日経MJ連載コラム「川村教授のなるほどAI」新たな技術、使いこなす教育へ、知識共有ゼミ「ディープラーニング勉強会」の発表報告、最新の人工知能・ディープラーニング情報をお届けします/harmolab096


こんにちは。
北海道大学調和系工学研究室(川村秀憲教授、山下倫央准教授、横山想一郎助教)です。

5月3日付、日経MJに川村教授の連載コラム「川村秀憲のなるほどAI」が掲載されました。
第11回は「新たな技術、使いこなす教育へ」と題し学校現場における「ChatGPT」導入の懸念に対して見解を述べています。
本メルマガでもその内容を詳しく紹介させていただきますので、ご興味のある方はぜひお読みください。

また、次の日曜日(5/14)、10時45分から放送のHBCラジオ『明日をキヅク』に川村教授が出演します。
AIやChatGPTについてお話ししていますので、ご興味のある方はぜひお聴きください。
放送後にポッドキャストでも配信されますので道外の方はこちらからお聴きいただけます。
https://podcasters.spotify.com/pod/show/hbcradioashita

それでは、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
2023年5月12日配信


◇ 本日のTopics ◇
【1】日経MJ「川村秀憲のなるほどAI」
【2】ディープラーニング勉強会
【3】人工知能・ディープラーニングNEWS
【4】調和系工学研究室WHAT’S NEW
【5】調和系工学研究室関連企業NEWS
【6】AI川柳


【1】日経MJ「川村秀憲のなるほどAI」

2022年7月より日経MJで川村教授の連載コラム「川村秀憲のなるほどAI」がスタートしました。2023年5月3日に掲載されました第11回の内容を紹介させていただきます。

新たな技術、使いこなす教育へ
チャットGPT、学校現場への導入に懸念

最近、生成AI(人工知能)のChat(チャット)GPTに関する多くの取材を受けます。その中に「学生がリポートをチャットGPTで作成したらどうするんですか」という質問が必ずあります。今回は、このことについて私見を述べたいと思います。

この問いに対して、「考える力が落ちるから使うべきではない」「間違った答えになったらどうするのか」などといった答えを見ることがありますが、この問題はもっと根本的であり、近視眼的に捉えるべきではないと思っています。

現代教育の枠組みの中で人はなぜ勉強しなければならないのか、なぜ学校に行くのか。それは学校で身につける能力が社会を維持するために必要とされる能力だからです。
「勉強して良い学校に行って良い会社に入ってたくさん給与をもらう」というのは、「社会にとって必要な能力」を身に着けた結果として評価されるということです。決して、個人の自発的興味、知的好奇心を満たすことが目的とはなっていません。

多くの人に汎用化された能力が求められて、社会に必要とされるのであれば、その能力を持ったAIを開発することに経済合理性があるはずです。巨大な開発費が必要だとしても、社会に広く普及することで十分に元が取れるはずです。

このような文脈で考えると、チャットGPTの登場は社会から広く求められ、これまで人が担ってきた能力を代替するためだと理解できます。つまり、チャットGPTで答えらるリポートを出す講義で身につく能力はすでに代替されてしまっており、それを人が身につける意義はもうあまりないかもしれません。

新しい技術によってこれまでの教育の枠組みを守って永らえさせるのではなく、我々教育者が新しい技術を使いこなすために枠組みを変えていく必要があると思います。これが最初の問いの私なりの答えです。

では、AIの発展を受けて人が学ぶ意味はあるのでしょうか。私自身は個人の自発的学びはより重要性を増していくと思います。

例えば家を借りることを考えたとき、「広さ」「アクセス」「家賃」など複数の指標が存在して、どのようなバランスが自分にとって良いのかは自分で決めなければなりません。この問題の答えは、どのような指標をどれぐらい重視するかで変わってきます。
しかし、AIには何をどのくらい重視するかは決められません。仕事を選ぶとき、買い物するとき、よい人生を送るためにどのバランスで納得感のある意思決定をするのかは自分で決めなければなりません。

多くの場合はそもそもどんな指標を考えるべきか、将来への影響はどうなのかなどは未知で不明瞭です。そこで、少しでも自分が対面している問題を理解するためには、歴史や文学、芸術、技術、科学などが役立つかもしれません。

チャットGPTはそのような学びを助ける技術になりえます。個人に寄り添い、問答を通して学びを助ける「ソクラテスメソッド」と呼ばれる教育法があります。チャットGPTは、このメソッドのように教育者と協力しながら一人ひとりの多様な興味に対応することが可能になるでしょう。それこそが新しい教育の枠組みになっていくのではないかと思っています。


