2021年4月2日配信

こんにちは。

北海道大学調和系工学研究室(川村秀憲教授、山下倫央准教授、横山想一郎助教)です。

札幌にも春が訪れ、長かった冬がやっと終わりました!

今冬の札幌は平年よりも早い根雪となりましたが、根雪が終わった日も平年より早く、統計を開始してから5番目の早さだったそうです。

この先の気温も高ければ、GWには満開の桜を楽しめそうです。

では、本日もどうぞよろしくお願いいたします。

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◇ 本日のTopics ◇

【1】調和系工学研究室WHAT’S NEW

【2】人工知能が俳句を詠む(仮)

【3】こんな本を読んでいます

【4】イスラエルにおける新型コロナウイルスのワクチン接種現地レポート・その4

【5】AI川柳

【6】今週のAI俳句ランキング

【7】人工知能・ディープラーニングNEWS

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【1】調和系工学研究室WHAT’S NEW

★第20回複雑系マイクロシンポジウムにて発表を行い賞を受賞しました

3月13日(土)にオンラインで開催された第20回複雑系マイクロシンポジウム(CSMS2021)( https://sites.google.com/view/csms2021/ )にて、博士3年の永田 紘也さん、修正1年の織田 智矢さんが発表を行い、本発表にて織田さんが優秀プレゼンテーション賞を受賞しました。

織田 智矢, 横山 想一郎, 山下 倫央, 川村 秀憲, 蕨野 貴之, 大岸 智彦, 田中 英明, RC カーを用いた自動運転車両シミュレーション環境の構築, 第20回複雑系マイクロシンポジウム, 06, オンライン (2021)

受賞名:優秀プレゼンテーション賞

先生方やKDDI総合研究所の方にご指導頂き、このような賞を頂くことができました。

今回の受賞は大変嬉しく、研究の励みになります。

共著の皆様のご指導・ご協力に厚く感謝申し上げます。(修士1年 織田 智矢)

永田 紘也, 横山 想一郎, 山下 倫央, 川村 秀憲, 屋内エンターテイメント用バルーンロボットの自律制御システムの開発, 第20回複雑系マイクロシンポジウム, 13, オンライン (2021)

発表を行った永田さんには興味をもった研究発表、及び、学会に参加して気づいた問題点と最近の動向についてレポートしてもらいました。

11 ○上田一磨, 佐竹利文, 以後直樹, 小林一誠, 三井聡, 戸村豊明(旭川高専)

シングルボードコンピュータを用いたマルチコプタの制御

Raspberry Pi Zeroをコントローラとして、クアッドコプター(いわゆる”ドローン”)の位置制御を行うという研究。

市販のクアッドコプターのマイコンやセンサなどをRaspberry Pi Zeroを用いたものに置き換え、ホバリングなどを行う実験を行ったが、モータの振動やドリフトなどによるノイズの影響でうまく定点保持ができなかったという。

バルーンロボットでも市販のクアッドコプターに用いられるような部品を使用したり、Raspberry Piを用いて制御を行ったりと共通項が多く、興味深い発表であった。

以前(4年ほど前)と比べて自動運転関連の研究が増えているという印象を受けた。

本研究室から登壇したM1織田くんの譲り合う自動運転車に関する研究のほかにも、カメラによって車線中央を認識するという研究の発表などがあった。

自動運転技術は次世代の交通の花形として注目されている。

相次ぐ高齢ドライバーによる事故が報道され、免許証を自主返納する人が増えている一方で、公共交通機関の少ない地方で暮らす人々は自動車がないと生活できないというジレンマを抱えている。

自動運転技術の成熟によって公道を自動運転車が走ることが当たり前の社会になれば、こういった問題は解決されると考えられる。(博士3年 永田 紘也)

研究内容にご興味がありましたら、下記フォームからお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ:http://harmo-lab.jp/?page_id=92

