 雄斗
歩行支援機能を有する前腕支持型四輪歩行器の開発に関する研究
A Study on the Development of a Forearm-supported Four-wheeled Walking Machine with Walking Support Function
「大学院から初めてハードウェア(ロボティクス)を扱う研究を行ったので非常に苦労しました。しかし、先生方の指導や先輩方を含めた研究室メンバーからのサポートもあり、自分の納得できる内容の開発・研究が行えたと感じております。これまで先輩からして頂いたことを後輩にしてあげられるように日々精進して参ります。」
★AgriweBにて川村教授のインタビュー記事を掲載いただきました
農業経営のプラットフォーム「AgriweB(アグリウェブ)」にて、川村教授のインタビュー記事を掲載いただきました。
AgriweBは農林中央金庫により運営されている、農業に関わる全ての人の未来をサポートするサイトです。
「農業とAIを考える」と題して、AIと農業の関係について、単にAIを人間に近づけるという発想ではなく、人と人工知能の調和という独自の視点で川村教授が語っています。
インタビュー動画( https://www.youtube.com/watch?v=bElX1q-dJgA )も紹介されていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
AgriweB
[【動画あり】農業とAIを考える_シリーズ『アグリ5.0に向けて〜”非”農業の現場から農業を見る〜』Vol.4]
★研究室に関連する企業・ベンチャーのニュース
『調和技研のAIエンジンがAI自動献立システムに採用』
株式会社調和技研が開発する数値系AIエンジン「furas」が、株式会社フレアサービスのAI自動献立システム「ユニクルAIオートメニュー」に採用されました。
AIエンジン「furas」は組合せ最適化技術を用いて、高齢者施設や幼稚園など利用者に合わせた飽きのこない献立作成という課題を解決します。
両社は今後の事業展望として、当サービスの他社販売へ向けた事業提携の検討も行っていく予定です。
[調和技研のAIエンジン「furas」が AI自動献立システム「ユニクルAIオートメニュー」に採用されました]
[株式会社調和技研]
『AWL開発の顔認証システム搭載デジタルサイネージが日経新聞にて紹介』
2月22日(火)の日本経済新聞にて、AWL株式会社が開発した顔認証システム搭載のデジタルサイネージ(電子看板)について取り上げていただきました。
店内の混雑状況や入店客の性別や年齢層、体温、マスク着用の有無などについて分析・可視化するAIシステム「アウルライト」を進化させ、数えた来店客を基に混雑状況をデジタルサイネージ上で表示。
顔の半分がマスクで覆われていても目や髪形から性別などを判別することで、関心の高そうなメニューを表示する広告媒体の機能を開発しました。
札幌市の商業施設「サッポロファクトリー」に設置したデジタルサイネージに、アウルライトで得た情報を踏まえたお薦めメニューを映し出したところ、対象飲食店の売上高が2~3割上がりました。
もう少しでプロダクトが導入された店舗が1000店舗になります。
AWLにとって、今年は勝負の年です。
ぜひ、これからも応援よろしくお願いいたします。(川村 秀憲)
日本経済新聞
[マスク客をAIで顔認証、北大発のアウル1000店導入へ](お読みいただくにはログインが必要となります。)
[AWL株式会社]
【2】AI研究者と俳人 人はなぜ俳句を詠むのか(第一章)
3月20日(日)にdZERO社より、『AI研究者と俳人 人はなぜ俳句を詠むのか』が出版されることになりました。
俳句を詠むときに人の脳の中では何が起こっているのか。
本書はAI研究者である川村教授と若手俳人の大塚凱氏との対談形式で、知能とは何か、人間とは何かについて語られています。
本メールマガジンの読者の方にはいち早く内容をご紹介していきますので、発売を楽しみにしていただけましたら大変うれしく思います。
[第一章 コードと歳時記 「人間の営み」を解明する]
AI研究者にとって、俳人にとって
川村秀憲 大塚さんとの出会いは、二〇一八年、「AI一茶くん」の誕生から半年が経ったころでしたね。
大塚凱 NHKテレビ「超絶 凄ワザ!AIvs人類 3番勝負」(二〇一八年一月収録、二月放送)ですね。
