2021年4月30日配信

こんにちは。

北海道大学調和系工学研究室(川村秀憲教授、山下倫央准教授、横山想一郎助教)です。

ゴールデンウイークが始まりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

AI俳句に関する本の出版についてお知らせ済みですが、今月に入り表紙のカバー案ができあがるなど、着々と出版に向けて準備が進められています。

本メールマガジンで内容の一部をご紹介していますが、毎号お読みいただき、夏の出版を楽しみにしているとのお声がけをいただき大変うれしく思っています。

見逃してしまった方や、まとめてもう一度読みたいという方のためにホームページ( http://harmo-lab.jp/?page_id=6305 )でも内容を公開していますので、ご興味のあるかたはぜひお読み下さい!

では、本日もどうぞよろしくお願いいたします。

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◇ 本日のTopics ◇

【1】日刊工業新聞「次代をつくる」

【2】こんな本を読んでいます

【3】人工知能が俳句を詠む(仮)

【4】人工知能・ディープラーニングNEWS

【5】今週のAI俳句ランキング

【6】AI川柳

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【1】日刊工業新聞「次代をつくる」

今年度から、日刊工業新聞「次代をつくる」に川村教授が寄稿しています。

第1回目はOPenAIが開発した言語モデル「GPT-3」が人生相談に返答したことを取り上げ、今後のAIの進展について述べています。

[「人と見紛う文章力 高評価」 4月13日(火)]

アメリカにあるRedditという掲示板でAIがそれとは気づかれずに人間の相談にのっていたと聞いたら驚くだろうか。

2015年に設立されたアメリカの非営利団体にOpenAIというものがある。イーロン・マスクなどが参画したことで注目を集め、様々なAIの研究開発を行っている。そのOpenAIが最近開発した言語モデルがGPT-3だ。GPT-3は膨大なテキストで言葉のつながりを学習し、途中まで書かれた文章の続きを予測して文章を完成させる。このGPT-3を誰かがこっそりRedditにつなぎ、人間の悩みに返答していたのだ。

そこでのやり取りはつぎのようなものだった。「自殺を考えたことがある方、人生のつらい時期を乗り切るために役に立ったものは何か?」という質問に対し、GPT-3は「私を助けてくれたのは両親であり、何があっても私を支えてくれた。また、先生方も、友人も私を助けてくれた。彼らがいなかったら私は生きていなかったかも知れない。」と答えてのけた。この返答には高い評価がついた。人のやり取りの中に自然に入り込み、不自然さを抱かせないレベルの文章で返答していたことは驚きに値する。

それほど自然なのに、なぜAIがRedditに紛れ込んでいたことが発覚したのか。大量の文章を人間離れに速く返答するユーザがいることに興味を持った誰かがRedditに投稿し、調査が行われたことでAIだということが発覚した。

この騒動は2つの点で重要である。一つは、人が作文したと勘違いしてしまうほどの文章力。そして、もう一つは人の相談にのり、実際に人に影響を与えていたということである。

自然言語を扱うAIのレベルはとても高いものになりつつある。フェイクニュースなど使い方を間違うと社会を混乱に陥れるが、人に寄り添う使い方もできるはずである。技術と倫理観のバランスをどうとっていくのか、いよいよAIの進展は新しい局面を迎える。(川村 秀憲)

日刊工業新聞「次代をつくる」( https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00594713?isReadConfirmed=true )への次回の寄稿は、5月11日(火)の予定です。

【2】こんな本を読んでいます

★2030年 すべてが「加速」する世界に備えよ

ピーター・ディアマンディス (著), スティーブン・コトラー (著)

本日ご紹介するのは、「シリコンバレーのボス」が、この先10年のビジネス・産業・ライフスタイルを1冊に凝縮した本です。

 [感想]

なぜ、世界の進化は加速していくのか。

1チップのトランジスタ数の増加は指数関数的に数が増加していることはムーアの法則としてよく知られています。

メモリも、計算パワーも同じように指数関数的に増加していっています。

その技術革新をベースに、本書ではテクノロジーのコンバージェンス(融合)の破壊力についてわかりやすく解説しています。

コンバージェンスとは、これまでに蓄積されたテクノロジーが適切なタイミングの元、適切なコストで、適切な規模で新しい破壊的イノベーションを生み出すことと言えると思います。