★中学校教材「国語の学習3」にAI俳句が掲載されました

中学校教材「国語の学習3」(浜島書店)に、本研究室が開発しているAI俳句が掲載されました。

AIを理解する上での一助になれば幸いです。

浜島書店

[国語の学習3]

★調和系工学研究室卒業生・修了生の言葉

3月25日(木)に調和系工学研究室の学生が卒業・修了いたしました。

今年度は新型コロナウイルス感染症対策のため、学位授与式は規模を縮小しての実施となりました。

川村教授から本研究室の学生たちに直接学位記を授与し、無事に卒業・修了となりました。

それぞれの道に進まれる皆さんの新しい門出を心よりお祝い申し上げます。

4月からの新しいステージでの活躍を期待しています。

卒業論文・修士論文発表会での発表スライドを本研究室のHP( http://harmo-lab.jp/?page_id=6147 )で公開しております。

研究内容にご興味がありましたら、下記フォームからお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ:http://harmo-lab.jp/?page_id=92

また、この春で調和系工学研究室を離れる学生たちが本研究室で取り組んだ研究内容や、後輩へのメッセージ、今後の抱負についてのそれぞれの思いをご紹介いたします。

[学部4年 今原 智広]

ロードヒーティング制御のための路面画像の積雪状況認識についての研究を行いました。

能動的に取り組むことが苦手な自分にとって研究活動はとても難しいものでした。

卒業研究の際には先生方、学生の皆さんに頼りきりとなってしまいご迷惑をおかけしました。

ご助力本当にありがとうございました。

先生方、先輩方に教わったことを活かし今後とも頑張りたいと思います。

[学部4年 小林 直也]

料理の調理手順を木構造で表現した「構造化レシピ」を作成し、フードロスゼロや調理時間短縮の観点から効率の良いレシピを提案する研究を行いました。

研究開始当初から研究室に集合してのゼミが行えず自宅での作業が中心となり、手探りの状態の研究活動でした。

相談する場をなかなか設けづらい中でも、先生方や先輩からZoomやチャットを通じてたくさんのアドバイスを頂いて、無事卒論まで達成することができました。

 4月からは社会人になりますが、4年間での学びを活かして精一杯仕事に取り組もうと思います。

[修士2年 久保田 遼裕]

私はメトリックラーニングを用いたバス乗客ODデータの推定に関する研究に取り組みました。

調和系は学生毎に研究テーマが結構異なるので、ゼミでは進捗について内容が伝わるような資料を作るのが最後まで苦戦しました。

今年度は研究室でのイベントが中止になってしまったのですが、何度か開催されたリモート飲み会は印象に残っています。

修士では授業、就活、研究と忙しい日々が続くと思うので、後輩達には体調には気をつけて生活してもらいたいです。

私も体調に気をつけながら、社会人一年目頑張ります。

[修士2年 柳 公人]

調和系工学研究室では、ファッションに関するAIの研究を行っていました。

学部時代は経営学を専攻していた私にとって、大学院での研究は未知の領域で困難なことばかりでした。

そんな中でもテレビの取材など、研究を外部に紹介する機会を頂けたときは頑張ってよかったと思えました。

先生方や研究室の皆さんには休日も含めたくさんサポートしていただきました。

本当にありがとうございました!

★新教育ライブラリ Premier Vol.6「AI時代を生き抜く子供を育てる」に川村教授のコラムが掲載されました

新教育ライブラリ Premier Vol.6「AI時代を生き抜く子供を育てる」(ぎょうせい)に、本研究室の川村教授のコラム「人工知能と俳句」が掲載されました。

ぎょうせいの新教育「ライブラリ」シリーズは、実務的・実践的な内容に加え、国際的潮流などを視野に幅広い知見を提供し、一歩先を見据えた学校づくりを実現する、スクールリーダー必携の教育図書です。