【2】ディープラーニング勉強会

調和系工学研究室ではディープラーニングの最新の知識共有を目指し、毎週ゼミを実施しています。
担当学生がトップカンファレンスから自分の興味のある論文について発表し、意見交換をしながら進めています。
本研究室HP( http://harmo-lab.jp/?page_id=1194 )には過去の発表に使用したスライドも公開していますので、ご興味のある方はぜひそちらもご覧ください。

◇ 5/1紹介論文
Ego-Body Pose Estimation via Ego-Head Pose Estimation
キーワード: 画像認識,姿勢推定

出典: Jiaman Li, C. Karen Liu, Jiajun Wu : Ego-Body Pose Estimation via Ego-Head Pose Estimation, arXiv preprint arXiv:2212.04636 (2022)
掲載紙: arXiv (CVPR 2023 受賞候補論文)
[公開URL]

概要: 人間の行動理解やVR/ARへの応用において、一人称映像から人の3次元姿勢 (3D human motion)を推定することは重要である。提案手法EgoEgoは、中間表現として頭部モーションを採用した新たな手法である。問題を2分割したことにより、既存のデータセットが活用でき、他のSoTA手法より優れた性能を示した。さらにベンチマークのための一人称映像と人の3次元推定データセットARESを開発した。(博士2年 森 雄斗)
[論文紹介スライド]


【3】人工知能・ディープラーニングNEWS

Introducing MPT-7B: A New Standard for Open-Source, Commercially Usable LLMs
<概要>MPT-7Bは、MosaicML Foundationシリーズの最新トランスフォーマーで、1兆のテキストとコードのトークンから学習されました。オープンソースで商用利用が可能で、LLaMA-7Bと同等の品質です。MosaicMLプラットフォームで9.5日間で訓練され、独自のMPTモデルを開発できます。MPT-7Bの他に3つの微調整済みモデルもリリースされています(ChatGPT作成)。

ChatGPTと食べログが連携「明日夕方に4人で入れる焼き肉屋ある?」に返答 店探しを支援
<概要>カカクコムは「食べログ」のChatGPTプラグインをリリース。指定条件で予約可能な飲食店情報を最大5件表示。外部情報参照で正確性向上。ウェイティングリスト登録が必要(ChatGPT作成)。

IBMがAIとデータを組み合わせた新基盤「watsonx」を発表
<概要>IBMは、新しい生成AIプラットフォーム「IBM watsonx」を発表しました。企業は、このプラットフォームを利用して、独自のAIモデルを構築し、ビジネスの成功につなげることができます。Watsonxは、企業向けAI構築スタジオ「IBM watsonx.ai」、データストア「IBM watsonx.data」、AIガバナンスツールキット「IBM watsonx.governance」の3つで構成されており、2023年7月から提供が開始される予定です。IBMとHugging Faceの連携により、数1,000のオープンモデルやデータセットが提供される予定です(ChatGPT作成)。


【4】調和系工学研究室WHAT’S NEW

★ HBCラジオ『明日をキヅク』に川村教授が出演します

2023年5月14日(日)に放送予定の北海道放送HBCラジオ『明日をキヅク』に川村教授が出演します。
AIやChatGPTなどについてお話ししていますので、ご興味のある方はぜひお聴きください。

番組は日曜の10時45分から11時に放送されます。
放送後にPodcastでも配信されますので道外の方もお聴きいただけます。

[HBCラジオ『明日をキヅク』ポッドキャスト]


★ 読売中高生新聞にて川村教授のコメントが紹介されました

2023年3月10日付、読売中高生新聞(3面)にて「人間の仕事 なくならない」と題し川村教授のコメントが紹介されました。「AIが人間に取って代わる未来は来るのか」との質問にお答えしています。

[読売中高生新聞]


★ 北海道新聞にて対話型AIと大学教育に関する川村教授のコメントが紹介されました

2023年4月12日付、北海道新聞(26面)にて川村教授のコメントが紹介されました。チャットGPTなどの対話型AIと大学の規制に関する記事にて川村教授は、今後の大学教育の在り方について言及しています。

[北海道新聞]


★ 研究室に関連する企業・ベンチャーのニュース

◇ 「経済界倶楽部」札幌4月例会講演にAWL代表 北出 氏が登壇しました

2023年4月27日に札幌市にて行われた経済界倶楽部 札幌4月例会講演にAWL株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 北出 宗治 氏が登壇し、「北海道から、世界に通用するエッジAIソリューションの提供を目指すAWL」をテーマにお話ししました。