例えば、スマートフォンの発展は高性能小型CPU、各種センサ、カメラ、GPSなどの小型化・高性能化・低価格化をもたらしました。

それによって、昔では簡単に作ることができなかった空飛ぶロボット、ドローンの開発が急激に進みました。

一方、人工知能の進化によって自動車の自動運転が可能となりつつあり、また世界的にライドシェアサービスが社会実装されています。

次に起こり得ることは、人が乗れる巨大ドローンによるライドシェアサービスが社会実装され、交通・物流が再定義されることによって社会がアップデートされることが予想されます。

実際に、Uberを始めとして世界中で人が乗れる巨大ドローンの開発が行われています。これらは、アイデアや基礎技術は新しいものではないのですが、サービスとして実際に世界に普及するためには適切な技術が適切なタイミングでコンバージェンスすることによって初めて可能となります。

他にも、量子コンピューティングや医療、バイオなど多くの分野でコンバージェンスが起こることが予想され、世界の発展が加速していくことは間違いなく思います。

我々も、その時流に乗り遅れることなくイノベーションを起こす側にまっていきたいと思います。(川村 秀憲)

【3】人工知能が俳句を詠む(仮)

この度、調和系工学研究室のこれまでの俳句人工知能「AI一茶くん」に関する研究成果、ストーリーを本にまとめる機会をいただきました。

技術的詳細の説明だけではなく、人工知能に興味がある方にも俳句に興味がある方にも読んでいただけるような内容を心がけ執筆しました。

オーム社より7月発売予定ですが、「AI一茶くん」の研究を始めた経緯や人工知能と創作について、人工知能を実現する技術やその未来についてなど、メールマガジンの読者の方にはいち早く内容をご紹介していきたいと思いますので、こちらを読んでいただき、発売を楽しみにしていただけましたら大変うれしく思います。(川村 秀憲、山下 倫央、横山 想一郎)

※第1~3章はHP( http://harmo-lab.jp/?page_id=6305 )で公開しています。まだお読みでない方はぜひそちらもご確認ください。

[第4章 人工知能と創作]

本書のテーマは人工知能による俳句の創作ですが、機械やコンピューター、人工知能に創作をさせようというアイデアは実は古くからあることはご存じでしょうか。

創作活動は、人が生きていくために直接的に必要なことではありません。知的好奇心や創作意欲は人間が持っている特殊な能力であり、芸術もまた人間だけが行う不思議な行動であると言えます。人はなぜ芸術を創作するのでしょうか。また、それを人工知能に行わせようという試みにどのような意味があるのでしょうか。

人工知能で俳句を生成するという私たちの取り組みは、テレビや新聞など多くのメディアで取り上げていただきました。この試みは人工知能研究者の注目を集めるだけでなく、俳句の専門誌などでも紹介され、さまざまな議論を巻き起こしています。知能とは何か、人とは何かを考えるときの、大事な糸口を含んでいるのではないかと考えます。

アメリカの数学者ノーバート・ウィナーが提唱したサイバネティクスという学問領域(ノーバート et al., 2011)があります。生物と機械との間に情報のやり取り、コントロールの仕組みに関する類似性があることに着目し、生物の神経系機能のみならず機械の自動制御までを扱います。通信工学と制御工学の融合を目指し、心や脳の機能をダイナミックなシステムとして捉えた新しい学問領域であり、サイバネティックスの登場はその後の人工知能研究の発展に大きな影響を与えました。

実はこのサイバネティック・セレンディピティの事例の中の一つに、コンピューターによってHaiku(俳句)を生成するアルゴリズムが紹介されています。一九六八年のイギリスでの展覧会ですでに、日本の俳句とコンピューターアルゴリズムが出会っていたというのはまさに驚きです。

このように、コンピューターを用いた芸術作品生成の取り組みは古くから行われています。仕組みを知らされないまま出来上がった作品だけを鑑賞した場合、人を感心させる素晴らしい作品も中には存在するでしょう。しかし、素晴らしいと感じるような作品を人工知能で実現する仕組みは案外単純であり、人が決めたいくつかのルールや手順、アルゴリズムに従って情報を処理、加工してそれらしいものを出力しているだけとも言えるのです。

