2019年11月29日配信

こんにちは。

北海道大学調和系工学研究室(川村秀憲教授、山下倫央准教授、横山想一郎助教)です。

札幌は雪が融けたと思ったらまた積もりと寒暖差の激しいお天気ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

初雪の後はいつ根雪になるのか気になるところですが、雪が積もっていなくても道路がツルツルなこともあるので、この時期に札幌を訪れる方は十分お気を付けください!

では、本日もどうぞよろしくお願いいたします。

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◇ 本日のTopics ◇

【1】海外訪問記

【2】調和系工学研究室WHAT’S NEW

【3】調和系工学研究室発ベンチャー企業

【4】今週のAI俳句ランキング

【5】人工知能・ディープラーニングNEWS

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【1】海外訪問記

11月17日~22日の日程で本研究室の川村先生がロシアのノヴォシビルスクを訪問しました。

ノヴォシビルスクは学術都市アカデムゴロドクを抱え、研究開発や理系人材の輩出において強みをもつ、モスクワ、サンクトペテルブルクに次ぐロシア第3位の都市になり、シベリアの行政的中心都市です。

今回の訪問は(一社)ロシアNIS貿易会による、日本とロシアのIT交流事業への参加が目的です。

前日まで韓国のソウルで開催された“The 22nd SNU-HU Joint Symposium”に出席し、そのままロシアへ移動とタイトなスケジュールの中での訪問となりましたが、川村先生からみたロシア版シリコンバレー、ノヴォシビルスクをご紹介します!

[訪問記]

今回、初めてロシアを訪問しました。

到着時のノヴォシビルスクの気温は、氷点下7度です。

寒い・・・

到着した日の夕ご飯はホテル内でとりましたが、日本食もあり、ラーメンがとても美味しくて、物価も安い!

持っていたイメージとは全く異なっていて、ホテルのレストランは洗練されたデザインで北欧を思わせます。

食事の最後はお決まりのウォッカです!

滞在二日目は、ノヴォシビルスクの南にある学級都市アカデムゴロドクにあるテクノパーク、通称アカデムパークに来ました。

ここは筑波のモデルにもなっているところで、たくさんの研究者が集まって研究しているだけでなく、研究成果から多くのスタートアップが生まれているところでもあります。

施設やサポート体制も充実しているようで、シベリア近辺の起業家が多数集まっている場所でもあります。

人口もノヴォシビルスクと札幌は似たような規模ですが、産学官が連携してこれだけ大規模にインキュベーションを行なっているのには驚きました。

イノベーションのレベルはまだまだこれからの様に見えましたが、伸び代とスピード感は大きそうです。

午後からはノヴォシビルスク州政府デジタル経済部門と交流。

スマートAIシティ札幌を説明する小冊子で調和系工学研究室と調和技研、フュージョンについてロシア語で取り上げてもらいました。

三日目は、ノヴォシビルスク国立大学を訪問しセミナーに参加しました。

こちらからは、調和系工学研究室の共同研究事例や、調和技研、札幌AIラボの紹介などを行いました。

また、ノヴォシビルスク国立大学の発表も聞かせていただきました。

教育を専任教員だけで担うのではなく、大部分の講義を周囲の研究所の研究者が非常勤で教えにきているそうで、プロの研究者による先端の研究の実践が特徴だそうです。

また、卒業生が多数アカデムパーク内でスタートアップを立ち上げているのも特徴だそうです。

さらに最新のAI研究についてもご紹介いただきました。

研究面では応用研究よりも、数学を含めた理論研究が強い印象です。

大学レベルでの日露の協定は長い歴史があり、北海道大学がリーダーシップをとって進めています。

北大はモスクワ大学と協定を結んでおり、ノヴォシビルスク国立大学は長崎大学と協定を結んでいます。

せっかく交流の機会をいただいたので、これをきっかけに新しいプロジェクトが進められたらと思いました。

この日の夜のシベリアはいよいよ氷点下20度を突破し、無茶苦茶寒いです。

そして、今夜もウォッカ・・・

四日目の朝は氷点下28度になりました!

