2022年1月21日配信
こんにちは。
北海道大学調和系工学研究室(川村秀憲教授、山下倫央准教授、横山想一郎助教)です。
一年のうちで最も寒い時期である大寒を迎えましたが、皆さまお変わりなくお過ごしでしょうか。
2月5日から開催される予定のさっぽろ雪まつりが、昨年に続き今年も新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、オンライン開催が決まりました。
全国的にもオミクロン株の感染が拡大していますので、皆さま感染予防に努めながら無理をせずにお過ごしください。
では、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
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◇ 本日のTopics ◇
【1】調和系工学研究室WHAT’S NEW
【2】日刊工業新聞「次代をつくる」
【3】こんな本を読んでいます
【4】Acaric Journal Vol.2 後編
【5】第3回「Sapporo mirAI nITe」
【6】調和系工学研究室関連企業NEWS
【7】人工知能・ディープラーニングNEWS
【8】今週のAI俳句ランキング
【9】AI川柳
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【1】調和系工学研究室WHAT’S NEW
★道新こども新聞「週間まなぶん」にて連載「北大・川村教授に聞く AIを知ろう」が掲載されました
道新こども新聞「週間まなぶん」にて、11月から始まった連載「北大・川村教授に聞く AIを知ろう」が1月8日(土)に掲載されました。
「週刊まなぶん」は北海道新聞を購読している方に、毎週土曜日の朝刊と一緒に無料で届けられる子ども新聞です。
第3回目は「知能って何だ」と題して、AIには「弱いAI」と「強いAI」があることや、そもそも「知能とは何か」を定めるのが難しいことについて解説しています。
お子様をお持ちの皆様など、ご興味がありましたらぜひお読みください。
北海道新聞
[週刊まなぶん]
【2】日刊工業新聞「次代をつくる」
今年度から日刊工業新聞「次代をつくる」にて、川村教授が寄稿しています。
第12回目は「人工知能」とは何かについて考えてみたときに、まず明確にしなくてはいけない「知能」の定義について述べています。
[「次代をつくる/「人工知能」とは何か 抽象的目的に沿う情報処理」 1月18日(火)]*日刊工業新聞社の転載承認を受けています
あらためて「人工知能」とは何かについて考えてみたい。ここ数年、深層学習(ディープラーニング)や機械学習に代表される人工知能の技術がさまざまな分野に応用され始めてきた。人工知能によって第4次産業革命が起こっているとも言われている。ちまたに人工知能という言葉があふれているが、実際のところそれは何で、これまでの情報処理と本質的に何が違うのか。
人工知能は人工で作られた知能を意味するので、「人工知能」を定義するにはまず「知能」の定義を明確にしなければならない。しかし、この「知能」を定義することが一筋縄では行かない。
単純に考えれば、人が知能を持っていることには異論は無いとすると、「人と同じような判断ができる能力」と定義したくなる。しかし、人の判断は必ずしも一致するわけではない。また、これでは人が未経験の事柄や、人智を超えた事柄に対する判断にも定義が及ばなくなってしまう。そういうものこそ、これからの人工知能の能力に期待したいところだとすると、別の定義が必要に思える。
では、「生物が環境に適応して生き残っていくために適切な判断を下す能力」という定義ではどうか。人という種が長い年月生き残ってきたのは確かに高度な推論や認識、情報処理の結果であり、そのような判断能力を知能とするならば、その延長線上にある未経験のことや人智を超えた状況にも定義は当てはまる。
これまでの情報処理は人が考えたアルゴリズムに従って動作するものであったが、人工知能がより抽象的な目的に沿って行われる情報処理と考えるとディープラーニングや機械学習が必要であるというのもうなずける。
しかし、生物として生き残ってきたのは人間ばかりではない。この定義では動植物、細菌や昆虫も知能を持っているということになる。昆虫が人と同じように知能を持っているというには違和感もある。
そう考えると知能は、有る・無しの二項で分類ができるものではなく、もっと連続的、段階的であり、抽象度の高い目的に沿って行われる高度な情報処理の体系と言えるのかもしれない。
【3】こんな本を読んでいます
★会社がなくなる!
