現状の不良品検査は人による目視のため、検査員の習熟度のばらつきや、検査員の高齢化、高い人的コストが懸念されており、自動検査化への高いニーズがあります。
そこで、工場ラインへの導入を想定し、AIによる不良検査システムの構築を行ったのが本研究です。
不良検査と聞いて一般的には、良品と不良品画像の教師データをたくさん集めてどちらなのかを判定させようということが思い浮かぶと思いますが、不良品の発生率が低くて多種多様な不良品画像のデータがたくさん集まらないケースが多くあります。
この研究の検査対象であるバルブボディ(自動変速機(AT)の油圧を制御する働きをする自動車部品)でも、不良品の発生率が約4%と不良品画像のデータが集まらないため、良品画像のみを用いる教師なし学習による異常検知を試みました。
畳み込みオートエンコーダ(入力データのみを訓練データとする教師なし学習で、データの特徴を抽出して組み直す手法)による復元画像と入力画像の差分抽出を行いましたが、この場合にどのようなことを行うかというと、良品の画像を先ず圧縮した後に展開し、それを元に戻してもう一度良品の製品画像を再現します。
これによりインプットとアウトプットが同じようなデータとなります。
良品の画像を入れて中の内部的な特徴量をとり、また良品の画像を出力します。
良品はたくさんあるので、それをずっとトレーニングしていくと不良品の画像がそこに入ると、内部で勝手に良品の画像に変換されるということが起きます。
良品を入れても不良品を入れても良品の画像になるので、出てきた画像をとったときにインプットに使った画像と差分があればそれは不良品の可能性があることになります。 この手法により、不良品発生率が低い場合でも不良品を発見することができるようになります。