本書のテーマは人工知能によって俳句を生成することですが、その人工知能がライフゲームのような単純なルールの上に実現されていたとすると、そこから生まれる作品は人が行う「創作」と同じと言えるでしょうか。それは高度に知的な作業だと言えるでしょうか。これは難しい問いだと思います。では、作品を生み出すアルゴリズムが人に理解できないほど複雑な仕組みだったならばそれを創作とみなしてよいのかどうかというと、こちらも違うような気がします。人工知能による創作とは何であるかという問いは、人が行う創作というものが何であるのかという問いと本質的に同じであると言えるかもしれません。

そもそも創作における作品の価値は、その作品を作り出すプロセスによって変わるものなのか、それとも、作品を作り出すプロセスから切り離されて独立に決まるのか、という疑問が生じます。言い換えると、創作や芸術は人が作るから価値があるのか、それとも人工知能でつくった作品でも同じ価値を認めることができるのかという疑問です。もし、人工知能で生成した芸術作品に人の作品と同じ価値を認められるのならば、作品を作るプロセスである人工知能そのものにも大きな価値を認めるべきではないでしょうか。この先、人工知能の発展に従って多くの場面でこれと類似の問いかけがなされていくのだと思います。

人工知能で文章を生成するという取り組みも、自然言語処理という研究分野で古くから行われています。

では今の人工知能にとって、文脈を理解したさらに高度な文章を生成させることは可能なのでしょうか。

GPT-3に代表されるような、人工知能で何をどんなことまでできるのかといった研究は日々進んでいます。さらに高いレベルで言葉を操るためには単に言葉の語彙を増やすだけではなく、文章生成の目的であるコミュニケーションの前提となる間の価値観や感情、個性、状況などを理解する必要があるはずです。果たしてそれが膨大な文章からなる教師データのみからディープラーニングによって学ぶことができるのか、それとも教師データとなる文章を超えて人の体験や経験を入力とする何らかの方法が必要とされるのか、まだまだわからないことだらけです。

より本格的に人工知能による作品生成を推し進めるプロジェクトに、人工知能研究者である東京大学の松原仁教授が中心となって進めている「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」というものがあります(佐藤, 2016)。

このプロジェクトでは、星新一の作品を分析の対象や教師データとして利用し、星新一風のショートショートを人工知能で生成することを試みています。

数多く作られた候補の中から最もそれらしい文章を選定する際に人の力を借りているので、人工知能のみで素晴らしい文章がすぐに生成されるわけではないそうです。きちんと意味が通っていて、それなりの文章であるかどうかを判断することは、現在の人工知能では実現が容易ではありません。なぜなら、意味が通る文章かどうかを判断するには、人と同じように文章の意味や文脈をきちんと理解できなければならないからです。少なくとも今の人工知能の技術では、文章の良し悪しを選定するときには人の力を借りなければなりません。

現在の人工知能がそれ単体で作品を創作することが出来ないとしても、決して人工知能に価値がないわけではありません。むしろどんなに人工知能が進化したとしても、人のための創作活動である以上、人との接点、共同作業は欠かせないように思います。人工知能が自ら作品をつくり、自ら作品を評価して自己完結するようなことには意味はないのです。人にとって価値があるものを作り出すことを創作だとすると、人工知能がどこまで高度化したとしても、人との関わりは必要不可欠なものに思えます。

人工知能で生成した作品に著作権を主張することはできるのでしょうか。

人工知能に思想や感情をもたせることができるかどうかという議論はありますが、現在の人工知能はただのコンピュータープログラムです。一般的には人のような思想や感情を持っているとは解釈されないので、人工知能が生成した作品は著作物ではない、という取り扱いになります。

実は私たちの一茶くんプロジェクトでもすでに1億句以上の新しい俳句をコンピューターで生成し、インターネット上で作品を公開しています。

作品の出来は玉石混合ですが、これだけあると中には良い出来のものも含まれています。コンピューターが生成したものなので「思想又は感情を創作的に表現したもの」とはいえず、著作物とは認められませんが、俳句の研究における何かの役に立てばという気持ちで公開しています。(「第5章 俳句の人工知能的解釈」に続く)