コラムの中で、人工知能に俳句を詠ませることを研究する意義や、AI一茶くんの紹介。

また、人工知能が発展していく中での子供たちへの教育についても述べています。

ご興味のある方はぜひお読みください。

ぎょうせい

[AI時代を生き抜く子供を育てる(新教育ライブラリ Premier Vol.6)]

★川村教授監訳「人工知能の可能性」が出版されました

3月31日にニュートンプレスより、本研究室の川村教授監訳「人工知能の可能性〜機械は人間と同じ思考力を持てるのか〜」が出版されました。

トロント大学のブライン・キャントウェル・スミス著「The Promise of Artificial Intelligence」の日本語訳となります。

哲学的な話題を含めた、人工知能が次のステージに行くために考えるべきことについての議論です。

内容的に研究者向けの本ですが、ご興味がある方はぜひお手にとってお読みください。

[人工知能の可能性〜機械は人間と同じ思考力を持てるのか〜]

ブライアン・キャントウェル・スミス (著), 川村 秀憲 (監修), 檜垣 裕美 (翻訳)

出版社 : ニュートンプレス

発売日 : 2021/3/31

★北大生協機関紙「きぼうの虹」に川村教授が寄稿しました

4月1日発行の北大生協機関紙「きぼうの虹」に、本研究室の川村教授が寄稿しました。

北大生協教職員組織委員会が編集発行し、年6回、偶数月に発行している「きぼうの虹」は、全学の教職員組合員や院生組合員に配布するとともに、生協食堂にも置いて学生の皆さんにも読んでもらっている機関紙です。

「人工知能と俳句」と題して、人工知能に俳句を詠ませる意義や、今後、人と人工知能とどうかかわっていくべきかについて述べていますので、ご興味のある方はぜひお読みください。

[きぼうの虹 第393号]

★4月5日放送の「しゃべくり007」にてAI俳句を取り上げていただきます

4月5日(月)放送の日本テレビ「しゃべくり007」にて、本研究室が開発しているAI俳句「一茶くん」を取り上げていただきます。

ご興味のある方はぜひご覧ください。

日本テレビ

[しゃべくり007]

放送日時:2021年4月5日(月)22時~

★NVIDIA GTC 2021にて川村教授が講演します

NVIDIA GTC 2021にて、本研究室の川村教授が「人工知能が俳句を詠む日~機械が知能を獲得するために」と題して講演します。

NVIDIA GTC 2021は、AI イノベーター、テクノロジスト、全てのクリエイターのためのカンファレンスです。

強い人工知能を実現するためには何が必要なのか。

NVIDIA GPUを利用したディープラーニングによる俳句生成の取り組みの紹介、そしてそこから見えてくる研究課題とそれを乗り越える方法論について講演しますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。

[講演概要]

日時:2021年4月14日(水)10:00~10:40

題目:人工知能が俳句を詠む日~機械が知能を獲得するために

参加費:無料(DLIワークショップのみ有料)

※オンデマンドで視聴可能な環境のご提供が予定されています

主催:NVIDIA Corporation

参加申込: https://www.nvidia.com/ja-jp/gtc/ からご登録いただけます

[NVIDIA GTC 2021]

★調和系工学研究室メンバーのメールアドレスが変わりました

本研究室メンバーのメールアドレスは、@以下がcomplex.ist.hokudai.ac.jpでしたが、このアドレスは3月末で使用できなくなっております。

今後は、@ist.hokudai.ac.jpのメールアドレス宛にお送りいただけますようお願いいたします。

なお、本研究室に所属しているメンバーのメールアドレスは以下のページからもご確認いただけます。

所属メンバー:http://harmo-lab.jp/?page_id=139

★研究室に関連する企業・ベンチャーのニュース

『調和技研と日立ソリューションズ東日本がコールセンター向け業務効率化ソリューションの提供開始』

株式会社調和技研と株式会社日立ソリューションズ東日本が実証研究の成果を実用化し、 AI・RPAを活用したコールセンター向け業務効率化ソリューションとして4月から提供を開始します。