川村 AIと人類が対決する番組で、最後のテーマが俳句でした。それで「AI一茶くん」が俳人チームと対決することになって、そのときの俳人チームの一員が大塚さんでした。俳句対決で知り合った大塚さんに俳句の専門家として研究に加わってもらうことにしたんです。
大塚 協力を依頼されたとき、自分に何ができるのかという問題はもちろんあったのですが、その一方で、俳句のコミュニティに関わっているだけではできない経験ができるのではないか、新たな視界が開けるのではないかという期待がありました。
川村 俳人と研究者が、俳句という共通の切り口から、お互いに何を考えているのか、ある事象についてどう解釈しているのか、頭の中の作業をどのように組み立てているのか、そうしたことを話していると、こちらの理解が深化するし整理もできます。
大塚 人間がことばを取り扱うときに、どんなことが起こっているのか。俳句以前の、そもそもの関心事として、それがあります。人工知能への興味もそこが出発点になっています。
川村 俳句をつくり俳句を読む人たちの「なぜ」が知りたい。人が、なぜ俳句を、どのように俳句をつくっているのかを知らないことには、「俳句をつくるAI」はつくれません。
不思議な選句体験
大塚 「AI一茶くん」が俳句をつくるとき、あらかじめ「こんなことを詠みたい」という動機のようなものはありません。私自身が俳句をつくるときのことを考えてみると、「こんなことを詠みたい」と考えて俳句をつくるわけではないのです。
そう考えると、「AI一茶くん」と自分はそれほどかけ離れているわけではない。むしろ共通する部分が多いのではないかと思います。「AI一茶くん」の選句をしたとき、ふだんの句会で選句しているときとはまったくちがう感覚を味わって、すこし驚きました。自分が選んだ作品のなかに、自分がいるような感覚。俳句を読む、あるいは、選ぶという経験を通して、自分を見せつけられているような感覚です。
根源的な「なぜ」
川村 人はなぜ俳句をつくるのか。AIの研究者はなぜ「俳句をつくる機械」をつくるのか。この両面から、「なぜ」を考えていく。何がおもしろいのか、どんな意味があるのか。大塚さんと私がここで対話することによって、それがすこしでも見えてくることを期待しながら、おしゃべりを始めましょうか。
「AIには常識がない」
大塚 ある人の作品を読んでいると、その人がどんな俳句を読んできたか、どんなところに惹かれたのか、どんな部分を吸収したのかがわかることがある。その部分は、情報工学的にどう捉えられるのか、興味があります。
川村 きわめて難しいところです。実際に、現在のAIがそこをうまく扱えているかというと、まったくできていません。「AIには常識がない」ということが、研究者のあいだで昔からよく言われます。「いわなくたってわかるでしょ?」は人間に通用しても、AIには通用しません。「AI一茶くん」は膨大な句から、俳句を学びますが、俳句以前の「常識」は学べません。
恋の機微とAI
川村 「常識」とは別に、興味深い例があります。恋の句です。この分野は、なかなか難しいようです。その句が、恋の句かそうでないか。現状のAIは、キーワードを含むか含まないかで判断することはできます。一方、人間は、恋のキーワードを含まずに、恋を詠むことができ、読者も、それが恋の句だとわかる。人間は、俳句なり一文なりを見て、それが比喩的で、抽象度の高い表現によって二人の関係性を伝えていると理解できます。
AIが、ことばそのものの意味だけではなく、ことばの周辺にある意味、言語学でいうコノテーション(言外の意味)を知識として吸収し、理解するという課題は、まだ手つかずです。これだけ発展の著しい人工知能の研究にも、それを解決するための決定打はまだありません。
時代によって変わる解釈
大塚 恋や愛が物理的なものではない以上、その俳句に恋情が含まれるのか含まれないのかという判断基準は、時代によって変わったりもします。同じ作品でも、読み手によって解釈の幅があって、そこには時代が反映する。その時代その時代のコモンセンスは変わっていくものであるからには、作品の解釈が大きく変わっていくこともある。そのあたりは、文芸、より広くいえば、ことばに特有の問題だろうと思います。
エンコードする作者、デコードする読者
川村 俳句やことばは「アナログ」的と思われているかもしれませんが、けっしてアナログではありません。デジタルな情報です。俳句は何度書き写しても、情報として劣化しません。