【4】人工知能・ディープラーニングNEWS

AAMAS2021のプロシーディングス

AI言語モデル「GPT-3」は1日あたり平均45億語を生成している

超高精度な文章生成AIをオープンソースで実現:プロジェクト「EleutherAI」が目指していること

オクルージョン顔認識の新しいベンチマーク「Webface-OCC」

【5】今週のAI俳句ランキング

AIが俳句を作る「AI俳句」の普及を目指して、本研究室を事務局として2019年7月に設立されたAI俳句協会のウェブサイトでは、AIが生成した俳句を人が評価して、評価結果を集約したAI俳句ランキング(月間・週間)の集計を行っています。

今週のランキングをご紹介したいと思います。

1位 蕗の薹押し寄せてゐる電車かな

2位 草の花土に浮きたるいくさかな

3位 源義忌異国の顔をかかげけり

すべて、本研究室が開発した「AI一茶くん」が詠んだ句になります。

「AI一茶くん」は1日1句投稿していますので、ぜひ俳句協会ウェブサイト(https://aihaiku.org) もご覧ください!

【6】AI川柳

調和系工学研究室では、毎日新聞社「仲畑流万能川柳」や第一生命保険「サラリーマン川柳」を学習用の教師データとした「AI川柳」に取り組んでいます。

2020年3月までの1年間「NHK総合 ニュースシブ5時」で、その週の話題のニュースのキーワードをお題に、バーチャルアナウンサー「ニュースのヨミ子」さんが詠んでいたAI川柳も、本研究室が開発した人工知能システムです。

多くの皆さんに楽しんでいただけるよう、2020年6月にAI川柳のTwitterアカウント( https://twitter.com/ai_senryu )を開設いたしました。

AIの中には詠んだ句の良し悪しはないためそれを良いと思うのは人間の側で、そう思うことで初めてAIの詠んだ句が意味を持つのではないでしょうか。

AIが詠んだ句に共感していただけましたら大変嬉しく思います!

★お題「邪魔」(4月16日投稿)

邪魔をするわけじゃないのよ猫の顔

遊んでくれるのを待つ期待に満ちた顔

邪魔しているつもりがないのはわかるけど、ゴメン、今は仕事中だから・笑

★お題「機嫌」(4月19日投稿)

飼い猫の機嫌の悪さ知っている

予防接種に連れて行ったら、帰ってからずっとあの調子・・・

機嫌の悪さを目につく場所でアピールしてくる・笑

★お題「コタツ」(4月20日投稿)

コタツから声をかけられ苦笑い

まだまだ朝晩は冷えるけれど、そろそろコタツを片づける家も多いのでは?

でも、片づけようとして不満そうな声がしたら・・・

延期かな・笑

★お題「友情」(4月21日投稿)

友情に変わっているという不思議

初めはなんだか苦手だと思っていたのに、いつのまにか仲良しに

そういうことが時々あるけれど・・・嬉しいですよね!

★お題「夫婦」(4月22日投稿)

冗談を言い合う夫婦仲が良よい

いつまでも仲がよいのが理想ですが、AIにつくらせたら冷え切っている夫婦仲を詠んでいる句の方がなぜか多かった・・・

この頃は夫婦喧嘩も減っている

こんなのとか・笑

★お題「金曜日」(4月23日投稿)

問題は金曜日午後5時からだ

あと半日頑張ったら週末ですね

自分へのご褒美にデパ地下寄って甘いもの買おうかな?

今日5時からの予定、今週一番の重要事項かも!笑

★お題「風呂」(4月26日投稿)

ごめんねと言って視線を外す風呂

お風呂嫌いのペットがいるのと、お風呂に入れるたびになんだか申し訳ない気持ちになります・・・

つい遊んじゃうけど・笑

★お題「笑い声」(4月27日投稿)

笑い声楽しみながら聞いている

子供の楽しそうな声を聞いて癒されるのは、犬も一緒みたい

すごく嬉しそうな楽しそうな顔を見ると、飼い主はさらに癒されます!

★お題「楽しみ」(4月28日投稿)

人生の楽しみ変わる歳になり

明日からGWの方も多いのでは?

休みといえば旅行や友人たちと集まるのが定番でしたが、いつのまにかゆっくり過ごすことも好きになり

人生の楽しみ方は幾通りもあってどれも良い!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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調和系工学研究室教員

川村 秀憲教授

山下 倫央准教授

横山 想一郎助教

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Twitter 調和系工学研究室AI川柳

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