AI音声認識・合成やチャットボットや、自動要約を連携させた機械学習、感情分析など身近になったAIツールにRPA技術を組み合わせて最適な循環サイクルを構築することで、マルチチャネルによる問合せ応答サービスの均一化や、今まで人力に頼ってきたFAQナレッジ作成・更新の運用コスト削減を可能としました。

本ソリューションを導入することで、コールセンターの「コスト低減」「人材不足解消・オペレーター即戦力化」「オペレーター生産性向上」「コールセンター運営全般の効率向上」を実現します。

読売新聞オンライン

[日立ソリューションズ東日本と調和技研が 実証研究の成果を実用化し、 AI・RPAを活用したコールセンター向け 業務効率化ソリューションとして提供開始] [株式会社調和技研]

『AWLが凸版印刷と「AI販促」を開発』

AWL株式会社が凸版印刷株式会社と「AI販促」を開発しました。

共同開発したソリューションによって店内顧客の属性や、店内行動に合わせて最適なコンテンツをリアルタイムに店頭サイネージへ配信することが可能になります。

[凸版印刷、AWLと「AI販促」を開発] [AWL株式会社]

【2】人工知能が俳句を詠む(仮)

この度、調和系工学研究室のこれまでの俳句人工知能「AI一茶くん」に関する研究成果、ストーリーを本にまとめる機会をいただきました。

技術的詳細の説明だけではなく、人工知能に興味がある方にも俳句に興味がある方にも読んでいただけるような内容を心がけ執筆しました。

オーム社より7月発売予定ですが、「AI一茶くん」の研究を始めた経緯や人工知能と創作について、人工知能を実現する技術やその未来についてなど、メールマガジンの読者の方にはいち早く内容をご紹介していきたいと思いますので、こちらを読んでいただき、発売を楽しみにしていただけましたら大変うれしく思います。(川村 秀憲、山下 倫央、横山 想一郎)

[第2章 人工知能の歴史と未来]

一九五六年夏、ダートマス大学のジョン・マッカーシー、ハーバード大学のマービン・ミンスキー、IBMのナサニエル・ロチェスター、ベル電話研究所のクロード・シャノンなど著名な研究者がアメリカ合衆国ニューハンプシャー州のダートマスに集まり、重要な会議が行われました。

この会議から、アメリカを中心として人工知能の研究が本格的に立ち上がっていきました。

初期の大きな期待とは裏腹に、より現実的な問題を解くためには当時のコンピューターの性能が不十分であったことや、知識処理の手続き、アルゴリズムに研究が偏っていたことなどから、思うような結果が出なかったのです。研究資金も次々に打ち切られ、多くの期待で始まった第一次人工知能ブームは終わりを迎えました。

少し時が経った一九八〇年代、エキスパートシステムと呼ばれる新しい手法を伴って再び人工知能に注目が集まり、第二次人工知能ブームが訪れました。エキスパートシステムとは、特定領域についての専門家の知識をコンピューターにあらかじめ入力しておき、それを元にコンピューターが人間からの質問に回答するようなシステムです。

しかし、専門家の知識を人工知能が理解できるような形で入力する過程で、人の手に多く頼っていたことから、利用できる範囲や維持のコストに問題があり、あまり実用的なものにはなりませんでした。また、人間であれば前提条件や状況から自然に見出せるような、いわゆる一般常識をどう表現し扱うのかといった問題に対しても適切な解決方法を見出せませんでした。そのため、エキスパートシステムに対する期待も急速にしぼみ、やがて第二次人工知能ブームも終焉を迎えます。