[経済界倶楽部]
[AWL株式会社]


【5】調和系工学研究室関連企業NEWS

日本経済新聞:凸版印刷、札幌で企業の販促請負 データ活用し一気通貫戦略拠点(株式会社フュージョン)
<概要>凸版印刷は、札幌に「エンゲージメントセンター」を開設。コールセンター機能に加え、携帯アプリ運用チームを配置し、顧客データの管理や企画、実際の配信といった工程を一手に担う体制をつくる。AIを活用した顧客データ分析を行い、販促プランを提案。デジタルマーケティングのフュージョンと提携し、拠点機能強化を目指す(ChatGPT作成)。

DX支援のイジゲングループと株式会社Aillの業務提携に関するお知らせ(株式会社Aill)
<概要>Aillとイジゲングループが業務提携を締結。九州エリアでのAill goen展開へ。Aill goenは働く人のワーク・ライフ両面をサポートする良縁ナビアプリ。イジゲングループはDX支援を行う企業。提携で働く人のQOL向上が期待される(ChatGPT作成)。

教育機関向けのIoTソリューションを使用した学習教材「動かして学ぶIoTとAI」の提供を開始いたしました(株式会社クレスコ)
<概要>株式会社クレスコは2023年4月27日に、IoTソリューションブランド「CLIP」を活用した大学・高等専門学校向け学習教材「動かして学ぶIoTとAI」の提供を開始しました。本教材は、文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」への認定を支援し、学生一人ひとりが機器を使って学べる環境を提供します。(ChatGPT作成)。

ChatGPTで使われているOpenAIの最新技術「GPT-4」を搭載した ティ・アイ・エルのAI音声ダッシュボード「RECORiS powered by GPT-4」の 共同実証実験の取り組みについて(TIL(ティ・アイ・エル)株式会社)
<概要>エコモットは、出資先企業のティ・アイ・エルのAI音声ダッシュボードRECORiSに含まれる会話の要約、感情分析、キーワード抽出などのアップデート機能を効果検証する協力を発表した。RECORiSはカスタマーハラスメントやパワーハラスメントの見逃しを防ぎ、コンプライアンス遵守に貢献するソリューションで、エコモットは実証実験を通じて、カスタマーサポート業務の品質向上や従業員のケアへの貢献を実現する。実証実験は2023年5月中旬から開始される予定です。(ChatGPT作成)。


【6】AI川柳

調和系工学研究室では、毎日新聞社「仲畑流万能川柳」や第一生命保険「サラリーマン川柳」を学習用の教師データとした「AI川柳」に取り組んでいます。
2020年3月までの1年間「NHK総合 ニュースシブ5時」にて、その週の話題のニュースのキーワードをお題に、バーチャルアナウンサー「ニュースのヨミ子」さんが詠んでいたAI川柳も、本研究室が開発した人工知能システムです。
多くの皆さんに楽しんでいただけるよう、2020年6月にAI川柳のTwitterアカウント( https://twitter.com/ai_senryu )を開設いたしました。
AIには詠んだ句に対する「良し悪し」の感覚はありません。そのため、人間がどのように感じ、どのような情景を思い浮かべるかにより、AIが詠んだ句に意味が生じてきます。
AIが詠んだ句に共感していただけましたら大変うれしく思います!

★ お題「廃線」(5月2日投稿)
 廃線の下で別れを告げられる
JR留萌線の留萌・石狩沼田間は4月1日付で廃線となりました。住民や鉄道ファンに惜しまれながら113年の歴史に幕を下ろしました。

★ お題「散る」(5月15日投稿)
 連休は終わり花びらひとつ散る
連休が終わり北大キャンパスの桜もそろそろ見納めとなります。皆さんGWはゆっくり過ごせましたか。


【ご寄附のお願い】
人工知能によるイノベーションでより素晴らしい世界を実現することが、私たち調和系工学研究室の使命であると考え日々研究に取り組んでいます。
大学での研究活動には、研究に必要な機器の整備のほかにも、学生の学会への参加や論文投稿など研究費が欠かせません。
私たちの取り組みにご賛同いただけ、応援のご寄附を賜れましたら大変心強く、研究を続けるうえで大きな励みとなります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
調和系工学研究室 教授 川村 秀憲

[北海道大学奨学寄附金制度について](本学への寄附金については、税法上の優遇措置の対象となります)
お問い合わせ先:http://harmo-lab.jp/contact

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

◇ 次号は、2023年5月26日に配信する予定です。
◇ メールマガジンのバックナンバー
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調和系工学研究室教員
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