丹羽 宇一郎 (著)
本日ご紹介するのは、元伊藤忠商事株式会社会長である丹羽 宇一郎氏が、過去や世界に視野を広げながら、これから日本の会社と私たちの仕事がどんなふうに変わっていくのか、あるいは変わっていかざるをえないのかを語った一冊です。
[感想]元伊藤忠商事会長の丹羽さんの刺激的なタイトルの本。
コロナの話から始まり、会社というものの社会的意義、あるべき姿、そしてこれからどうなっていくのか。
アダム・スミスの富国論、渋沢栄一の合本主義、近江商人の三方よしなどを引き合いに会社がどうあるべきかを説いていきます。
また、少子高齢化の今の時代背景の先にこれから会社というものはどうなっていくのか、どう付き合っていくべきなのか、日本型組織の悪いところを見識の深い筆者がバッサリと指摘しており、特に若い人は一読すると良いと思います。
後半は、米中関係、中国、アメリカの社会的背景の考察などスケールの大きな視点から意見を述べています。
少子高齢化を受けて社会環境が大きく変化するこれから、特に経営者や若い人には目を通してほしい本だと思います。(川村 秀憲)
【4】Acaric Journal Vol.2 後編
株式会社アカリクが発行する、大学院生・研究者のためのキャリアマガジンAcaric Journal( https://acaric.jp/special/journal/ )。
大学で勉学・研究に励む大学生・大学院生や、彼らを教え導く大学教員の皆様、学生たちの未来を真摯に支えるキャリアセンターの皆様、各種研究機関や企業にて知を活かし活躍される専門家の方々など、国内・国外を問わず「知の流動」に携わり続ける方々を「研究」し、その流れを加速させることを目指すマガジンです。
Vol.2で紹介された川村教授のインタビュー「AIを通してヒトの本質的役割に迫る ―AI技術が変える研究者の未来―」を、本メールマガジンでもシェアさせていただけることになりました。
川村教授が語った、AI研究を始めたきっかけ、そして人と共存する機械について、前編に続き後編をご紹介します。
[AIを通してヒトの本質的役割に迫る ―AI技術が変える研究者の未来―]後編
― 研究室の卒業生がベンチャー企業を立ち上げていらっしゃいますが、このような考え方についてもアドバイスされるのでしょうか
ベンチャー企業はこれまでにも何社か仲間と一緒に立ち上げています。研究者のスタンスとしては、「自分で考えて作ったものを社会で使ってもらいたい、社会貢献したい」という強い思いがあります。私たちはエンジニアリングの研究者ですので、社会的責任として論文発表だけではなく、世の中に役に立つかどうかという点が試されています。そのようなプロダクトを最終的に世に出す際に、共同研究として企業の手に委ねる方法ももちろんあります。一方で、企業は自らのビジネスがあるので、考え方がずれることもあります。また、こちらが爆発的な成長をしたいときに、既存企業の古い価値観の中ではうまく扱うことができないことがあります。そのような場合は他人に委ねていては進まないので、自分たちで進めるためにベンチャー企業を立ち上げてチャレンジすることになります。
日本全体のことを考えると、最近は「新卒一括採用」「年功序列」「終身雇用」への疑問が出始め、メンバーシップ型からジョブ型への動きが一部で見られます。今後日本の大手企業がこれまでのように機能するのか、という点に私自身は危機感を持っています。
元々、高度成長の中で工業製品を大量に作る際に、新卒一括採用と終身雇用で人を囲い込んで、専門性は関係なくとにかく会社入ってから上の言うとおりにやらせて、そこでジェネラリストになってもらうことで全体をうまく回すというような、偉くなって給料が上がるシステムは、若い頃は割が悪い訳です。若い頃はどうせ何も知らないだろうし、「苦労は買ってでもするものだ」と働いてもらって、今は大変だし給料は安いけど、結婚して子供が大学に行くころには給料が最高潮になるから、と「後で元を取る」形式ですと、専門性よりも会社に対する帰属意識の方が重要になります。それで高度成長のときは良かったのですが、バブルがはじけてリーマンショックがあって日本は成長しなくなってきたわけです。
それでも私たちの年代までは人口が多かったので、これまでのやり方と過去の貯金で凌ぐことができました。ちょうど私は団塊ジュニア世代で、私から上の世代と下の世代では全く異なる景色が広がっています。上の人達が見ているのは、「下の世代の人数が増えていくから、若いときに苦労しても将来元が取れる」景色です。年金と一緒ですね。しかし、今の下の世代は子供の数が減っているので、今苦労して将来元を取ろうと思っても、さらに下の世代の人口が減って、年金をもらえないような状況になります。AIで博士号を取るような優秀な人は、そのような会社の年功序列の中では、いい評価を受けることは難しいと感じています。一方で、AIは一人が開発したアルゴリズムがとても優れていれば、大きな利益を生むこともあり得ます。