ひょんなきっかけでノヴォシビルスク国立工科大学のアレクセイ・コルカー教授と交流。

研究分野も我々と近く、お互いのケーススタディを交換しました。

これをきっかけにこれから共同研究や人材交流などを一緒に進めていければと思いますが、この交流の様子を日経新聞の道内版に記事にしていただきました。

こうやって記事になるとなにか大きなことが進んだように思いますが、実際はフランクにいろいろとお話した程度なのです。

でも、そういうところから世の中動いていくのでしょうね。

初ロシアで全然現地のイメージがなかったのですが、ノヴォシビルスクはどこもおしゃれでカッコいい北欧のようなデザインが溢れており、スタイリッシュな街にびっくりです。

料理も安くて美味しく、美男美女も多くてとても心地よく過ごせる街でイメージが変わりました。

もちろん、ロシア最後の晩餐もウォッカを堪能!

東京、沖縄、名古屋、東京、苫小牧、韓国、ロシアとこの二週間はたくさん移動して、いろいろな出会いや学びがありました。

落ち着いて時間をとってじっくり集中することも大事ですが、いろいろなところに行って普段することのない経験から得られるものが自分を成長させてくれるような気がします。(川村 秀憲)

【2】調和系工学研究室WHAT’S NEW

★日経クロストレンドで北海道ガスと本研究室の共同研究が紹介されました

11月15日の日経クロストレンド「明日の話題に使えるIT小話」で、北海道ガス株式会社と本研究室の共同研究による、融雪システムの高度化についてご紹介いただきました。

畳み込みニューラルネットワークを用いた人工知能技術により路面状態の積雪有無の画像認識を行い、適切にフィードバック制御を行うことで一般的に普及している従来型コントローラーより約40%エネルギーコストを削減できる本共同研究は、人工知能学会より2018年度現場イノベーション賞を受賞しています。

調和系工学研究室は、社会と人との調和を前提とした人工知能の技術とその応用を研究していますが、地域の課題を解決しながら経済的な効用にもめどをつけた事例として、本共同研究をご紹介していただき大変うれしく思います。

なお、本共同研究は北大発認定ベンチャー企業であるティ・アイ・エル株式会社にて実用化が進められています。

[日経クロストレンド]

「北海道ガスに学べ 企業理念と調和するテクノロジーの活用術」(お読みいただくにはログインが必要となります。)

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00105/00037/

[ティ・アイ・エル株式会社]

https://tilab.jp/

★人工知能学会特集号に山下先生の論文が掲載されました

本研究室の山下先生の論文「大規模イベントにおける群集制御」(Automatic Crowd Control for Large-scale Event)が、2019年11月、人工知能学会特集号に掲載されました。

著者

産業技術総合研究所人工知能研究センター 大西 正輝、重中 秀介

北海道大学大学院情報科学研究院情報理工学部門 山下 倫央

要旨

2020年の東京オリンピック開催が目前に迫る中、スポーツや祭り、コンサートのように大規模に人が集まる空間における雑踏警備の困難さが増加している。

こうした社会的課題の解決に寄与し得る技術として、実際に人の流れを計測し、シミュレーションをしながら、現場の最適化を行い安全を確保することを目指した研究が行われている。

本稿ではこのような安全に人の流れを制御するための要素技術の代表例を紹介した後、実証実験例について紹介し、実証実験を通して得られた課題を明らかにする。

 [人工知能学会AI書庫 Link]

https://jsai.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=10466&item_no=1&page_id=13&block_id=23

※非会員の方は閲覧が有料となります。

★情報法制学会誌に川村先生が参加した座談会の様子が掲載されました

情報法制学会誌「情報法制研究第6号」に、本研究室の川村先生が今年の4月20日に参加した座談会「最近のAI技術をめぐって -情報法制の可能性について(3) in 北海道-」の様子が掲載されました。

情報法制学会は、情報法制の研究を目的として、研究者が自主的に集まり、かつ当該研究者の会費負担により、研究者自身によって運営している日本学術会議協力学術研究団体です。