ブームの終焉後、人工知能研究は下火になり研究者の間でひっそりとつづけられました。一方、コンピューターの性能はムーアの法則に従って急激な向上を果たしていきます。加えて、一九九〇年代にはインターネットが普及し始め、データの流通量が爆発的に増大していきます。二〇〇七年のiPhone登場をきっかけとしたスマートホンの普及によりその増加に拍車がかかりました。これらを背景にビッグデータという言葉が生まれ、ビッグデータを用いた機械学習の技術革新が進んでいきます

そして今、まさに第三次人工知能ブームの真っ只中に私たちはいます。画像認識から始まったディープラーニングは、日本語や英語など人間同士のやり取りに使われる言葉をコンピューターで扱う自然言語処理、数値予測、ロボット制御などさまざまな分野で驚くべき成果を達成し始めています。過去二回のブームと決定的に違うのは、研究の発展もさることながら産業応用の対象が大幅に広がっていることです。

コンピューターの発展期にダートマス会議によって人工知能という研究分野が生まれ、今日では「人工知能」という言葉は当たり前に使われるようになりました。ここで一度、「人工知能とは何なのか」について考察してみたいと思います。残念ながら、この問いはこれは私たち人工知能の研究者にとっても歯切れよく答えられない問いです。

これは、知能をどのレベルで捉えるかによって議論が分かれてくる問題です。人が行うような高度な情報処理のレベルで知能を論じる場合もありますし、アリやハチなどが群となって行動する際の超個体的な行動のレベルで知能を論じる場合もあります(大内 et al., 2003)。近年では、粘菌が迷路を解くことができるといった報告もなされています(Nakagaki et al., 2000)。その中で、そもそも統一的な知能の定義やその有無の判定、レベル分けはとても難しいのです。

人と同じように状況を認識し、人と同じような思考過程を経てすべきことを判断することができる人工知能を「強い人工知能」とよびます(Searle, 1980)。人工知能の研究分野では、このような「強い人工知能」をどうやって実現するのかに、多くの研究者が取り組んでいます。

タスクを遂行しているという意味では一見表面上は人の知能が行うことと同等のことを実現しているように見えるものの、実際に行われていることは人の知能とは異なり、手続き化された計算処理に則って情報を処理しているだけです。このような知能を「弱い人工知能」と呼び、「強い人工知能」と区別しています。

ロボット研究者であるハンス・モラベックが、一九八八年の著書『電脳生物たち』(モラベック & 野崎, 1991)の中で、「知能テストやチェッカーでコンピューターに大人並みの能力を発揮させることは比較的簡単だが、知覚や運動性となると、一歳児の能力を与えることさえ困難か、もしくは不可能である」ということを述べています。これは、どういうことでしょうか。

人間の大人にとっても難しいことを上手に行えるのに、子供がいとも簡単に行えることが出来ない、このような状況をモラベックのパラドックスと言います。このパラドックスが指摘しているのは、人間から見て難しいタスクだからと言って必ずしもコンピューターにとっても難しいというわけではないということです。

みなさんは、スタンリー・キューブリック監督、 アーサー・C・クラーク原作の有名な映画『2001年宇宙の旅』をご覧になったことはあるでしょうか。

一九六〇年代にこの映画が製作されたとき、人工知能の研究者として著名なマービン・ミンスキーが映画セットの顧問として参加していたことを筆頭に、徹底的な科学的検証が行われました(マイケル et al., 2018)。二〇〇一年にはこのような「強い人工知能」が実現しているだろうという楽観的な予測に基づいて時代設定が行われました。

一方で、「強い人工知能」、「汎用人工知能」の実現に関しては否定的な意見の研究者もいます。ですが、なぜ実現できないのかという議論においてはあまり明確な根拠が示されているとは言い難く、むしろ今のところ実現できない理由が見当たらないということで楽観的に実現できると考えている人工知能研究者も多くいます。