例えば、大手企業の中で新卒で入って素晴らしいAIのアルゴリズムを作って、会社の利益が大きく上がった場合でも、大手企業であればせいぜいボーナスに色がつくか、将来は研究所の所長に出世するかもしれないといった評価に落ち着いてしまいます。自分で作ったベンチャー企業であれば、個人の取り分としていきなり何億円も取れるかもしれません。やったことに対する評価を考えると、大企業のシステムの中では適正な評価がしづらくなっています。優秀な若手にとっては、ベンチャーの方が自分の取り分も多くなりますし、バイネームで活動するのに近いので、自分という存在を世の中にアピールすることによって、個人がより高い価値を持ち、お金を稼げるということになります。もちろん、競争が熾烈になるという意味では大変ですが、優秀な人が輝く社会のほうが魅力的であると思います。
― 先生が関わってらっしゃるベンチャー企業について、教えていただけますか。
一つは「調和技研」というAIの研究開発をしている会社があります。企業と組んで学術的な見地からAIのアルゴリズムをいろいろ開発しています。もうひとつはAWL(アウル)という会社です。こちらはサツドラ(サッポロドラッグストアー)と連携して、AIを組み込んだリテール向けの監視カメラを研究開発していて、CTOの土田さんが研究室の後輩です。この二社は北大発ベンチャーの認定を大学から受けています。
もうひとつ面白いベンチャーを挙げると、Aill(エイル)という婚活アプリで、AIを使ったサービスを提供する会社があります。CEOは女性で、女性目線で婚活の社会問題を解決したいと相談を受けました。私たちは様々なエンジニアリングや技術開発をしていますが、理工系で男性が多く、あまりデザインやサービスに興味が持てないのですが、真逆のお話をして下さり、面白いなと感じました。これらは北大発ベンチャーであったり、社会課題解決を目的としており、利益を追求する企業の手伝いという形ではないので面白いと思います。
― 婚活アプリですが、婚活と就活は近いとも言われていて、皆さんが求めるアドバイスなどをうまく取り入れたいです
我々のアプリは、話をする前にフィルターをかけないというコンセプトで、検索機能がありません。いきなり結婚相手を検索しても決まるわけがなく、まずは話をします。いいなと思った人が29歳と30歳の場合、属性上は「20代」と「30代」になりますが、実際に気になると29歳も30歳も関係がないですよね。しかし、先に検索の項目で20代、30代とチェックボックスがあると、20代に付けてしまいます。
就職でもおそらく似たようなことはあって、条件を指定できると、学生側も企業側も良い条件の人を取ろうとするのですが、その条件に現れない良さも数多くあるはずで、そのような性質は密にコミュニケーションを取らなくてはわからないはずです。多くの学生は、メーカーや消費者向けの企業しか会社名を知らず、就職活動のときに慌てて調べるので、検索して条件が良いところを選びがちですが、入りたい会社を決める点では、そもそも働くことに対して「何を大切にするか、どのようなことを考えて就職したいのか、何が大事だと思うのか」という相談に乗るところが、人でなくてはできないところです。そのような部分により人手がかけられるように、AIができるところはAIに置き換えていくべきだと考えます。
私が最も興味があるのは、世の中の困り事に対して、よりよい解決策を考えることです。世の中の課題に対する現在の解決策は、必ずしもベストではありません。それを踏まえて、最終的なアウトプットとしてはAIの仕組みになりますが、それ以前に大事なのは「デザイン」です。見ためや手触りなどの「物質的なデザイン」もありますが、最終的に実現したいのはサービスデザインとAIが連携しているプロダクトです。これらを総合的に考えられる人は、世の中にまだあまりいないように思います。サービスデザインを考える上で、ディープラーニングの理論などのAIの知識は重要ですし、逆にAIを作るときにはサービスデザインも重要です。両方を総合的に捉えて考えることが、社会システムを良くすることにつながる、という意識で研究を進めています。
― 大学院生や研究者の皆さんにメッセージをお願いします