座談会は鳥海 不二夫氏(東京大学大学院工学系研究科准教授)が司会を務め、川村先生の他に宍戸 常寿氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)、山本 龍彦氏(慶應義塾大学大学院法務研究科教授)、実積 寿也氏(中央大学総合政策学部教授)、加藤 尚徳氏(KDDI総合研究所アナリスト)が参加しました。

AIやIT技術の専門家と情報法の専門家との対談を通じて、最新の技術やそれに関わる法律的な問題点などを明らかにしていくことを目的としている本座談会では、調和系工学研究室の研究3例を紹介しながら議論が進められました。

「自動運転」「ファッションAI」「俳句のAI」の詳細を紹介しながら、AIが今後どんどん発展していく中で、どのような社会になっていくべきかを議論することができ、ものの見方の幅が広がった座談会でした。

 [情報法制学会誌 情報法制研究第6号]

「最近のAI技術をめぐって -情報法制の可能性について(3) in 北海道-」(お読みいただくにはログインが必要となります。)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/alis/6/0/6_75/_article/-char/ja

★日本経済新聞北海道版の記事でロシアとのIT交流事業が紹介されました

11月19日の日本経済新聞北海道版で、(一社)ロシアNIS貿易会による日本とロシアのIT交流事業が紹介されました。

11月17日~22日の日程でロシアのノヴォシビルスク市で開催されている本交流事業には、調和系工学研究室の川村先生も参加しており、本研究室の共同研究事例について発表しました。

また、川村先生がCo-founder及び社外取締役を務める株式会社調和技研やフュージョン株式会社も参加し、スマートAIシティ札幌などについて紹介しました。

今回の交流事業をきっかけに、ロシアと新しいプロジェクトを進めていけたらと思います。

[日本経済新聞北海道版]

「ロシアでIT交流事業、北大発新興企業や道経産局参加」(お読みいただくにはログインが必要となります。)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52359500Z11C19A1L41000/

 [株式会社調和技研]

https://www.chowagiken.co.jp/

[フュージョン株式会社]

https://www.fusion.co.jp/

★日本経済新聞北海道版の記事で調和技研とノヴォシビルスク工科大学との共同研究について紹介されました

11月22日の日本経済新聞北海道版で、本研究室の川村先生がCo-founder及び社外取締役を務める株式会社調和技研と、AIの理論研究に定評があるロシアのノヴォシビルスク工科大学のアレクセイ・コルカー教授の研究室が、AIについて人材交流や研究事例を共有することで合意した旨が紹介されました。

アレクセイ・コルカー教授は独フォルクスワーゲン(VW)とも共同研究していることで知られており、今後は共同研究や人材交流などを一緒に進めていきたいと思います。

 [日本経済新聞北海道版]

「調和技研がAI共同研究、ロシア・ノボシビルスク工大と」(お読みいただくにはログインが必要となります。)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52487590S9A121C1L41000/?fbclid=IwAR0v0k8Yt6ki0zNsxhVZa_oMQmwyzbjl74wcDIsmnjx3wAiRSOhkMWeiZwg

 [株式会社調和技研]

https://www.chowagiken.co.jp/

★俳句界12月号の特集記事でAI俳句が紹介されました

11月25日発売の月刊「俳句界」12月号の特集記事、「AIと俳句の戦い」でAI俳句が紹介されました。

特集では本研究室が開発した「AI一茶くん」が詠んだ俳句の中から人気の高い30句が紹介され、山下先生が「AI俳句の現状」について述べています。

AI俳句に取り組んだ経緯と目的、人工知能が俳句を生成する手順について詳しく説明し、AI俳句の選句能力を高めるためのデータ収集についてもふれています。

また、俳人からの率直な意見として「AI俳句について思うこと」と題したエッセイも掲載されています。

ご興味のある方はぜひお読みください。

[俳句界]

http://bungak.com/haikukai/

※Amazonではすでに売り切れておりますが、購入希望の場合は harmo-contact@complex.ist.hokudai.ac.jp までご連絡いただけましたらご購入いただけます。

【3】調和系工学研究室発ベンチャー企業

調和系工学研究室では、人工知能を理論的に研究しているだけでなく、様々な民間の方々と共同研究を行い、実際にシステムやサービスをつくり、その技術を社会応用し、いろいろな企業といろいろな仕組みをつくって、世の中を変えるお手伝いをしています。