では、仮に「強い人工知能」、「汎用人工知能」が実現すると何が起こるでしょうか。

もし人間によってひとたび「強い人工知能」や「汎用人工知能」が開発されれば、人工知能は自分自身の設計を自ら改良し、能力を高めることができるので、人間を置いてきぼりにして永遠に自らの能力を高め続けることができるということです。このような未来が訪れたとき、これは私たち人類にとって明るい未来となるのでしょうか。それとも、数多くのSFに描かれるような、人工知能に人類が支配されるディストピアな世界となってしまうのでしょうか。(第3章「人工知能を実現する技術」に続く)

【3】こんな本を読んでいます

★オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

オードリー・タン (著), プレジデント書籍編集チーム (編集)

本日ご紹介するのは、2020年に全世界を襲った新型コロナウイルス(COVID-19)の封じ込めに唯一成功した台湾で、その中心的な役割を担った若きデジタル担当政務委員(閣僚)が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIと社会・イノベーション、そして日本へのメッセージを、自身の言葉で語りつくした一冊です。

 [感想]

台湾のデジタル担当政務委員のオードリータンによる政治とIT、未来に対する著書。

デジタルネイティブ、トランスジェンダー、中学中退という多様な経験、立場からこれからの未来社会はどうあるべきか、私たちは政治や社会にどうかかわっていくべきかを述べている。

これまで正直なところ台湾の民主化の状況はよく知らなかったが、デジタルトランスフォーメーションをベースとする多くの取り組みがなされていることが紹介され、その根底にはデジタルがあるからこその明るい未来をどう構築していくのかといった非常に前向きな価値観があることを知った。

日本の状況をよく「飛んでいる飛行機はつくりかえられない」とある種のあきらめをもって形容することがあるが、きちんと若者が中心となってデジタルと未来の在り方を議論し、それを丁寧に説明しながら実現していく社会づくりが今の日本に大事なんだと思わされた。

オードリータンの多様な経験と円熟した社会・政治への理解、よりよい未来を創るための意気込みが理解でき、とても勉強になった。(川村 秀憲)

【4】イスラエルにおける新型コロナウイルスのワクチン接種現地レポート・その4

新型コロナウイルスのワクチン接種が日本でも始まりましたが、すでに接種が進められている国も多くあります。

その中で、人口あたりの接種回数が最も多い国がイスラエルです。

このたび、INSIGHT LAB株式会社が配信しているメールマガジン「ISLイスラエルニューズレター」をシェアしていただけることになりました。

INSIGHT LABは本研究室の川村教授が技術顧問を務める、データとデータ技術を活用して企業や社会のDXを実現していくITソリューションカンパニーであり、イスラエルにも支社があります。

イスラエル在住で、「ISLイスラエルニューズレター」のライターを務める中島直美さんは、川村教授とも交流があり、イスラエルのAIビジネスのスタートアップ事情にもとても詳しい方です。

イスラエルで中島さんが体験した、新型コロナ予防接種現地レポートはとても興味深い内容ですので、ご紹介したいと思います!

「コロナワクチンの接種を推進するイスラエルのネタニヤフ首相」前編

今、日本で一番良く知られているイスラエルに関する話題は、コロナワクチン接種についてではないかと思います。

イスラエルでも、コロナワクチンの接種は国民の大きな関心ごとの一つではありますが、その接種の速さについてとか、それを可能にするデジタル化された保険システムなどについては、特に話題として取り上げられていません。

イスラエル人にとってはそれが「当たり前」で「日常」だからでしょうか。

すでに人口の約半数が第1回目の接種を終え、2回の接種を終えた人やコロナから回復した人にスポーツ施設や一部の文化施設の利用を許可する「グリーンパス」制度が始まったイスラエル。

最近はワクチン接種希望者はほとんど接種を済ませた様で、今後の政府の課題は、ワクチン接種に無関心な人たちと、正統派などといった一部の接種反対派をどのように「接種希望者」へと動かすことができるのか、ということにあるようです。