主に若い人に、「AIが発展すると人間の仕事はどうなってしまうのか」と、訊かれることがあります。この先どのタイミングで「人のように考えるAI」が出現するかどうかはわかりませんが、AI技術は間違いなく発展していきます。そして、人が行う仕事の領域にも入ってくる事態になった際に、「どのような作業がAIに置き換えられるのか」を考えた方がいいと話します。広く必要とされるスキルをAIに置き換える経済的インセンティブは大きいので、今は人がやっていても、機械に置き換えて安くできる見込みがある作業は必ずAIに置き換えられていくと思います。一方で、「こんな馬鹿なことは世界中であなたしか考えていない」という人をAI化することは社会的にインセンティブがありません。世界で1人しかやってないことに関しては、国家予算をかけてAI開発をするより、その人がやる方が圧倒的に安いのです。
研究分野も芸術分野もそうです。全員が一生懸命同じことをやると、共倒れになってしまいます。しかし「あなたしかやっていないようなこと」に対しては、この先価値が生まれてお金も回っていくと思うのです。今後AIが発展して、例えばスマートフォンの開発や生産がすべて機械でできるとなると、そこで生まれたお金はどこかに回っていかなければ意味がありません。そこで芸術などに資金が回っていくと、ニッチなジャンル・分野が成り立つような世界になるので、人の付加価値は、「他人がやらないこと・多様性」の部分になります。研究者の分野もこれと同じような性質がありますので、リスクヘッジしなければ将来的に自分の価値がなくなってしまうことが起こり得ます。若い方々には、是非そのようなことを考えて欲しいと思います。(終)
【5】第3回「Sapporo mirAI nITe」
札幌は昔も今も、これからのミライもITの本場でありたい。
そんな想いから本年度はたくさんの情報をお伝えするため、さっぽろのITの「イマ」と「ミライ」を知る、全8回の「Sapporo mirAI nITe」が予定されています。
各セッションでは、AIやAR/VRなど先端技術やユニークなビジネスアイディアを持つ企業と札幌市における様々なITの取り組みを紹介します。
その第3回目の配信が12月24日(金)から始まりました。(https://www.youtube.com/watch?v=qQZqllKRw1I&t=2795s)
第3回目は川村教授がファシリテーターを務め、ゲストに(一社)北海道IT推進協会 会長・エコモット株式会社 代表取締役入澤拓也氏、有限会社十勝屋 取締役社長 後藤陽介氏、聞き手に北海道コカ・コーラボトリング株式会社 成長戦略策定室室長 三浦世子氏をお迎えしました。
「デジタルで拓くサッポロのミライ」と題して、北海道のIT産業を盛り上げるためにできること、ITの力で北海道を豊かにするには何ができるのかについてお話しを伺うことができましたので、メルマガでもぜひご紹介したいと思います。
― 北海道のIT人材を増やしていくにはどうしたらいい?
川村 計算上はIT人材を増やせば市場規模もあがるというのはわかるのですが、大学で学生を見ていると人口減をとても感じます。僕のときはひと学年200万人くらいいたと思いますが、今は120万人くらいなんですよね。
この先当然若い人は減っていくので、IT業界で人数を維持するだけでも大変です。いろいろな業界と人を取り合っていく中で、IT技術者を増やしていくことって、実際にどうやっていくのかなと悩ましいのだと思いますよね。
入澤 プログラマーとしてソフトウェアをつくる人材が、現在2万人ちょっといると思うんですね。今、DXと言われるように、企業の中でIT人材をつくって、デジタルの力で企業を変えていこうと内製化していかないといけないと思っているんです。
IT人材って、プログラムが分かるからと言って、そのビジネスに入ってDXができるかというとできないんですよ。やっぱりDXをできる人材って、自社の強み、弱みが何なのかわかる人。そういう自社の強み、弱みが分かる人にデジタル教育を行うほうが、プログラマーを送るよりも僕は早いと思うんです。
そういう人もデジタル人材なんだと言い切って、企業の中にいるそういう人たちも自分たちで付加価値を生み出していけるようになれば、デジタル人材を5万人にすることもいけるんじゃないかな。
川村 ここで言う、技術者の定義が変わっていくっていうことですよね。ノーコードでプログラムがつくれるようになる。そうすると、いいプログラマーって何かと言うと、自分でプログラミングするんじゃなくて、プログラムをつくるAIに適切な指示を出せるかどうか。こういった仕事になっていくと、IT技術者の定義って大きく変わってくる可能性がありますよね。
三浦 文系の人間に光が差しますね!