コンピューターで扱うデジタル情報は、「必ず元に戻る」ということが、情報を正しく伝えることの担保になります。ところが、俳句という情報は、もともとのテクストはデジタルで劣化したり変化したりしなくても、人間が「読む」という部分で、コンピューターで言うところのデコードとはちょっとちがったことが起こっています。
大塚 作句と読みを、エンコードとデコードという情報工学の用語に置き換えると、新鮮です。俳句になんらかの更新をもたらすヒントになりそうです。
川村 俳句をつくるとき、それを読者という他者が読んだとき、どうやって元に戻してくれるのか、デコードしてくれるのか。そのとき、「共有知識」が鍵になるのではないかと思います。作者は、読者と知識を「共有」することによって、「きっと、こんなふうに解釈してくれるにちがいない」と考える。一種の信頼であり、担保ですね。
あくまで「共有知識」を前提として俳句をつくったとしても、デコードは、自分がするわけではない。いろいろな情報を他者と共有していると信じてはいても、もしかしたら「共有知識」の一部は大きく揺らいでいるのかもしれません。
一つの句が時空を超えて
川村 生物学者で哲学者でもあるヤーコプ・フォン・ユクスキュル(一八六四〜一九四四年、エストニア/ドイツ)が提唱した「環世界」という考え方があります。「世界」は絶対的な存在としてあるのではない。ここでいう「世界」と生物種の関係は、人間にも当てはまりそうです。それぞれ、自分が感じ取った情報を元に「世界」を理解し、そこに暮らしている。
そこで、俳句です・・・(続きが気になる方は、ぜひ本書( www.amazon.co.jp/dp/490762350X )をお手に取ってお読みください!)
【3】第4回「Sapporo mirAI nITe」
札幌は昔も今も、これからのミライもITの本場でありたい。
そんな想いから本年度はたくさんの情報をお伝えするため、さっぽろのITの「イマ」と「ミライ」を知る、全8回の「Sapporo mirAI nITe」が予定されています。
各セッションでは、AIやAR/VRなど先端技術やユニークなビジネスアイディアを持つ企業と札幌市における様々なITの取り組みを紹介します。
その第4回目の配信が2月15日(火)から始まりました。(https://www.youtube.com/watch?v=NZJl3rADSpQ&t=41s)
第4回目は川村教授がファシリテーターを務め、ゲストに北海道大学病院 放射線診断科/画像診断学教室 工藤 與亮氏(北海道大学病院 医療AI研究開発センター センター長)、北海道大学大学院 保健科学研究院 杉森 博行氏、聞き手に北海道コカ・コーラボトリング株式会社 成長戦略策定室室長 三浦世子氏をお迎えしました。
「『AI×医療』北大病院の取り組みと今後の期待」と題して、医学と情報工学の両方の分野が分かる人材の育成や、医療がAIに期待することについてお話しを伺うことができましたので、メルマガでもぜひご紹介したいと思います。
― 医療分野におけるAI応用の現在
川村 すでに医療分野でAIの応用がかなり始まっていると思うのですが、医学・医療行為における画像の重要性や画像検査の基礎にしているような領域というのは相当広いのでしょうか。
工藤 医療の中で画像診断というのは必ず出てきます。いろいろな疾患の患者さんがいらっしゃいますが、必ずと言っていいほどCTやMRIなどをやると思いますので、画像診断は広い領域をカバーするような感じではあります。
川村 ディープラーニングによる画像診断の精度が今上がってきていて、人の少し上くらいまで判断ができるようになってきていることを考えると、AIに画像診断をどんどんまかせる段階が目の前にきているのでしょうか。
工藤 そうですね。画像認識や分類の精度はだいぶ上がってきていると思います。ですが、診断までいくと、専門医の診断能力を超えるかどうかというと、そこは一つのハードルがあるというのが使ってみた感じですかね。
実際我々は、医療機器になったプログラムを使い始めています。全部の病変を拾い上げてくれるか。あるいは拾い過ぎがないか。こういったことを考えると、やはりまだ専門医のレベルには及んでいないかなというのが正直なところです。
川村 画像認識だけでなくて、画像に現れない背景知識もあって、専門家はきっといろいろなことを考えて診断されていると思います。
今だと画像に写っているものからしか判断できないので、そこを超えていくためには一工夫必要という感じでしょうか。