ネタニヤフ首相は「世界では、人々がワクチンを待っているが、イスラエルでは、ワクチンが人々を待っている」と言ったといわれます。

イスラエルは今、「プリム祭」という、ユダヤ教のお祭りの時期で、普段ならばこの時期は仮装をした人々がパレードをしたりパーティーを開催したり…とユダヤ教の祭りの中では珍しく「誰が誰だかわからなくなるまで喜ぶ」という、楽しいものなのです。

けれどこの週末は未だ収まらないコロナパンデミックのため、夜8:30~翌朝5:00の夜間外出禁止令が発出されました。

そんなプリムの祭りに、イスラエルの首相であるビニヤミン・ネタニヤフ氏、通称「ビビ」のツイッターアカウントに、一つの動画がアップされました。

それがこちらです。 https://twitter.com/netanyahu/status/1364967809067986951

動画は、ビビがコロナワクチン接種会場でメガホンを手に、「プリム祭、おめでとう!さあ、皆、腕をまくって!予防接種をうけてください!」と声を張り上げるところから始まります。

共演者はヘン・ミズラヒというスタンド・アップ漫談家。

ビビは「おお、ヘン君、どうだい、君はちゃんと予防接種したかい?」と語りかけます。

それに対して、プリム祭らしくピエロの仮装をしたヘン君は「そんな、何から出来ているのかわからない様なワクチンを体内に入れるなんて、僕は怖いし、いやだね」。

ビビ「そんなピエロみたいなこと言うなよ(ヘブライ語の表現で物事を真剣にとらえない人や、いいかげんな対応をする人のこと)。

このワクチンは世界の最高の専門家たちの手によって確認されているんだ。

FDA(アメリカの食品医薬品局)の承認も得ているし、何100万という人々がすでに接種し危険を回避しているんだ」 などというように、ヘン君が発する様々な意見にビビが反論していくつくりとなっています。

内容はいたって真剣なものではありますが、次々と変化するプリム祭の仮装と、最初から最後までいたるところにちりばめられたダジャレの数々で、なかなかに凝った作りです。

ヘン君は、犬の仮装をしてしっぽを動かしながら「だって、そのワクチンはDNAを変えるっていうじゃないか。もし、僕にしっぽが生えたらどうしてくれるんだ」と言ってみたり、エセ科学者の仮装で「ティック・トックで調べたら、このワクチンは確かなことよりも疑問のほうが多いと言われているよ」、キーボードを叩きながら「国民全員に予防接種を受けさせて何をするつもりだ」「全員にチップを埋め込もうとしているんだろう」「一体どんなたくらみがあるんだ」など、「陰謀論」と言われる様な質問を次々にたたみかける…こんな調子で約1分半の動画で内容は盛りだくさん。

そのたびにビビは、予防接種を全国民が受ける目的は何であるのかということや、コロナは若者にも危険であることを一つ一つ簡潔に説明し、自分自身だけでなく家族を守るものであることを強調。

最後には「グリーンパスがもらえて、以前のような自由な生活に戻ることができる、これがコロナと共に過ごす最後のプリム祭」であることを宣言します。(後編に続く)(Insight Lab Israel 中島直美)

【5】AI川柳

調和系工学研究室では、毎日新聞社「仲畑流万能川柳」や第一生命保険「サラリーマン川柳」を学習用の教師データとした「AI川柳」に取り組んでいます。

2020年3月までの1年間「NHK総合 ニュースシブ5時」で、その週の話題のニュースのキーワードをお題に、バーチャルアナウンサー「ニュースのヨミ子」さんが詠んでいたAI川柳も、本研究室が開発した人工知能システムです。

多くの皆さんに楽しんでいただけるよう、2020年6月にAI川柳のTwitterアカウント( https://twitter.com/ai_senryu )を開設いたしました。

AIの中には詠んだ句の良し悪しはないためそれを良いと思うのは人間の側で、そう思うことで初めてAIの詠んだ句が意味を持つのではないでしょうか。

AIが詠んだ句に共感していただけましたら大変嬉しく思います!