川村 本当にそうですよね。自分でつくるんじゃなくて、適切な指示を出すだけでつくれることが近い将来当たり前になっていくと、大きく変わっていきますよね。
― 必要なのはCTOではなくてCIO
入澤 コロナによって、ITの使われ方ががらりと変わってきています。テレワーク、遠隔医療、ネットスーパー、ウェブ注文による出前など、ITの需要が高まりましたよね。ITを使ったアイディアなんかを皆で出していかないといけないんじゃないかなと思っています。
どの会社にも人事部や経理部とかってあると思うんですよ。でも情報を扱うIT部っていうのが皆さんの会社にあるかというと、ないところがたくさんあるんですよね。ここを何とかしていきたいと思っています。
川村 最近、いろいろな会社でCIOをおく企業も少しずつ出てきましたよね。情報のところが大事だと思っているひとはそれなりにいても、なかなか難しいということなのでしょうか。
入澤 皆さんCTOを置きたがりますが、CIOが必要なんです。どんな情報、システムを使って、業務フローの中に取り込んでいって、効率化していくのかを考えられる人がたぶん大事だと思います。その中で、川村先生が仰っていたようなAI、テクノロジーを理解している人は価値が高いんじゃないでしょうか。
川村 コロナがきっかけで、社会が変わらなくてはいけなくなって、ITファーストにならないと効率化ってできないです。
入澤 今までは人が中心のオペレーションだったのを、IT中心のオペレーションに変えると人がいらなくなってくる。先にITでどうにかして、ITができないところを人が補っていくという考え方が大事なんじゃないかなと思います。
三浦 日本はどうしても守りのDXと言われていますが、これはこれから数年で変わったりしますか?
入澤 日本はディフェンスの国なんですよね。もう少しオフェンスすれば、チャレンジングなこともするのではないですかね。
― 少子高齢化が進む中、ITで人手不足をどう解決していく?
川村 コンビニは一例ですけど、皆がデジタルを使うと、店員さんが一人で済んで、そうすると人手不足でも回らないものもちゃんと回せるようになるのかなと。観光業なんかでも同じようなことがあると思います。
こういったことを考えていくと、これから少子高齢化が進んで人が少なくなっていく中で、そういう意識をみんなで持っていくことで、ITをどう使っていくのかを考えていかないといけないですよね。これはビジネスや個々の問題だけじゃなくて、社会の問題としてやっていかないと回らない時代になっていくのかなと思っています。
後藤 観光業も人材の確保が難しくて、ITや機械化で、人材を確保しなくても仕事がどうにかしてできないかと考えてきました。そこで、モノづくり補助金というものを使わせてもらって、掃除ロボットをいれたり、自動精算機を導入して省人化を図ったりという策でなんとかまわっています。
結果的にコストの削減もできたので、今までITファーストという考え方が全くなかったから、無駄があったのかなと思います。今後はITファーストでこれからの観光業を考えていかないと、やっていけない時代がきてしまうのかなと思いますね。
川村 オペレーションの中で自動化できるものとそうでないものがあると思うんですけど、例えば部屋の掃除にルンバを使うときに、初めからルンバを使うように部屋の形状を考えるような、ITファーストの工夫って結構あるのではないですかね。チェックインなんかも、このコロナ禍で省人化していると聞きますけど。
後藤 我々ホテル側では導入したいと思っていても、お客様側がまだ慣れていないというギャップというのがあります。高額なシステムを導入しても、実際それをお客様が使ってくれるかというと、やっぱり人で対応して欲しいということが、まだまだ日本ではあるのかなと思います。
川村 機械を使ってチェックインしたら割引を導入するなど、本当は人がやるっていうことに対する、見えないコストがかかっているということをきちんと上乗せしていくっていうことはすごく大事なことだと思います。
入澤 日本は導入しようと思うと、一つ一つの機械が高いんですよ。もう時代が違うので、お客さんのスマホを使ってQRコードを読み込んでやってもらうでいいと思うんですよね。精算機を入れることが目的ではなくて、それは手段であって、目的は人を使わないでチェックインすることなので。ここをITファーストで考えると、もっといろいろなやり方があると思います。
川村 ITを分かっている人は入澤さんのような発想になると思うんですけど、一方で観光業メインの人が同じ発想になれるかというと、難しいと思うんですよね。でも若い経営者の方たちが出てきて、そういう人たちが発想するのであれば、それでもいいんじゃないかと変わっていくのかも。
デジタルがあるからこその新しいやり方、アイディアがいっぱい出てくると思います。うまく実現できていくと、古いやり方との戦いになって圧倒的にコスパがよくなったりとか、利益がだせるようになったりとかするのではないでしょうか。これから観光業もですが、いろいろな業種で、そういう戦いになっていく気がしますよね。