工藤 そうですね。なので、画像単体ではなくてカルテ情報や背景情報といった全部のデータを入れてやったほうがいいなと思うのですが、そこには教師データをどうするかという問題をはらんでくると思います。
― 情報工学と医学の両方が分かる人材の育成
川村 今、センターを含めて人材教育に力を入れてやられていると思いますが、医学部の学生さんや若いお医者さんは、情報工学と医学との学際領域に興味をもっているのでしょうか。
工藤 興味を持っている人たちはいますね。興味を持っている人たちが最初どうしたらいいか分からないというのが、一番大きなところだと思います。
我々の「医療AI開発者養成プログラム(CLAP)」でまずはスタートの部分、どういう環境を構築していくのか。簡単な課題から始めてもらい、その上で自分のオリジナルの研究や開発を進めていくようなことを考えています。
三浦 先生が仰ったように、医学の方は情報の言葉が分からないといけなくて、情報の方は医学の言葉をわからないといけない。非常に複雑なお互いの知識というものが、網羅性に富んだものでないといけないということが、何年か前と比べると恐らく格段と難しくなってきているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
工藤 難しくはなってきていますが、一方で必要性の理解も進んできていると思います。我々のプログラムの大学院生の方も、情報系の言葉などをどのように伝えていかないといけないかといった重要性が分かってきていると思います。
あとはお互いの歩み寄りが必要かなと思います。我々医療系の人間が実際プログラミングすることの何がメリットかというと、本当の医療課題がわかっているので、それを知ったうえで、課題をうまく伝える。または自分で課題を解決していく。そこのプロセスがよりダイレクトになった方が、より良いものができるのではないかと思います。
川村 我々もディープラーニングを使っていろいろとAIの研究を行っていますけど、AIの研究を行っているというと、プログラミングの話とそれをどうやってコンピューターに診断させるかというところに焦点があたりがちです。
でも我々がやっている感覚で言うと、コンピューターを使う前の解きたい問題があって、それをどういう形でコンピューターが扱える形式にしていけるのか。その形式に合わせるやり方っていっぱいあるんですよね。本当はそこのところが一番大事であって、そこが筋よくコンピューターが扱える問題に変換ができると、今のコンピューターで良いところまでいける。
逆にコンピューターが扱える問題に翻訳するところが悪いと、スパコンを使っても全く精度が出ないとか解けないことが起こり得る。やっぱりコンピューターに入れる前の所をどれだけ理解して、筋の良い問題に落とすのかが凄く大事だということが、私の経験からもそうだろうなと思います。
そうなると、両方の懸け橋となるような人材がいないと、なかなかそこのところが分からないのかなという気がします。
工藤 最近AIがもてはやされているけれど、実はルールレベルのアルゴリズムのほうがずっと良かったりすることも良くある話です。AIというものを我々は手に入れたわけですが、それをうまく使っていくこと、どれがAIに適していて、どれがアルゴリズムに適しているといったことも考えていく必要があるのかなと思います。
川村 仰る通りですよね。ディープラーニングだったり確率統計のようなものであったりを踏まえながら、ディープラーニングでどれだけ役に立つものをつくるのかといったところですよね。
工藤 全くその通りだと思います。
― この先の医療とAIの関り
川村 これからの医療は、AIを使って診断するという世界が目の前に来ているということですね。AIの最初の応用として画像検査や診断に近いところをやっていき、ここがAIと医療の分かりやすい関りかなと思います。
将来的にこの分野がどんどん進んでいったときに、AIと医療、人との関係性がどうなっていくのかなというところに興味を持っています。当然この先、診断のところにもAIが関わってきます。そして、治療していくために何がベストかということにも関わってきます。
例えばABCという選択肢があって、BCよりも明らかににAが良いよねというときは絶対にAを選びますし、AIもAがベストと言ってくると思います。このような問題は簡単だと思いますが、治療は一長一短で、QOLをとるのか、それとも、辛い治療だけれどそちらを選ぶといったいろいろな選択肢があると思います。