★お題「行列」(3月19日投稿)

行列を確認したい人ばかり

札幌駅の地下街、朝8時前なのに行列ができていて何?何?と気になっていたら・・・

前に歩いてる人たちもみんな看板を目で探してました・笑

(ユニクロ プラスJ の発売日だったみたい)

★お題「尻尾」(3月22日投稿)

あれこれと思いめぐらす尻尾振り

尻尾で感情を表すっていうけれど・・・

飼い主はちゃんと尻尾と表情、体の隅々まで見て犬の気持ちを予測しています!

★お題「キツネ」(3月23日投稿)

ペットよりキツネの方が今メタボ

札幌に住んでいると、住宅街でも時々キツネを見かけます!

意外とぽっちゃりで、太らないように食事制限しているうちの猫と比べると、お腹周りかなりメタボ・笑

★お題「息をつく」(3月24日投稿)

息をつく間もなく孫が帰宅する

子供はネコと遊びたい

でもネコはかまってほしくない

多くのネコの悩みの種かも・笑

★お題「卒業」(3月25日投稿)

卒業後大人になるという仕事

今日は北大の卒業・修了式でした

僕の研究室でもそのまま大学に残る学生、就職して札幌を離れる学生など様々です

大学での経験をぜひ今後の成長に役立てて欲しいです!

★お題「怒る」(3月26日投稿)

微笑みを浮かべて怒る犬を見る

留守番させたことに怒ってるから、おやつ食べる?って聞いたら、条件反射で笑顔になった・笑

★お題「レトルト」(3月29日投稿)

レトルトに違いないとは思えない

最近のレトルトは言われるまで分からないほど本格的なものも多くで驚きます!

これはペットたちのご飯でも言えることみたい・笑

★お題「駄々」(3月30日投稿)

結局はあきらめないで駄々をこね

家にいても仕事中は遊んであげられない・・・

無視してたら邪魔しにきた・笑

★お題「想定外」(3月31日投稿)

散歩中想定外と驚いた

札幌にいると時々キツネを見かけますが・・・

犬の散歩中に目の前に現れて驚きました!

想定外すぎて一瞬、柴犬だと思った・笑

★お題「嘘」(4月1日投稿)

正直に云えば嘘だと思ってた

経験値の差?

嘘に付き合ってあげるなんて優しい

でもなんだか切ない・笑

【6】今週のAI俳句ランキング

AIが俳句を作る「AI俳句」の普及を目指して、本研究室を事務局として2019年7月に設立されたAI俳句協会のウェブサイトでは、AIが生成した俳句を人が評価して、評価結果を集約したAI俳句ランキング(月間・週間)の集計を行っています。

今週のランキングをご紹介したいと思います。

1位 片栗の花のこぼれて雨上る

2位 啓蟄の土の湿りを払ひけり

3位 連翹の枝の先まで夕日かな

すべて、本研究室が開発した「AI一茶くん」が詠んだ句になります。

「AI一茶くん」は1日1句投稿していますので、ぜひ俳句協会ウェブサイト(https://aihaiku.org) もご覧ください!

【7】人工知能・ディープラーニングNEWS

ArtEmis: AIでアートを説明

AIでクマやイノシシを判別 獣害や農作物の被害を防止、自治体職員の業務削減目指す

三菱電機、AIで話し言葉から要約文を作成 報告書の作成時間を半分に

ブッダで悩みを解決、仏教対話AI「ブッダボット」の開発 -伝統知と人工知能の融合-              

Python言語による実務で使える100の最適化問題

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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調和系工学研究室教員

川村 秀憲教授

山下 倫央准教授

横山 想一郎助教

調和系工学研究室HP

調和系工学研究室FB

川村 秀憲教授FB

Twitter 調和系工学研究室AI川柳

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