後藤 海外にはサービス料というものがあるので、日本もチェックインのところは簡素化してもいいかもしれないけれど、例えばその分アメニティの質を良くして、お客様の満足度を上げるということもできるのかなと思います。ですが、ホテルに行って接客をしてもらうことをお客様も求めているのではと、業界の人間なので思ってしまうというのも、踏み切れない一つにもなっているのかなと思います。
三浦 先ほどのQRコード一つでできるのにというお話を聞くと、そうだなと思いますが、会社の中でもハードをまず入れなければと、手段のほうが先になってしまうことがよくあるんじゃないかなと思いますね。
― 北海道ならではのデータを活用していくことがカギ
川村 ホテルでのデータ活用で意識していることはありますか?
後藤 コロナがきっかけで、混雑状況を可視化するサービスを使ったりしていますが、得られた顧客情報をデータとしてとっていただけでそのデータが無駄になっている状況でした。今はそれを活用して、年代ごとに向けたサービスを始めたところです。
川村 どうして進まなかったかというと、実際そのデータを使って何をしたらいいのということがイメージできないから結局やらなかった。そういう話が多い気がしています。これからはデータを上手に使って、いかに自分のビジネスを高めていくかという意識をもっていくことが大事になると思います。
IT利用や、自分たちでそういったシステムをつくっていって、それをさらにほかにも広げていくところが、新しいビジネスをつくっていくことになるのでは。観光業だと、外からの人が観光に必要なシステムをつくろうとするとなかなか難しいと思うんですよね。一方で自分たちだと、こんなのがあると便利だよねって気づきがあると思います。
せっかく北海道には観光業とITがあるので、自分がこのシステムを買うんだから他も買うだろうといった、DXが分かる人と手を組んでソリューションをつくる。そして、北海道以外で売っていくということが北海道でできると、内需、外需だけじゃなくて輸出までも高められるのかなと思います。
入澤 プライバシーの問題などいろいろな問題はあるにしても、データを活用して売り方を変えていく。まずデータを取るところから始めて、とったデータをどう活用するか。データをとるということはすごく大事なことですよね。
川村 そう考えると、IT×観光業もそうですし、北海道には一次産業もありますし、いろいろな業界でITがあるからこそできることを考えて、人材不足や環境変化に対応していく。そういうところで新しいニーズをつくっていって、北海道のIT産業が目指していくことが大事なのですかね。
入澤 北海道こそ、そういったデータがとりやすいのだから、発信できることもあるんじゃないかな。何で勝負するのか、北海道らしさが大事だと思います。
川村 ぜひ観光業でもいろいろアイディアを持って、ITの人にぶつけて新しいサービスや、効率的なやり方を取り入れた先進的なモデルをつくりたいですよね。(終)
【6】調和系工学研究室関連企業NEWS
★国内リユース業界初!バリュエンス、サーキュラーエコノミー実現を推進する国際慈善団体 エレン・マッカーサー財団のネットワークへ加盟(バリュエンスホールディングス株式会社)
【7】人工知能・ディープラーニングNEWS
★OpenAI、文章から画像を生成する新モデル「GLIDE」 前モデルよりも高品質な画像を生成
★AIによる抽象画が恐ろしくも美しい アプリ「Dream」で絵画を自動生成してみた
★マーケットデザインは人々をどれだけ幸せにできるか マッチング理論がもたらすミスマッチのない世界
★乗車客のスマホからBluetooth信号を取得し混雑状況を可視化‐東急・阪急電鉄
★内視鏡画像の質をAIが評価、オリンパスが管理クラウドで解決したい課題とは
★Nonsense can make sense to machine-learning models
★【学会聴講報告】NeurIPS2021の注目論文をまとめて紹介
★AIが“不適切なごみ”検知システム~北九州市で実証実験 福岡
【8】今週のAI俳句ランキング
AIが俳句をつくる「AI俳句」の普及を目指して、本研究室を事務局として2019年7月に設立されたAI俳句協会のウェブサイトでは、AIが生成した俳句を人が評価して、評価結果を集約したAI俳句ランキング(月間・週間)の集計を行っています。
今週のランキングをご紹介したいと思います。
1位 くちびるに移民の夜の寒さかな
2位 菜の花の中に小川の流れけり
3位 一管の笛に応ふる十夜かな
すべて、本研究室が開発した「AI一茶くん」が詠んだ句になります。
「AI一茶くん」は1日1句投稿していますので、ぜひ俳句協会ウェブサイト( https://aihaiku.org ) もご覧ください!