そうなったときに、患者さんが自分の医療行為の中で何を選んでいくのかと。納得して意思決定することに患者さんも関わっていかないといけないし、医師側もABCとあって3つはどれも決められない。でも、その中でどうするのかと話し合いをしていかないといけないというところにも、最終的にAIが関わっていかないといけないと思うんですよね。
今は説明AIといった、画像がこうだからこうなんですよというところは求められていると思いますが、人の選択肢に十分に応えられるようなAIが、最終的に医療とか予防だったりに関わっていく必要があるのかな。
こんなことをいろいろと考えているところがありまして、先生方が実際現場で医療をやっているところと、未来のところを含めて、この先AIと医療のかかわりの方のビジョンについて伺いたいと思っています。
工藤 我々医師として何をAIに期待したいかというと、何が最適化らしいかというのと、その根拠を示して欲しいと思います。どうしてそれが最適なのか。我々医師が意思決定をしていく上で、うまくサポートして欲しいなと。何でもかんでもAIが最終決定というのではなくて、医師がこう考えていることを補強してくれるだとか、それに対して適切なアドバイスをしてくれるだとか。
それから、何か医師が見落としているだとか、間違っていることをそっと教えてくれるような、そんなAIがあると嬉しいなと個人的には思います。
杉森 実際やってみて、与えた選択肢の中から答えを選ばせるようなことはできますが、偶発的な問題に対応してないので、そこがどれだけ医療AIが汎用性を持つのか。
学習させて特定のものを覚えさせると良いのですが、医師の目線からこれはどうなんだろうと伺いを立てたときに、AIは教えてないものを答えられない。そこをどう解決していけばいいのかなというところがあります。
川村 医療もそうですが、政治的な決定というのも、究極的には人がどうしたいのかということになるので、社会的な問題であったり人間的な問題であったり、人間が決めないといけない問題とAIで決められる問題は、本当は明確にきちんと差があるはずだと思います。
そこのところが今は何となく曖昧になっていて、AIもいろいろできるのではないかという期待もあり。でも実際は、ここは絶対に人がやらないとダメだよねっていう領域が何なのかというところが、あまりきちんと定義されていない。そこが医療の分野でも、この先きっちり役割分担がどうあるべきかというところを議論されながら、医療とAIの研究が進んでいくのかなと、お話を聞いていて思いました。
お聞きしたいことは尽きないので、またぜひ次の機会をつくってディスカッションしていただければと思います。本日は、工藤先生、杉森先生、どうもありがとうございました。(終)
【4】調和系工学研究室関連企業NEWS
★INSIGHT LAB、大規模建設現場など災害対策DXの推進サービスを開始
【5】人工知能・ディープラーニングNEWS
★Metaの自己教師あり学習AI「data2vec」の可能性–より汎用的なAIへの布石へ
★AIの生成した顔は本物の顔と区別がつかず本物の顔より信頼性が高い
★NEC、AIスタートアップを新たに設立 AIで顧客のコメントを分析
★私の見方(4)人工知能 生命科学研究の飛躍導く プリファード・ネットワークス最高研究責任者 岡野原大輔氏
★カラス vs AI、ふん害防止へ屋上決戦 映像でカラスだけ識別、40種類の音で撃退
★AIで会話のポジティブとネガティブな感情を可視化 クレーム電話で不満を素早く把握
★KDDI、表情を「未来予知」して遅延なく3Dアバターに再現する技術を開発
★ポケモン風のキャラクターをAIが作成、デモページを公開 GANの高速化研究の一環として
【6】今週のAI俳句ランキング
AIが俳句をつくる「AI俳句」の普及を目指して、本研究室を事務局として2019年7月に設立されたAI俳句協会のウェブサイトでは、AIが生成した俳句を人が評価して、評価結果を集約したAI俳句ランキング(月間・週間)の集計を行っています。
今週のランキングをご紹介したいと思います。
1位 薄氷を踏みわたりたる鴉かな
2位 梅さくや淀の小橋の人通り
3位 落ちそめし沼を待ちをり麦の秋
すべて、本研究室が開発した「AI一茶くん」が詠んだ句になります。
「AI一茶くん」は1日1句投稿していますので、ぜひ俳句協会ウェブサイト( https://aihaiku.org ) もご覧ください!