私たちの研究が日々社会の中で評価され、様々なニーズや課題がダイレクトにフィードバックされる環境におかれることが重要であるとの想いから、研究室のスタッフ、学生、OBが中心となって様々なベンチャー企業を設立しています。

本日ご紹介するのは、本研究室の川村先生がCo-founder、博士2年に在籍する永田 紘也さんがCTO、OBの山本 健太郎氏(1999年度学士課程修了)が社外取締役を務めているティ・アイ・エル株式会社です。

TILはIoTテクノロジーを用いて生活者の“安心、安全、便利”を実現するソリューションを研究、企画、開発する、北大発認定ベンチャー企業です。

本社は東京ですが、テクノロジーセンターが北大北キャンパス「北大ビジネススプリング」にあり、北海道ならではの課題解決の研究にも取り組んでいます。

降雪地域において、画像認識・ディープラーニング技術を用いて積雪状況を認識し、ロードヒーティング(駐車場などの地下に熱源を設置し、熱により地表に積もる雪を融かす設備)の熱源を制御することで、エネルギーコストの最適化を可能にする研究をしています。

北海道ガス株式会社と調和系工学研究室との共同研究によって開発されたカメラ・マイコンを内蔵したコントローラーは、現在、実用化が進められています。

他にも、AIボイスレコーダーソリューションの開発などがあります。

これは、消費者や取引先と直接対峙するサービス現場で発生する可能性がある、さまざまなコミュニケーションミス、事故・トラブル、クレームに対応できるよう開発されたボイスレコーダーデバイスです。

現場でのコミュニケーションを全てテキスト保存し、あらかじめ設定された禁止語句や大声などをAIが検知するとオペレーションセンターへ自動通報し、訪問先や密室でのトラブル発生を防ぎます。

AIボイスレコーダーソリューションについては、11月7日の日本経済新聞北海道版でも取り上げていただきました。

TILは最先端のIoTとAIの技術を武器に急成長をしています。

どうぞ引き続き応援をよろしくお願いいたします。

[ティ・アイ・エル株式会社]

https://tilab.jp/

【4】今週のAI俳句ランキング

AIが俳句を作る「AI俳句」の普及を目指して、本研究室を事務局として2019年7月に設立されたAI俳句協会のウェブサイトでは、AIが生成した俳句を人が評価して、評価結果を集約したAI俳句ランキング(月間・週間)の集計を行っています。

今週のランキングをご紹介したいと思います。

1位 くちびるに 移民の夜の 寒さかな

2位 初雪や 髭を大きく 愛撫する

3位 桃の花 嘘の如くに 悼みけり

すべて、本研究室が開発した「AI一茶くん」が詠んだ句になります。

「AI一茶くん」は1日1句投稿していますので、ぜひ俳句協会ウェブサイト(https://aihaiku.org) もご覧ください!

【5】人工知能・ディープラーニングNEWS

★最も効率的に学習できる問題の難度は「正答率85%レベル」であることが判明

https://gigazine.net/news/20191111-optimal-learning-85-percent-rule/

★オムロンが2つのAI新技術、人の経験使い軽量化したAIと学習モデルを統合できるAI

https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/spv/1911/14/news074.html

★音声認識とは|最新技術や基礎知識・仕組み・現在の事例を解説

https://ledge.ai/speech-recognition/

★Googleの自然言語処理モデル「BERT」はインターネット上から偏見を吸収してしまうという指摘

https://gigazine.net/news/20191114-google-bert-bias/

★NTTのAI、センター試験の英語筆記で偏差値64突破 “試験対策”に工夫 「東ロボ」プロジェクトの一環

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1911/18/news116.html

★予測の不確かさを扱える新しい勾配ブースティング「NGBoost」

https://ai-scholar.tech/treatise/ngboost-ai-345/

★Self-training with Noisy Student improves ImageNet classification

https://arxiv.org/abs/1911.04252

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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調和系工学研究室教員

川村 秀憲教授

山下 倫央准教授

横山 想一郎助教

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