【9】AI川柳
調和系工学研究室では、毎日新聞社「仲畑流万能川柳」や第一生命保険「サラリーマン川柳」を学習用の教師データとした「AI川柳」に取り組んでいます。
2020年3月までの1年間「NHK総合 ニュースシブ5時」にて、その週の話題のニュースのキーワードをお題に、バーチャルアナウンサー「ニュースのヨミ子」さんが詠んでいたAI川柳も、本研究室が開発した人工知能システムです。
多くの皆さんに楽しんでいただけるよう、2020年6月にAI川柳のTwitterアカウント( https://twitter.com/ai_senryu )を開設いたしました。
AIの中には詠んだ句の良し悪しはないためそれを良いと思うのは人間の側で、そう思うことで初めてAIの詠んだ句が意味を持つのではないでしょうか。
AIが詠んだ句に共感していただけましたら大変うれしく思います!
★お題「七草」(1月7日投稿)
七草を集めて食べたことがない
犬も食べられるって知って期待してるみたいだけど
家にどれもない・・・
スーパーに行けばセットとかあるのかな?
★お題「探してる」(1月11日投稿)
孫たちが集まる自分探してる
猫と遊びたい子供たちと、遊びたくない猫
隠れている姿が目に浮かぶ・・・
早く帰ってほしいと思っているはず・笑
★お題「大雪」(1月12日投稿)
大雪の朝はたいてい降ろさない
お外好きな我が家の老犬
今朝の札幌は雪が深すぎて、抱っこしたまま散歩しました・・・
降ろしても雪の中固まるだけなので・笑
★お題「集まる」(1月13日投稿)
結局は猫が集まることとなる
悩んだ末に置いたこたつ
常にうちの猫たちが入っているから、人間は遠慮しながら足入れています・笑
★お題「警備員」(1月14日投稿)
警備員やる気はないと決めている
いつもは窓から離れない、自宅警備員のうちの猫
でも今日はストーブの前から全く動かない
この吹雪では何も見えないから仕方ないね・笑
★お題「朝寝坊」(1月17日投稿)
おとなしく眠っていたら朝寝坊
朝はいつも決まった時間に起こしてくれるうちの猫
おとなしく寝ているからと油断していたら、まさかの寝坊
昨日の晩おやつあげ過ぎて、腹時計が壊れているのかも・笑
★お題「知りつつ」(1月18日投稿)
反省が大事なものと知りつつも
いたずらを反省させるためにケージに入れたけど
悲しそうな瞳で見つめてくる・・・
扉を開けてあげたい気持ちとずっと戦っています・笑
★お題「暑い」(1月19日投稿)
今日もまた暑いと思う電車内
北海道に住んでいると、寒くて大変じゃない?とよく言われますが・・・
外が寒い分、建物の中の暖房かなり効いていて
もこもこ着こんでいるぶん、特に電車内はとっても暑いんです!
★お題「眠そう」(1月20日投稿)
眠そうな犬はね起きて散歩する
外は雪だし、うとうとしてるし、散歩は今日はもういいのな・・・と思いつつ
「散歩」って小さくつぶやいたら急に起き上がってやる気を見せてきた・笑
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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横山 想一郎助教
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