【7】AI川柳
調和系工学研究室では、毎日新聞社「仲畑流万能川柳」や第一生命保険「サラリーマン川柳」を学習用の教師データとした「AI川柳」に取り組んでいます。
2020年3月までの1年間「NHK総合 ニュースシブ5時」にて、その週の話題のニュースのキーワードをお題に、バーチャルアナウンサー「ニュースのヨミ子」さんが詠んでいたAI川柳も、本研究室が開発した人工知能システムです。
多くの皆さんに楽しんでいただけるよう、2020年6月にAI川柳のTwitterアカウント( https://twitter.com/ai_senryu )を開設いたしました。
AIの中には詠んだ句の良し悪しはないためそれを良いと思うのは人間の側で、そう思うことで初めてAIの詠んだ句が意味を持つのではないでしょうか。
AIが詠んだ句に共感していただけましたら大変うれしく思います!
★お題「安眠」(2月18日投稿)
考えることを忘れて安眠し
家族はいつになったら帰ってくるの?
苦手だった留守番も、今ではひとり時間を満喫しているみたいです・笑
★お題「目の前」(2月21日投稿)
目の前に確認してる雪景色
朝起きたらまず愛犬を庭に出すのが日課
大雪予報の朝は、カーテン開けるときにドキドキします・笑
ちなみに今朝の札幌は吹雪いていました・・・
★お題「猫」(2月22日投稿)
可愛いな猫の顔この美しさ
2022年2月22日は「スーパー猫の日」
くりくりの目にぷっくりしたマズル
時々チラッと見える小さい歯
すべてが可愛いすぎて、ずっと見ていたい・笑
★お題「暖かい日」(2月24日投稿)
暖かい日だってあると思うとき
大雪が降った札幌
雪かきしながら、いつ暖かくなるのと出るのはため息ばかりでしたが・・・
うちの猫たちは少しずつ春を感じているようです!
★お題「にらみつけ」(2月25日投稿)
愛犬が帰って俺をにらみつけ
春になったら狂犬病ワクチンが始まりますね
何かを察知して警戒する愛犬を、なんとか病院に連れて行き・・・
その後いつも機嫌が悪いから連れていく方も憂鬱です・笑
★お題「ビスケット」(2月28日投稿)
会議中何度も開けたビスケット
テレワークが定着して、愛犬と一緒にいられて嬉しい半面困ったことも
仕事中お利口にしているご褒美を何度も貰いに来るから、おやつの缶を手放せません・笑
★お題「飛び出す」(3月1日投稿)
音がして飛び出すほどの猫もいる
日向ぼっこが気持ち良い窓辺のベッドの中が定位置のうちの猫
最近の札幌は気温が上がり、屋根の雪が不意に落ちてくるのでそのたびにびっくりしてベッドから飛び出しています・笑
★お題「我が家」(3月2日投稿)
我が家では別に変わったこともなし
今年度も残り一か月
なんだか慌ただしい日々を送っていますが、我が家に帰ると犬も猫ものんびりいつも通り
疲れも吹き飛びます!
★お題「雛祭り」(3月3日投稿)
行事には適していない雛祭り
季節の行事はなるべく楽しみたいのですが・・・
一度人形をめちゃくちゃにされてから、飾るのにとっても気を使います・笑
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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調和系工学研究室教員
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山下 倫央准教授
横山 想一郎助教
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